皇道noデスアクメ
1936年2月29日 近衛師団による反乱軍武力鎮圧は、怒りの収まらない陛下主導に開始される運びとなっていた。止める者は誰もいない。自業自得な事ながら戒厳司令部は局地的大災害により全滅しており、司令部要員は総アフロと化し、皆が皆「私は陛下にせくしゃるはらすめんとをしたブタ女郎です」ですと書かれた鑑札を首から下げ正座させれていたからである。
その間、最後通牒として議事堂には「負ケ猫共ニ告グ」と書かれた伝単が巻かれ、田村町の飛行館には、投降を促すアドバルーンが上げられているが、史実と違いその内容は過激であった。
曰く、負けネコたちに次ぐ!
1もう鎮圧するしかなくなっちゃったよ。
2あ~あ、お前たちのせいです。陸軍は関係ないからそこんとこよろしく。
3や~いや~い陛下に切れられてやんの!これだから皇道派は駄目なんだよ!悔しい?悔しい?
4汝らの父母が可哀そうだから降伏するなら許してやってもよい。ホントは嫌だけど陛下の為だから勘違いしないでよね!
勅命下る!陛下激おこ!軍旗に手向かうな!
であった。これを見た陛下は静かに頭を振られたとされ、その心中の怒りと悲しみを感じ取った人々は涙を流した後、「「憂い顔もス・テ・キ」」と静かに過酷したのである。
ともあれ、29日午前5時10分に討伐命令が発せられ、午前8時30分には攻撃開始命令が下された。これを受けて近隣住民(陛下を一目見ようと押し寄せた野次馬)は強引に排除(発砲・鎮圧を含む)され、午前8時55分には、ラジオから「反乱発情ネコに告ぐ」と題した「勅命が発せられたのである。既に天皇陛下は準備万端であらせられる。覚悟しろよテメ~ら、、、」に始まる勧告が放送された。
だがこの様な事態にあっても、反乱軍は意気軒高であったと後の調査で明らかにされている。遠く拡声器から聞こえる、師団長を始めとする直属上官による「「お願いだから降伏して!これ以上私の胃を痛めないで!あんたら賊軍よ賊軍!あたしの出世を返してよ!あっコラ!なにをする!止めないでぇ~アタシにはまだ五人の娘と旦那がぁ~!、、、」」の声も無視された。
それもその筈、彼女らの目的は史実とは違うのだ。皇道過激メスネコの目的は唯一つ、「陛下とヤリてぇ」だけなのだ。今回の反乱が首尾よく行われ、皇居に雪崩れ込めれば幸いであったが、それが敵わないのであれば徹底的に陛下を挑発し自分たちの討伐に引きずりだせればよかったのだ。
「遂にこの時がきましたね、北先生」
この二日で議事堂周辺を発破かけて迄掘り返して拵えた塹壕、その司令部壕の中で発情マ~オの一匹が声を掛ける。彼女が議事堂内に指揮所を設けないのは訳がある鎮圧は容赦ない物になる事は分かりきっているから。まず間違いなく戦車は持ち出してくるだろうし、歩兵砲は撃ちこんでくるだろう。帝国陸軍も警察もその引き金は恐ろしく軽いのだ。
「うむ、覚悟は良いか?私たちは陛下のご宸襟をこれだけ荒らして回ったのだ。陛下のお怒りは天を衝く程だろう。だが諦めてはならない。唯一人でも陛下の元にたどり着き思いをとげるのだぞ!後、成就がかなったら必ず写真を焼き増しする事を忘れない様に」
反乱首謀者である西田税子は、隣にいる同じく首謀者にして皇道思想の首魁北輝代に興奮した面持ちで呼びかける。その声に答えた北は己たちのうす汚ねぇ欲望を吐き出した。本当に汚ねぇ事夥しい、彼女らは自分達を鎮圧せんとする近衛に総突撃してでも陛下を逆レ奉らんとしているのだ。
しかも撮影仲良しを希望。参加者は首に、国産初の35mmカメラである精機光学研究所のカンノンを下げている事からも本気の度合いが伺える(この世界では需要の増加により、史実より早く販売されていた)
「わかっております。そうだろう皆!」
「ニャー!」「マ~オ!」「ン!襲ウ!陛下襲ウ!私、陛下クウ」「陛下が性的なのがいけない!」
そして獣の雌叫びも聞こえる。この場にいる反乱首謀者たち、いや反乱軍そのものが一匹の獣と化した、至尊にして唯一を狙うバーバーリーキャツなのだ。
下士官や兵も?だと?そうである!丁度良い機会なので、少し余談になるが、今まで話の中に散々に出て来た「甘い匂い」について説明しよう。
読者諸氏には確信は持てたであろうが、帝国に生息するニッポニアオコシタデクウデーは、臭腺からフェロモンを分泌させている。それが甘い匂いの正体である。
このフェロモンは単にオスを望まぬ戦闘状態立たせるだけではない。ネズミなどが恐怖を感じた時、仲間に危機を伝播させる為にフェロモンを分泌する様に、クウデーも似たようフェロモンを分泌させる。
戦闘時には攻撃性を誘発する香辛料めいた攻撃フェロモン(カレー味)、強い発情時にはいつもの誘惑フェロモンをマシマシ(バニラ・抹茶味)、番との交尾時にはロマンの香りビンビンフェロモン(バラの香り)、獲物を襲う時には抵抗意欲を削ぐ鎮静フェロモン(アーモンド臭)等である。
以上の様にオトコガリは日常や戦闘にもフェロモンを無意識で使用しているのであるが、社会的指揮個体は自分の意志を下位個体に伝播させるのにもこれを使用してる。
これは臭い付けと呼ばれる行為で、特に軍隊など密集した状態で発生しやすく、それが今回の反乱にも関係しているのだ。下士官や兵は、異常なまでに発情したメスネコのフェロモンに当てられた形で反乱に動員させられている。
「オレだ!一番はオレだ!誰でもねぇ、オレだ!。故郷のおっ母みててくれ、孕んで帰るからな!」
「第二分隊!聞きなさい!あいつ等が抜け駆けしようとしたら撃つのよ!上官もクソもあるもんですか!アタシたちが天ちゃんとランデブーよ!わかった!」
「おこぼれ下さいよ分隊長!」「近衛がなんだ!全部ぶったおしてやる!アタイの恋路はじゃまさせねぇ!」
させられている筈だ、、、、多分。
「よーしその意気!気合いれなさい!あ~もう、うっさい!なによさっきからブンブンと!あんな伝単で誰が降伏なんぞすると!ん?」
そんな鼻息のい荒い兵たちの一人が異常に気づいたのは、午前10時55分の事であった。先ほどまで伝単を撒いていた陸軍機とは違う毛色、明らかに足フロートが付いた機体が上空を飛んでいるのだ。
海軍に姉妹がいる下士官、彼女がそれを、海軍の観測機であると思い辺り指揮壕に走ったのが11時02分、いまだ興奮の雌叫びを上げていた士官たちが、退避と装面を叫んで各自の持ち場に走ったのがその3分後の11時05分である。
衝撃が議事堂全体を包んだのはそれから僅か5分。
午前11時10分、狙い違わず、東京湾上に展開する戦艦長門の40サンチ砲弾は反乱軍の頭上に降り注いだ。
爆音、爆風、猛烈に巻き起こる40センチ弾頭を構成するオルゴナイトの粉塵。
その時塹壕に飛び込んだ反乱部隊は未体験の衝撃に頭を抱えて蹲る他はなかった。この期に及び彼女らは、天の、現人神の怒りと言う物がどの様な物か、ピンクになった脳に叩き込まれ漸く理解できたのであろう。
午前11時15分、いまだ舞散る濃厚なオルゴンの塵は、ガスマスク越しに彼女らの肺と脳を犯す。いかなど変態生物とは言え、この濃度は痴至量(致死に非ず)である事は疑いない。
脳内快楽物質の異常分泌、快楽の本流、そして絶頂、ここは粉塵の逝き地獄。上海にて日本軍が少数であっても猛威を振るった理由がこれである。
おお!それでもまだメスネコ共は抵抗しようというのだ!ガスマスクに溢れる涎と涙の混交物、嗚呼!特殊性癖の人は大喜びだろうが、何度も言うが汚ねぇなぁおい!どんなに美人でもこれは汚いって!
だがそれでもメスネコ共は立つ!なぜならば粉塵の向こうに愛しいお方が現れたからだ。
午前11時30分、吹き荒れたオルゴナイトの煙が落ち着いたのを見届けた近衛師団は反乱軍の掃討に移った。その戦闘にいるのは誰言おう陛下である。
大元帥自らが指揮をされている!あり得ない光景!戦場にかの人は身を晒している!スゲェ嫌そうなお顔は気のせいだろう。
お顔、その表情が見えると言う事は未だ漂う淫欲の塵を陛下は気にしていないと言う事だ。周りを固める近衛兵たち、騎乗される白馬でさえガスマスクをしているのにと言うのにである。
なんと言う雄々しさであろうか、正にかの方はこの帝国を支配するに相応しい方なのである事は疑いない。だからこそである!だからこそメスネコどもは諦めきれない!
彼女たとは塹壕からヨタヨタと立ち上がり、セルフ仲良ししていた指で槓桿を引き、動員された第一戦車師団の89式中戦車を盾に進む近衛兵たちに銃撃を開始し、血走った目で突撃を敢行する。
「「「ふしゃーーーー!二ャラセローーーーー」」
正に総突撃、遂にギャフベロハギャベバブジョハバの時は来たのである。薙ぎ倒されるネコ、吹き飛ぶネコ、銃剣がネコに突き刺さり、押し倒された近衛兵は「「キモイんですけど!」」と叫びを上げる。
見よ!ネコ共の逝き様を!
だが不思議な事もある。ネコどもから一滴の血も臓物もポロリはしていないのだ、なんと言う事であろうか?オルゴナイト製砲弾を受けたネコは血しぶきに変わる前に掻き消え、同じくオルゴナイト制の銃剣に刺し貫かれたネコは身も世もない絶頂ボイス(汚い)を上げ薄くなって消えた。
なんだなにが起こっている?訳が分からない、
そうだ陛下!陛下は何処?ご無事?
安心されよ陛下はご無事だ。ご無事と言うより獅子奮迅である!
近衛の迎撃を抜けて飛び掛かってきたメスネコ、あれは北だ!西田もいる!あっ!磯部が白馬に踏みつけられている!
だが北も西田も陛下には指一本触れられなかった。陛下が右手から繰り出されるダークオルゴンライトニングと左手繰り出すライトオルゴングリップの前には無力!二匹は中空で果て逝った。
その顔、正に逝き死に。
彼女らだけではない。近衛に駆除される他のメスネコも痴至量のオルゴナイト粉塵を吸って逝ったメスネコもその顔は無様な逝き顔を晒している。
メスネコどもは逝き死んだのである(死んでません)逝き死に、詰まりはデスアクメである(死んでません)。
午後2時19分 226事件は終結した。議事堂を占拠した反乱軍計2341名のメスネコはデスアクメを決めたのだった(死んでません)。




