レイモンド参上
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ジジイの味が出せるかどうかがテーマ
冷たい雨がやまない。
アリサもなかなか目覚めない。
この雨はアリサと連動しているのではないかという妄言もチラホラ出て来ているそうだ。主に、理屈と利益で動く執政部と警務官の中で。つまり、アリサの存在を把握している数少ない人々──その中でも妄言や迷信を嫌う人間が妄言を言い出した。それだけアリサの水の上位精霊召喚が衝撃で、更にその上位精霊によるグリフォン等へのタレコミも驚愕ものであったのだろう。普通、召喚された精霊は自主的に動かない。そもそも召喚主の危機に反応して助けを呼びに動くなぞ、まず前例が無い。無かったのだが、その前例になってしまった。
直接的には毒では死ななかったアリシア嬢。しかし彼女が吐血したのは、そしてその吐血がなかなか止まらなかったのは、結局は毒が影響しているのではないかと言われている。
雨がやまない。
そろそろアリサが倒れて(初めから数えて)一週間。
真夏──月替わりの冷たい長雨は、農作物に影響が出る頃だろう。経済に与える影響や、来年度の税金の割合を考えないといけない。考える事、打たねばならぬ対策が増えて行く。
一部の妄言がその他に広がらぬよう注意せねばならない。貴賤の別無く、人間は情報に踊らされる生き物である。特に情勢不安な元では情報の真偽にかかわらず犯人捜し──魔女狩りを始めかねない。そうなってからではアリシア嬢アリサが、延いてはハリシアが生け贄になり、政府はそれらを守れなくなる。ハリシアはこの国の、否、この大陸の心臓部だ。この国のみならず、この世界は人間だけで成り立っている訳ではない。人間は人間以外の存在によって生かされている。隣国シメサツシのように忘れてしまってはいけない。
雨がやまない。
その一点で問題が際限無く山積みになっていく中で、襲撃と表現しても責めてくれるな的な先触れがもたらされた。
──ハリシア前領主レイモンド・ヒュー・アリシア謁見願い
現在の国王にとって現ハリシア領主ユナス・フォン・アリシア伯爵は鬼教官で鬼の先輩。その父親とか、怖すぎる。そもレイモンドは国王から見た曾祖父の弟の息子。族伯祖父……で良いのか? ああ、祖父と従兄弟と考えた方がスッキリする。曾祖父の弟が辺境伯へ婿入りしなければ公爵と呼ばれていたその息子。ハリシア苦難の時代を支え守り生き抜いた隠れた英雄。王から見ても大き過ぎる大物。
現在の宰相にとっての前ハリシア領主レイモンド。彼の方は、もう雲の上の苦労人で、怒らせたくない人ランキングの上位者である。そんな人がこの局面で謁見を願い出てくるとか、もう狙ってるとしか思えない。怖い……。
そんな恐怖の大王的人格者が、どうしてこの局面でやって来た!?
禿げそう。
もう禿げる。
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本来なら面会を求められて即日謁見は無い。だが今上国王と宰相は時間を捻り上げて即日謁見を可能にした。できれば先送りにしたい面会者。けれど先送りにすると悪夢になりかねない人ナンバーワンかツー。
これと言って何かがある人物ではない。けれども怖い。それがレイモンドという老人。
夕刻。
レイモンド前ハリシア領主がハリシア産の土産を携えやって来た。
選ばれた部屋は少し奥まった場所にあるサロン。陽当たりと、調節によっては風通しも良い部屋だ。季節柄、灯りを灯さなくともまだまだ明るい。
王の斜め後ろに立つ宰相。対して王の目の前に座るレイモンド老人は杖を手にしている。やたらと黒光りする杖は、まるでハリシアの象徴のような漆黒。
──漆黒
何物にも染まらぬ色として、ハリシアの象徴とも云われる色。
その漆黒の杖を手に悠然とソファに座す老人は穏やかな顔をしている。
「漸く形になったのでな、土産にしてみましたわ。特に酒の部類はお勧めですぞ」
「酒の、部類?」
「うむ。ワインにウイスキー。林檎を醸したシェリー酒。芋で作った焼酎と、麦で作った焼酎の…五種類か」
「麦で作る酒はエールでは?」
「エールは途中で破裂してもうて、馭者や従者達と呑んでしもうた」
何だろう、この緩やかな感じは。ああそうだ。アリシア嬢とどこか空気感が似ているのだ。やはり血筋なのだろう。
アリサの祖父様は一応、高貴な血筋です。
激動のハリシアを生きて来た割には、表面は穏やかなお祖父さん、になる予定。
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