多分日本の一番長い日
クロスカウンターであった。
全身全霊の力は、菩薩の手の如き柔らかさを湛えた拳により、そっくりそのまま己が顔面を打ち抜き、山縣有朋は宙を舞った。
吹き出す鼻血キラキラと、どさりとバウンド二回半、明治の元勲は地を舐めた。
(松陰先生、、、先輩、、今逝きます、、、)
(来るんじゃねぇよ)(恥ずかしいから門下を名乗らないで)
薄れゆく意識の中、遠く三途の川の向こう、ダブルで中指を立てる二人の偉人の影が見えた気がした。後、先に逝った政敵たちが親指を下に向けていた。
(酷い、、、なんでそんな事言うの、、、)
最後にそう思い、ニコポンの目の前は暗くなった。
ここは明治宮殿東庭、そこには今倒れ伏した山縣の他にも累々たる屍が散らばっていた(別に死んでいないが)その全てが異様なる恰好の女子である。激しい戦いに跡を見せるメスブタ共、彼女たちが着込んでいるのは花嫁衣裳であった。
洋装二に和装が七残りの一割は昨今正式化された陸海軍礼服(こんなダサいの嫌!お嫁にいけない!と珍しく改定に意見の合った運動に私費での購入が認められていた)であり、皆一様に只ならぬ一撃を受け沈黙を強いられているのである。
その沈黙を支配する主、それは御一人の修羅で有らせられた。
宮城各門に配置された近衛師団(大正の中期に人員は全て既婚である事が求められた)により容赦なく浴びせられる模擬弾(弾頭が木製、これ位では死なないだろうと言う判断)による銃撃、門を飛び越えた所で襲い掛かる近衛騎兵の呵責無き木刀チャージを受けて、尚進撃するブタ嫁(華族出身六、軍人・議員・財閥・成金・一般人の混成四)を全て沈めたお方の名は、久邇宮家良子女王。後の香淳皇后陛下その人であった。
では語ろうではないか、大正末最強伝説を!
昭和に進む上で欠かしてはいけない大イベントがまだ有るのだ。史実に置いては中イベントでもこの世界では大大大大イベントが!
そう皇太子ご成婚である!
時に1924年(大正13年)1月25日!日本帝国は脳破壊の炎に覆われた!
いやとっくに婚約は発表されていたので脳破壊も何もホントはないのだが、翌日を皇太子殿下ご成婚に迎えるこの日、全国から集まった猛者(諦めの悪いの)が何かに惹かれる様に宮城に殺到したのである。
その数!何と五千名!神聖なる宮城にメスブタは放たれた!
何故に?それには訳がある!今回度重なる殿下襲撃に終止符を打つべく内務省・宮内省・皇室、何よりも人の旦那に手を出す不埒者を征せんと久邇宮家良子女王は決意なされたのだ(病床()の今上天皇陛下は満面の笑みで許可され、その後皇后陛下に叩かれ遊ばされた)
そしてご成婚まで残り一週間を迎えたその日、全国の新聞にこの様な記事が載った。
「私は何者の挑戦も受けて立ちます。歯痒いのであれば掛かって来なさい」
帝国全土にいる泥棒猫を画策するメスブタへの挑戦状である。
場所は宮城、配置された数多の妨害を潜り抜け我が元に来い!そこで決着を付けてやる!おお!何と言う雄々しき決意であろうか!正にこれより国母となられるに相応しい闘志である。
と言う訳でこの日メスブタは宮城に殺到したのである。なんで山縣が冒頭でやられているのか?それにも訳がある。
読者諸氏は、大仲良し災害の日、今上のぱうあーを近くで山縣は直撃を受けていたのを覚えて居られるだろうか?あれで山縣はTSした、TSして若返って寿命が延び、不味い事に枯れていた欲(史実では死ぬまで枯れていなかった気もするが)が再燃した。
宮中某重大事件で晩節を汚した彼女は、我が腹から天孫の係累を産む事で恥を雪ぐつもりなのだ。正しくはTSした後も参内していたので殿下の色気にメロメロなり、
「やっぱ儂も行く!征いてこい来い伊藤!桂君!」
「だっはっは!やっぱり君も我慢できないんだ!ワシの気持ち分かった?」
「いい加減してくださいよ山縣さん!不敬!死刑!誰か止めて!」
伊藤文、桂花子と名乗る秘書官を連れて突撃したのである。
結果は前述した通り。であるが歴戦の元男、山縣は只ではやられなかった。彼女の指揮の元大手門、乾門、半蔵門の守備隊は壊滅。
廃棄予定であった三八式機関銃を近衛師団は全国から搔き集めてきたいた事で殆どのメスブタと相打ちになった形であるが七百を超えるメスブタが宮城に侵入、近衛騎兵との戦闘で半数以上が脱落するも(伊藤と桂はここで盾にされて散った)なんと二百余名の飢豚がエントリーしたのである。
だがその飢豚も最後の一人に至るまで叩きのめされた。唯人にそれが可能なのか?出来る!出来るのだ!
良子女王は唯人などではない!皇太子殿下との正しい交際により、その身には溢れ出さんばかりのオルゴンに溢れている。今の女王は例えて言うならば地上に降臨されたアマテラスの化身である。
最後の一人、不埒者中の不埒元勲が倒れた。
ふう。と良子女王は一息つかれる。元より人を叩いた事も争い事もした事が無い身であるが、愛は全てを可能とした。偏に愛ゆえに「智気星」の力とやらを殿下を通して受け入れたのだ。
だがそれもこれで終わり。矢張り暴力と言う物は生に合う物ではない。できれば二度と振るう事がない事を祈るばかり、、、、、
累々たる屍(再度言うが死んでいない)を見やり、良子女王は嘆息した。
「流石ですなぁ義姉上」
その耳にパチパチと拍手する音そして声が聞こえた。そして眼前、十歩ほど離れた場所に影が現れたのだ。
影は男装の麗人であった。怜悧な瞳に短く切った金の髪、日本人といや白人とさえ思えない程の白い肌が陸軍軍服の端から覗いている丸眼鏡の麗人。
陸軍少尉の階級章を付けた影その名を。
「どの様な御用ですか親王殿下?」
「その様に他人行儀に言われなくとも良いではないですか、私たちは家族、雍仁とお呼び下さい」
秩父宮雍仁親王。それが影の名であった。
「では遠慮なく。失礼ながら雍仁様はどの様なご用件でこちらに」
「何、兄上と義姉上が心配でして、こうして参った次第です」
何処か楽し気である秩父宮、何故かその様な態度の秩父宮に対し、警戒の念を隠さない良子女王。一体?当然の疑問が浮かぶ、そして次の瞬間疑問は解消される。
「戯言を、貴方様がご心配なのは殿下ただ御一人でしょう?」
そう言って良子女王は両手を構えたのだ。目の前にいる者はこれより最大の敵になる。
「ふっ、お見通しでしたか。ええ其の通り!兄上を頂きに参りました!」
言うが否や音を置いたが如き貫き手が良子女王に迫る。女王は身に迫る凶手をヒラリと躱すと右の手でそっと掴んだ。
「ちぃ!」
舌打ちと共にそれを振り払わんとする秩父宮、だがその瞬間、彼女の体躯は宙に飛ぶ。投げ飛ばされたのだ。良子女王は右手の膂力のみでそれをなした。
此処いるのは唯人ではないと先ほど語った。だがそれすらも誤りだった。見よ、空中にて体勢を立て直した秩父宮の動きを中空を蹴っているのだ。
見える!秩父宮の背に、腹筋がバッキンバッキンで一部の人にしか受け入れられない巨女の姿が!角髪を結ったその姿!あれこそTPOに合わせてTSして下さったスサノオの命ではないか!
そしてこちらも見よ!良子女王の背に浮かぶ幻影の姿を!戦化粧も艶やかな日輪を背に抱く巨乳!あれこそアマテラス大神!神よ!お力をお貸いただけるのですね!
「いざ!義姉上!」
「来やれ愚弟!」
今まさに始まる頂上決戦!
ではあるが、読者諸氏も突然のバトル展開で驚いて入るだろうから説明を挟もう。秩父宮雍仁親王は何故にTSしているのか?何故に兄上が如何とか言っているがなんだ?である。
まずTS問題。陸軍に進んだのが不味かったの一言である。彼が活発な性格であり、学習院の名物教師である乃木某女氏の教育を受けた事も不味かった。
彼はご学友に守られたがご学友はヤラレタと言うか襲った。ここで思春期のオルゴンバランスが崩れる。これを地上の星は見逃さなかった。ホルモン見たいに言うな?それに近いんだよ。
兼ねてよりオルゴン適正の高い一家に生まれ、その焦点である今上天皇陛下を父に持つお方は、その崩れを余計な事しかしない星に狙われた。星は兼ねてより長男である皇太子殿下を筆頭に四人の皇子に邪な視線を向けていたのである。
その中で一番に漬け込み安かったのが秩父宮雍仁親王だったのである。星はこの惑星の過去未来現在に触手を伸ばして数ある可能性を見る事が出来る。
そのIFの中で、陸軍関係の怪しい思想に捕らわれ、時に傀儡の天皇として担がれていた。史実に置いては踏みとどまれたがこの世界ではどうであろうか?
小さな歪みが陸軍幼年学校に入ると更に拡大した。陸軍幼年学校は魔性の園であり、その毒気は彼を犯し公には伏せられたが卒業時には親王は内親王に変えられていた。
幾人もの首が飛んだ大失態であったが、彼改め彼女は気にしなかった。新しい体は強く頑丈でなによりフリーダムだった。明らかに星により意図された事なのであろう。帝国の法制度と現実の差は長い間是正されないまま全てが突っ走っていたからだ。
そして当然の事ながら彼女は帝国の後継からは外される。元よりまずありえない事と思っていても、その事は彼女の内心を傷つけていた。
そこに星は付け込んだ。密かにだが確かに兄への敬愛が思慕の情に変えられて行く。殿下大好きクラブが大半の士官学校でヤバいの筆頭であった蛇女こと服部、厄介信者の西田が同期になった事で彼女は認識改変を食らった。
そして虎視眈々と襲撃の機会を狙っていたのであるがガードが堅い兄に交わされ、その婚約者には陰に日向に企みを防がれていた。
そして今回の最強王座決定戦が最後のチャンスと賭けに打ってでたのである。さて、語っている内に決戦も終わろうとしている。
「しゃあ!」
「キェェー!」
女が出してはいけない叫びと共に紡がれた拳が激突する。激突は二人の間漂うオルゴンに共振し大気が大地が揺れる。
震度2はある
正に神話の時代の戦いであった。これが続けば遥か神代の中東で繰り広げられたギルガメッシュ王とその友エルキドゥの戦いの如く、帝都の敷居と言う敷居が壊れるであろう。
だがその戦いは突然の終わりを迎える。
「いい加減にしなさい!」
絡み合う龍虎の如く拳を打ち付け合っていた二柱の女神はその声に動きを止めた。
いや動けないのだ。人知を超えるスーパーパワーで殴りあっていた二人を止めた、その力こそ、二人の争いでボッコボコにされた東庭に現れた方の御力である。
誰あろう皇太子殿下であった。彼こそオルゴンの陰陽のバランスを保つ運命の子!と北海道でのたうっている痴情の星に見込まれた、世の不幸を一身に背負った方でもある(羨ましい方は発情したメスブタに四六時中襲われる可能性のある生活を堪能して頂きたい)
その皇太子殿下が片手上げるだけで二人の人物は如何する事も出来なかった、力の次元が違うのだ。だからこそ、常日頃は無暗に使えぬ危険な力でもある。
「僕を思ってくれるのは大変に嬉しいのだが、僕としては君が傷つくのが一番に辛い事だよ。今回はこの辺で矛を収めてくれないかな?」
「はい殿下」
「お前が僕の事にそう言う事を考えていた事は前から知っている。だがそれは人としても皇族としても無理な事なんだ。分かってくれ、、頼む」
「申じわげ、、、ありましぇんでした~!たがらきらいにならないでくだしゃい~」
その後、冷や水を浴びせられた二人は殿下のお願いを受け休戦した。一人は恥かしい所を見られたという表情で、もう一人はギャン泣きで。
暫くして。
「本当に頼むよ、、、、まったく。どうするんだこの有様、、、」
ギャン泣きの元弟を慰めながら連れて行く明日には妻になる女性を見送った後、惨憺たる光景を見ながら皇太子殿下はため息を付かれた。
こうして多分日本で一番長い日は終わりを迎えたのである。
だがそれだけで終わる筈もない。
脳を破壊された者がそれだけで終わる物かよ。何故ご成婚が大大大イベントなのか読者諸氏は理解されないといけない。
「自分は!殿下の為なら何でも!」
「オオ~殿下~!なんでよぉ~なんで他の女とぉ~」
「欲しいのぉ!産みたいの!私がぁ!」
湿度100%に達する、帝国の暗い闇の中雌猫達が盛っている。
NTRに脳を焼かれマ~オ!マ~オ!と啼いていた。
雌猫の達の名は幾つもある。
北一輝改め北輝代、厄介追っかけ西田税子、 磯部一子、安藤輝美他多数
検閲
マ~~オ。
殿下のご成婚は二つの集団を勢い付かせる
それが統制派と呼ばれる寝取らせ趣味を拗らせた集団。
マ~~~オ。
そして重度のNTRに(どう考えてもBSSであるが、寝取る積りなのでNTR)に脳を焼かれた(天)皇(陛下と犯りたい)道(徳なんか知るか!殿下はワシんじゃあ!)派と呼ばれる事になる泥棒猫の集団である。
マ~~~~オ。
この二つは何れ「ギャフベロハギャベバブジョハバ!」する事になり、帝国に大きく影を落とすのは遠くない事である。




