ぽいんとおぶの~たりん
皇太子殿下の欧州訪問。天孫降臨より初めて帝国の後継が欧州の地を踏む大イベントの始まり。
それは極東の成り上がり物が遂に頂きに手を掛けたと言う証左でもあった。無数の屍を積み上げて届いた坂の上で、雲を追いかけ続けて来た若き国家はこの先何を見るのであろうか、、、、と真面な世界なら感慨深げに語る所ではある。
ともすればその後に「暗雲が」とか「激動の荒波」がとか「遠く戦火が」だの「軍靴の足音が」等と語っているだろう。
悲しいかなそれは概ね事実だ。これより帝国は迷走に迷走を重ね、これまで押し込めて来た数多の諸問題の解決に失敗して遂には滅びの道を辿る事になる。
日本帝国は無理に無理を重ね過ぎた。軍事偏重、格差の拡大、梯子を外された帝国主義、これより始まる昭和とはその精算を迫られた時代と言えよう。
でもそんなの関係ねぇ!この世界にはなーんも関係ない!この世界の日本帝国に尻とアスはあってもシリアスは無い!あるのは何度でも言うがエロ!馬鹿!ナンセンス!
これまでお付き合い願った読者諸氏に置いては「いやそんなことはない。第一次大戦でもシベリア出兵でも人死は出ているのであろうからもう少し真面目にしろ」とお思いではあろう。
だがしかしなのだ。筆者は一回でも日本側の戦死者の人数や、戦闘での犠牲者を語ったであろうか?決して筆者がズボラであるから詳細を述べなかったのではない。
一人も。唯の一人も死んで等いないのだ。日本帝国にあってエロはあってもグロもリョナもない!
よく考えて貰いたい。馬鹿らしいので考えるのはお嫌であろうが考えて欲しい。
帝国を覆う頓智気の源であるオルゴンであるが、嘗て在りし文明では百万年単位で研究運用されてきたのだ。恒星間で超新星ミサイルを投げ合うであるとか、ハイパースペース航路破壊にペンローズボムを使用するのではない、たかだか惑星規模の紛争をカバー出来ない筈はない。
これまで帝国に打倒された者、これから打倒され、仲良くされる者は死にはしない。勿論返り討ちにされた帝国臣民もだ。
丁度良い機会なのでもう一つ疑問を提示しよう。猛スピードで増える人口を如何する積りなのかと言う事だ。可笑しいだろう、何処も彼処も子供が産める人間がいてそいつらはぽこじゃか産んでいるのだ、男は一向に増えないのが問題であるが。
まだまだ列島に開発の余地はあり、このまま国土開発が進めば予想される生産高で後数億は養えよう。繁殖に最適化された臣民は、拡大する都市にみっしり押し込まれても文句は言わず寧ろ安心感さえ覚え、竿の充てさえ付けば、喜んで男を肩に担いで地方に移住するだろう。
それでもだ。まだ1908年より十年余しか経過していないのに、凡そ四千八百万の人口が七千万の大台に乗っている。十年でニ千万以上である。
猛烈な増加数だと言える。勿論これは外地を含めていない。
男子の全国民に於ける割合は現在女子の十分の一であるから、列島には六千三百万の飢えたメスブタが犇めき、男と見ればあの手この手篭絡しようと待ち構えている。
何れ列島は一杯になり、それは詰まり致命的なメスブタ余りを引き起こす。今でさえ不味いのだ、帝国政府にこれを解決する考えはあるのであろうか?
ある。帝国政府を主導してきた元老と天皇にはある。それは明治のあの日、簀巻き女が宮城に運び込まれた時から始まっている。
陰謀と言ってよい。簀巻き女事、伊藤(博)文と、その提案を受けた人物たちはどスケベぇ事になるであろう帝国を救う為、苦渋の決断を下したのだ。
1909年12月 宮城奥の間
「分かっていただけましたでしょうか?」
これまでのバカ騒ぎぶりが嘘の様に伊藤は静かに、己の目を見た者たちを見返した。
「これは本当なんですか」
「にわかには信じがたいが、、、」
「なにこれ、、、」
「、、、、、、」
西園寺公望、桂太郎は理解の及ばぬ、、理解しがたいといった風であり、山縣有朋は呆れて果て疑問をだす事しか出来ず、ただ大帝のみが瞑目していた。
「なにと言われてもこれが真実なのだよ山形くん、今見せたモノそれが先触れと名乗る例の遊星の意志だ」
美貌の女その小さな口からでる冷徹と言って良い声が一室に響いた。
「だからと言ってこれはなんだ!私たちは、あいつの種馬か?馬鹿しおって!何が有望な生物だ!我々をウサギか何かだと勘違いしてるぞ!」
山縣は口汚く罵る。彼が伊藤を通して見た物は日本人をそして人類を明らかに下等な物として見ており、憐れみと憐憫の感情さえ籠っていた。
(主の保護しなくては、お前たちは滅びる。主の愛を受け入れ、思う存分にパコるのです。私は主の意志を代弁する物、うだうだ言ってないで生殖器を出せやオラ!理性を捨てろ!生物の神聖なる本能に身を任せよ!見ててあげるから!見せろ!隠すな!ぼかすな!修正するな!交尾!交接!放精!受精!ふぉ~興奮してきた~!)
そして劣情を剥き出しにしていた。付き合いたい手合いではない。だがそれがまごうこと無き上位の存在であり、自分達を如何様にも出来る超常の化け物なのだ。帝国で起こり続ける異常事態がそれを裏付けていた。
「伊藤公、先方にお帰り頂けないか聞いてくれませんか?」
「正直、ワシも帰っては欲しい。だがなぁ桂君、あいつが言った事は恐らく真実だ。帝国はあと五十年もしない内に滅び、その後は米国の属国として核兵器とやらで有象無象と一緒くたにされてドカンだ。それをあいつは回避できると言うのだよ?み~んな色狂いになるがね」
桂の縋る様な言葉に伊藤は残酷な未来を語った。この場の全員は見せられたのだ、帝国が世界が亡びる様を。
しばし沈黙が広がる。
選択肢はないに等しい。
遊星の提案を受け入れて国体を維持したまま「大日本どスケベ帝国」となるか、変化を強制されただの家畜に成り下がるかだ。
「是非はないな。受け入れよう」
重い沈黙の中、大帝は決断した。それは重い重すぎる決断だった。
「陛下」「御上」「申し訳ありません」「陛下に責を負わせる等、、伊藤、恐懼に耐えません」
大帝の決断に皆が男泣きに泣いていた(一名元だが)
「あ~しんきくさ!泣きんさんな!」
お道化た調子で大帝は男たちを揶揄したがその目には熱い物が浮かんでいた。それは己が子孫たちがこの先背負い続ける事になるであろう重荷を思っての涙であった。
この日を境に日本帝国は「日本」と「帝国」の間に「どスケベ」が挟まる事になった。日本帝国に悲しき過去ありである。
誰がこの決断を責める事が出来よう!人知れず大帝は天皇と言う位は、帝国臣民はおろか、数多の命と世界その物を背負う事となったのだ!
だがその報いは絶大である!それを今見せよう!現人神の力を刮目せよ!これが高御座のぱわぁーだ!
1923年(大正12年)9月1日11時58分 史実に置いて帝都を襲った大災害は発生しなかった。
発生したのは、未曾有の仲良し祭!帝都に生きる全ての生物学的雌は雌叫びを上げて崩れ落ちたのだ!
次に彼女らが立ち上がった時、その異彩と言ったら鬼神もこれ引くレベルである!
目は血走り口からは荒々しい息を上げ!ビキッビキッとその筋肉が男子捕食に適した再配置を始める!正に仲良しモンスター!
見よ!そしておののけ!浅草名物凌雲閣から眼下の男目掛けて降下仲良しを敢行せんとする猛禽の群れを!聞け!観音堂の坊主が引きずり出される悲鳴を!
おお!なんという事だ!大気にオルゴンが満ちている!積乱雲の如きオルゴンの流れは常人にも視認できる!何というドドメ色!これは明らかにダークサイドの力!
帝都ばかりではない!隣接する横浜市では次々と外国船から屠られる子羊の声が!おお神よ!大使館が領事館が!跳ね回る狼の群れに襲われて!
宮城!宮城は無事なのであろうか?今上の安否は!恐れ多くも畏くも陛下に腰振り奉る不貞の群れが迫っている!
だが見るが良い!大和腰振り狼の群れは次々と恍惚の絶頂を遂げて倒れ伏す!二重橋は累々たるメスブタに覆われた!正に痴のメーデー!
陛下!陛下は何処!ご無事なのか!
「ふははははは!愉快だ!最高に痛快だ!どうだ!山縣!ぐうの音もでんか!」
「陛下!もそっともそっと抑えて!私もあひぃいいー」
陛下は無事であった。それどころかハイになっていた。
説明しよう今日この日の混乱は陛下が引き起こしたのだ。何故?と聴くなかれ、これは仕方がない処置であり、陛下、今後は大正帝と呼ばれる方の最後の大仕事なのだ。
これこそが明治大帝が遊星こと痴情の星から迫られ決断である。痴情の星は自身の力を十全に振るうあたり、オルゴンの集積レンズたる代理人を求めたのだ。
それが大帝であり、その地位を継ぐものである。天皇と言うこの時代に置いて神聖視され民族の意志が好悪如何あれ向けられる存在は星に取って最高の代理なのだ。
無論一方的な契約ではない。代理人たる存在は力の一端を振るえる、地上に置いて真に現人神となりえるのだ。
不可能は可能となる!日本帝国に必要なのは大量のオルゴン!それを可能にする男とメスブタの仲良し行為!これこそが日本帝国の秘密であり大暴れの理由なのだ。
その力を今上は今回起こる筈であった大震災の相殺に使われたのだ。だがそれは諸刃の剣であった。荒れ狂うオルゴンは震災を消滅させると帝都に吹き荒れ始めた。
そしてこの混乱である。これにはレンズたる者の性格も起因している。元来奔放な性格であった今上陛下は天皇たる責務を疎んじれている所があらせられた。
それが大爆発したのだ。
オルゴンの嵐はその日深夜近くまで吹き荒れ帝都を覆い続けた。この日に妊娠確定したと思われるメスブタ約10万5,000人未曾有の仲良し災害はこうして幕を閉じた。