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開始シナリオ3 昭和一代無責任臣民

 かくして、裏の方で盛りの付いた猫が鳴き喚いていると言う状況ではあるが、全ての妨害を跳ね除け皇太子殿下はご成婚なされ、昭和に至る為の(アへ顔ダブル)ピースはこれでそろったと言える。


 治安維持法?普通選挙法?


 史実では欠かせないパズルの欠片ではあるが、この世界では少々、いやかなり重要度が低い。


 まず治安維持法。


 何から治安を維持するかと言えば赤の浸透であるが、社会主義であろうと国粋主義であろうと、殿下や皇族の方々のみならず、男と見れば隙あらば襲う状況であるので、国民の大部分が不敬な危険分子であると言えるこの世界では史実に沿った法案の中身ではない。


 であるので内容として警察の重武装化(軍からの払い下げ)、発砲条件の緩和(兎角男がらみの暴動が多いので容赦なく撃つ)性犯罪捜査の現代化(事実上の放棄)が上げられる。


 具体的には被害者(男)の訴えを重視し、現行犯に対して取り調べなどせず模擬弾を五・六発撃ちこんで終わり、事後犯では男子が保護を求める事態で初めて捜査され犯人を罰則。


 不敬罪(実力行使)も既遂ならば極刑であるが、(性的な不敬しか存在しないので)未遂であるなら貞操帯の着用一年未満か、罰金で済まされる。そうでもしないと刑務所がパンクするのだから仕方がない。


 因みに極刑の内容は「動物仲良し刑」であり、帝国軍を支える軍馬のお嫁さんに一年程なって貰う事になっている。


 詰まり「馬嫁365日」に出演頂く。幸いな事に受刑者は居ない、今のところはであるが。


  その他、特に性犯罪関係に関しては、その場でボコって終わらせ周辺被害を抑え治安を保つ方に舵を切ったのが治安維持法であり、これは帝国内で起こる性犯罪を全て取り締まるには、国民の半分が警官になる必要があるとそ試算による苦肉の策である。




 

 次に普通選挙法。憲政の常道から見れば真に改革的な試みであるが当然史実とは違い、男子普通選挙ではなく男女同権での普通選挙法である。


 ただ、腐敗政治を発生させた所は同じである。但し金権腐敗ではなく男権腐敗だ。これにも理由がある。女性議員の登場により帝国内の男性人権は死んだと読者諸氏は考えるだろうが、そうではないのだ。


 権力を奪い合う男共は唯でやられたりなどしなかった。六尺褌一枚での遊説、大口献金者に対し男体盛(候補者自身)接待、夜の後援会ではストリップしたのだ。


 三木武吉等、奥さん&三人の妾に担がれながら遊説した。


 「私、この世がどう変わろうとも、女好きである事に代わりはございません!証拠に後ろに控えます妻たちを満足させ続けております!私は皆さまも満足させて御覧にいれます!三木は絶倫至極の男子であります!どうか清き一票を持って皆さまの三木を国政に送り込んで下さい!後悔はさせません!(ここでスーツを脱ぐ、屹立する雄大なナニか!黄色い悲鳴)」


 

 こんな調子である。エロ過ぎる女しか存在しない帝国に置いてこれは強い。であるから国会にはかなりの数史実と同じ男性陣が腰を据える事になっていた。


 そうなると歴史はさほど変わらず、国民は一向に解決されない各種問題に政治に絶望し腐敗から縁遠いと一方的に思い込む嘗ては非難していた軍に期待を掛けていくのである。


 もっとも議員たちだとて仕事をしていない訳ではない。ただ問題が史実とベクトルは違いこそすれ山積みなのだ。


 何度も言うようだが男不足に根本的な解決はしない。第一次普通選挙対策に若槻内閣が提出した「一夫多妻法案」など焼石に水でしかない。だがこれは新しい時代の始まりも示している。人々は混迷の中、これまでとまるで違う世界に順応しようとしていた。




  1926年12月25日 今上天皇陛下が崩御された()死因は心臓麻痺()長く病床にあった()天皇のあっけない最後()であった。


 同日、1925年に始まったラジオ放送から皇太子殿下の即位のニュースが、毎朝の官能小説朗読を切り上げて伝えられる中、昭和は始まったのである。


 長い事夥しい即位の礼、その中で一般の臣民に初めてその姿をお見せになられる「祝賀御列の儀」は混乱を極めていた。


 飛び出そうとする社会主義の雌ブタ、炸裂する催涙弾、構わず突進してくる国粋雌猫、容赦なく掃射される祝賀の列に交じるFT-17からの砲撃&銃撃(これが帝国陸軍第一戦車連隊の初陣であった)飛び込んで来たのを弾き飛ばす皇后陛下


 もう滅茶苦茶でどうしようも無かったが、皇太子殿下改め陛下は吹き飛んでいく群衆に笑顔で手をふられていた。幸いな事に認識改変を食らっている海外メディアと招待客は、ドン引きしながらなも熱烈な君主人気だなぁと目に映る真実と認識の狭間で揺れていた。




 そんな混乱の中、一向に逃げ惑わず寧ろ更に熱狂して旗を振るやら万歳を叫ぶ群衆の中に、陛下は恐らくはもう二度と会えないかもしれない、本来で有れば居てはいけない人物達の顔を見た。


 それは父の、そして記憶の彼方に朧げにある祖父と十年と少し前に神去った祖母の顔であった。父も祖父もかなり飲んだと見え赤ら顔で、それを見た陛下のお心に「こいつ等ぁ!」と言うお気持ちが沸き上がったが父の長年の重圧を思いそれを押し込めた。


 それほどに二人の顔は明るかった。特に父は明るかった。かなりスッキリした顔で右手は此方に手を振りながら左手で女を抱いていた。


 女の顔は良くしっている先だって死んだ筈の山縣の奴である。良く見れば祖父の近くに侍る女の顔も知っている、学習院勤務の元恩師であった。

 

 (あそこに砲撃を命じようか)かの方は一瞬本気で思ったが、元恩師が我が子の出世を目にした親の顔をしていたので思い直し、父の行状を(必ず母上に報告しよう)と決意されるに留まった。


 「程ほどにしてくれれば良いのだがな、、、無理か、、」


 「お元気そうで何よりではないですか」


 にこやかに手を振りながら呟やかれた言葉に、慮外者を片手で群衆に投げ返した皇后陛下がお答えになられた。遠くで投げ返された慮外雌猫が群衆に即座にズタボロにされている。


 「それはそうだけどね、お役目を忘れて貰っては困る」


 「それはご心配いらないのでは?大帝陛下もいらっしゃいますし」


 「だがね、あれをご覧、お爺様と来たらかなりお酒を召して御出でだ。余程に向こうは気楽なんだろう、あれでは心配だよ」


 「気楽結構でございますよ、私たちも何れは参る場所ですもの。僭越ながら羨ましい事でございますわ、ごく普通の夫婦として暮らせるのですから」


 「確かにね。だがそれもまだまだ先の話だ苦労を掛けてすまない」


 「いえ苦労だなんて勿体なく存じます。私は陛下とご一緒するだけで幸せでございますわ」


 「本当に私には勿体ない女性だよ君は」


 「あら嬉しい事」


 そう言われると皇后陛下は臣民にはではなく陛下御自身に花が咲く様に笑顔を浮かべられる。それを受けて陛下も微笑まれた。


 銃声と歓声と無限軌道の奏でる騒音が無ければ美しい光景である。そうして車列は懐かしい顔ぶれから遠ざかっていく。そろそろ帝国の統治者に戻る時間である。


 

 (だが最後に一目くらいはよいだろう)


 そう思われた陛下は視線を動かされる。視線先で右手を振る父の反対の手が山縣の胸元に差し込まれていたハメを外し過ぎでである。


 「良子」「はい」「投げる物はないか?」「こちらに」「ありがと」


 即座にメキメキと音を立てて御料車(パレード仕様に砲塔を取り払われた装甲車)の一部が圧縮され手渡される。陛下は礼もそこそこにそれを投擲された。


 父が悶絶する姿を陛下は確認され無かった。必ず当たっている筈だからだ。


 パレードはそろそろ終わろうとしていた。



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