2.カレー
目が覚めた。まだ頭が少し痛い。
(…?)
というか、ここ、どこ?
周りを見ると、絆創膏や包帯、ピンセットなど、いろいろな器具がおいてある。
壁にかかっている時計をみると、あれから30分ほどたっている。
だんだん脳がスッキリとしてきた。
初めてきたから、すぐにはわからなかったけど、ここはたぶん保健室。
あの後、翠は私をここまで運んできてくれたんだ。
たしか保健室と教室、結構距離あった…
どうやって運んでくれたんだろう。
制服に汚れや傷がないから、引きずって運んだってことはないよね。
まさか、横……うん!余計なことはもう考えないようにしよう!
そんなくだらないことを考えながら、私はゆっくりと体を起こした。
すると、保健室の先生が私が起きたことに気づき、翠のことを呼びにいった。
翠があわててベッドの近くに来た。
「羽紅!起きたんだね、よかった…体はどう?大丈夫?怪我とか熱とかはないって先生は言ってたけど…」
「大丈夫だよ。心配かけてごめん。ていうか、待っててくれたんだ。別に、放置して帰ってくれても良かったのに…」
「そんなことしないよ」
「あ、そういえば、ここまで運んでくれたんだよね?ごめん、ありがと」
「そんなの別に…というかさ、」
「?」
翠がさっきより小さな声で言う。
「そんな、さ、倒れちゃうほど嫌だった?僕からの、その、告白…」
「あ、あの、そういうことじゃなくて…ていうか、先生もいるしさ、帰りながら話そ?」
「あ、うん、そうだね。ごめん。」
「先生!私達もう帰ります!」
「先生、ありがとうございました」
「え、大丈夫?歩いて帰れる?」
「はい!大丈夫です!ありがとうございました!さよなら!」
「あ、はい、さよなら…お大事にね!また体調が悪くなったら困るから、和泉さんと一緒に帰ってね!和泉さん、よろしくね!」
「はーい」
「はい」
保健室からでて、靴を履き替え、校門まではお互い、なんか気まずくて無言で歩いた。
家まであと5分くらいのところで、翠が話を振ってきた。
「あの、さ。羽紅はやっぱり、恋愛対象としては、意識してない、よね?僕のこと…」
「ごめん、ちょっと、いきなりすぎて。今まで私たちずっと幼なじみ!ってかんじ、だったじゃん?だから、今は、整理する時間がほしい、かな…いろいろと…」
「…うん。わかった。気を使わせてごめん。あ、もう、家ついたね。じゃあ、また、ね?」
「あ、うん。じゃあね」
翠がちょっと悲しそうな顔で笑って、バイバイって手を振った。
私はどうしたらいいかわからなくて、翠のまねして、ぎこちなく手を振った。
そして私たちは、それぞれの家に帰った。
「ただいま」
「おかえり、羽紅。夕飯はカレーだよ」
お母さんのカレー!やった!
気まずい気分がふきとぶ。
手洗いうがいをして着替え、早速食べる。
とても美味しい。
あ、そういえば、僕もカレーは好きだったけど、
『お母さんのカレーは美味しいけど、具材が小さくて食べごたえがあんまりない』
って伝えて大きめに切ってもらってたから、こんなに小さく具材、切ってもらってなかったな…
私はこれくらいでちょうどいいんだけどねぇ…
僕だった頃と今で、違うこともあるなぁ。
まあ、これは本当にちょっとしたことなんだけど。
「ごちそうさまでした」
夕食を食べおわったあと、宿題をして、お風呂に入り、歯磨きをして、ベッドに倒れ込んだ。
そして思ったこと。
今日、入ってきた情報量が多すぎる。
いろいろとありすぎて、脳がパンクしそうだ。
ちょっとなにか、ノートに書き出して整理してみようかな。