アリサは大抵、斜め上
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さあ、スタンピードだ!
さあ、帰郷だ!!
俄に城の一部が慌ただしくなり出した。
魔法棟事務員サライノ以外のハリシア組はアリサの(ほぼ)命令に従い、急遽の休暇願い等の手続き及び帰郷の準備で忙しい。
何のかんの言いつつも、アリシア伯爵はそれらの手続きが通るようにと各方面へと話を通すのに、これまた忙しい。とは言うものの、アリシア伯爵としては呪い問題から離脱する良い口実にもなったので内心複雑である。伯爵としては〈呪い〉や“帰郷”にも、どちらも娘のアリサが関わっているという事実が煩悶に拍車をかけている。眉間のシワが一段深くなっているのにも本人は気付いていない。
レイモンド翁は露骨ではないものの狼狽える王家をのんびり宥めている。
そのように周りは動き出している中、アリサはブレる事無く観測に出て行った。お伴はジオラスと、久々の警務官(三人)。こちらは恙無く日課がこなされる。
ここで一つの疑問。クルイウィル次男クラウスは何処へ行った?
クラウスは、一度は〈呪い〉関係で退出して行ったのだが、いつの間にかハリシア出向組に組み込まれていた。
スタンピード(予告)の疑い濃厚。
この由々しき未来予想図に、城は魔法騎士の派遣を決定したのである。
とは言うものの魔法騎士は数が少ない。しかもスタンピードはまだ予告の段階。数は絞られ、クラウスを含めて三人。この段階ではやもえない。
その代わり、派遣が決まったのは近衛騎士。
何故近衛!?
驚(き喜び沸)く当の近衛騎士達に王は釘を刺した。ハリシアは重要な地であると。それもこの国だけでなく、この大陸にとっての心臓部であるのだと。しかし王は一つ言葉を付け足した。
「しっかり学んでくるように」
近衛からは、正式採用の近衛からひと班、見習いからふた班。ひと班八人編成なので、二十四人。結構な数である。しかしそれなりの団体様であるだけに騎馬での移動を余儀なくされ、一番肝心な時に間に合わないという徳川二代目のごとき世紀の大遅刻をやらかすなどとは、この時は誰も思いもしない。
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観測から郊外の屋敷へ直帰しようとしていたアリサは警務の面々に城へと連行されて来た。隣でギャイギャイ騒ぐジオラスももれなく付いて来る。
予め予定が組まれていたのか、帰城するなり会議もできる広めの部屋に通される。部屋には固い木の椅子に座して待つアリシア伯爵と前伯爵──レイモンド翁。そして王女だけを除いた王家の男達。
?
警務の三人はアリサを連れ帰ったはいいが、城に帰るなり待ち受けていた案内人に従い、結果がこれ。待ち受けていた大物達に恐れをなし、(たぶん)無害な若者二人を部屋に置き去りにして自分達だけ辞去する変わらずの卑劣さ。卑劣と言ってもコソコソ逃げていく小物感が憎めない。
そして部屋で待っていた面々は、当然のようにアリサにのみ用件があったようで、ジオラスの事は見えていても居ないものとして扱われる。
「お待たせ致しました?」
「いや、大して待ってはおらん」
応えるのは王ではなく第二王子。王及び王太子では大物過ぎる為の今更な気遣い。だがアリサにはピンと来ていないし、彼女にとっても今居る王族の中では一番バルドと接触が多いので楽であるのも確か。因って全く気にしていない。
これ幸いと第二王子は上記の城側の決定──出向者等に関して伝えていく。
「まず魔法騎士派遣に関して感謝を申し上げます。それはそれとして………第二騎士団ではなく、第一騎士団から出されるのは何故に?」
発言の許可を得た後のアリサの確認。
「どうか不快に受け取らないでもらいたいのだが、こちらとしても学ばせてもらいたい本音がある。スタンピードの機会なぞそうそうあるものではない。ならば第二よりもまず第一騎士団だ」
「……然様でございますか。話は冒頭の魔法騎士に戻りますが、彼等も空の移動とのことですが、運搬という形で宜しいのでしょうか?」
「その件に関しては既にアリシア伯爵と話は通してある」
アリサが現アリシア伯爵に視線で問うと、アリシア伯爵が疲れた顔で念を押して来た。
「荷物のように運ぶなよ」
つまり、アリサなら遣り兼ねないとの釘だろう。
「魔法騎士様の派遣人数は?」
「三人」
「最低三人のハンドラーが必要になりますが」
「ハリシア出身の騎士は──」
「王子。ハリシア出身の騎士は同じくハリシア出身文官との相乗りです。彼等はドラゴンもグリフォンも無理。残るワイバーンでの移動になり、ワイバーンでは二人以上の騎乗は無理です。わたくしはグリフォンでの高速移動になりますので、元々相乗りは不可能でございます。すると──」
「アリシア伯爵の言う通り、最低三人の操縦者が必要になるのだな……」
「お代は頂戴いたします」
ちゃっかりしている。
しかし騎士達の派遣は城側が勝手に決めたこと。今回の件にハリシアからの要請はハリシア出身者の休暇願い以外は何も出されていない。
「分かった。通常の料金を支払わせてもらう」
ぼったくるなよ、と副音声が聞こえる幻聴の不思議。
「だがアリシア嬢。話を蒸し返すようだが、君が現場に立たなくても良いのではないか?」
アリサは無表情のまま淡々と答える。
「まだ現状が何処まで動いているかも分からぬ状態。候補地は幾つかに絞ってはみたものの、そこまでが限界。それらを探る意味でもわたくしが現場まで飛ぶのが肝要かと」
「そのような危険な真似は魔法騎士や他の者達に任せるべきだろう」
アリサが無表情無言のまま空気を冷やす。不愉快を示すように。
「いっそのことハリシアは独立するかの?」
レイモンド翁のいきなりな爆弾発言にアリシア親子以外がギョッと固まる。
「まあ、ウチは元々独特の土地柄で、この国にあっても地外法憲ですしな。アリシアの面子を考えても、まあ何とかなりそうではありますな、父上」
挙げ句の果てに現アリシア伯爵まで乗り気とか!?
「お待ちになって、お二人とも」
!? 意外にも理性が最も働いていたか、アリシア嬢!?
「いい歳をしてまだ次世代の影もない、どころか、次世代を産んでくださるお嫁様の影すら無い状態での独立なんて面倒ですわぁ。だけでなく、独立なぞ果たせば諸外国との世知辛い鍔迫り合い交渉等もございますのよ。それこそこちらのフリングホーニに討ち滅ぼされる可能性もございましょう。何より、こちらのお国に属していればそれらは免除。それら二点を踏まえただけでも、独立は得策ではないと主張致しますわぁ」
呟き独立宣言を止めてくれたは良いが、動機が酷い。
「天使様あ~」「お嬢ううう?」「ひーめーさーまー!」
「あらあらまあまあ」
外から微かに聞こえて来る呼び声に、アリサが開け放たれている窓の一つに寄って行く。
「………そちらの窓の方が良さそう。──失礼しますわね」
意味不明な発言と共に窓を移動したかと思ったら、ヒョイと窓枠を飛び越えてしまった。
「ここ三階!!」
誰の叫びが分からない。
ジオラス、第二王子バルド、護衛騎士数人が慌てて窓枠まで駆け寄るが、後の祭り。ガサガサという音と共に地上に辿り着いたらしきアリサ。どうやら近くに繁っていた樹木に飛び移るために窓を移動したらしい。
「嫌~ぁん。毛虫イィィ!」
元気な悲鳴から察するに、怪我等は無いもようである。




