雨が降る降る、冷たい雨
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何しに来やがった偉い人々!
しとしとと雨が降る。
ジオラスは雨傘片手に観測に来ている。
風の無い雨が降る。
チラリとマントが頭をよぎったが、記録を付けるという都合上、贅沢品でもある雨傘を選んだ。
季節が巻き戻ったかのような冷たい冷たい雨が降る。
雨傘がハリシアの新たな商品(五年程度前に世に出た物)であることをジオラスは知らない。
さらさらと雨が降る。
雨傘がアリサの開発品であるとは、殆どの人間は知らない。
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王達がアリサの見舞いに訪れた時、アリシア伯爵と医務官が揉めていた。
因みに王は、王としての変装を解いて、宰相の付き人の体をなしている。
王達の人員の内訳は、王太子、第二王子、宰相と宰相の付き人を装った王、そして大量の護衛(近衛)騎士。
王が王としての体裁をなしていないとはいえ、普通は一介の小娘の見舞いにこれだけの大物が揃えば大騒ぎになる。だが医務官も薬師も神官もそれどころではないらしい。アリサの治療にあたっていたであろう殆どの人間(大人数)は大物達に簡易式礼拝の形はとってくれているが、それぞれの代表者はアリシア伯爵をとどめるのに必死のようで、見舞い客が大物であると認識できているのかどうかも怪しい。その彼等の言葉を聞くに、どうやらアリシア伯爵はアリサを無理矢理に連れ帰ろうとしているもよう。
当のアリサは目を開けて、ベッドのヘッドボードに上半身を預ける形で座っていた。見舞い客達と目が合う。しかし彼女は何も見えていないかのように不思議そうな顔をするばかり。ただし、非常に顔色が悪い。それが見舞い客達の目の前で更に悪くなっていく。生気の無い青白い顔から、白へ。徐々に呼吸も荒くなり、苦しそうな表情に変わって──漸く言い争っていた医務官達も気が付いた。この期に及んではアリシア伯爵も医務官を止めない。アリサを診察した医務官の顔色もサッと変わる。
「冷たい汗!!」
それまで案山子のように立っていた治療の為の人員が「失礼」と一言だけで動き出す。どうやらアリサ嬢は危うい状態に置かれているらしい。
代表者として王太子が「大事にしてやってくれ」と声をかけたが、治療の為に集まっていた者達に言葉が届いていたかどうかは分からない。
王と宰相の目に、部屋の隅に後退して呆然とするアリシア伯爵が映った。
何もできずに途方に暮れるアリシア伯爵を見るのは、二人にとって初めての光景であり、強く印象に残る。
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ジオラスがアリサの元に戻った時、場は騒然としたままであった。アリサが危険な状態にあるのだと瞬時に悟りジオラスも真っ青になったが、ジオラスの帰城に気付いた薬師がアリサの元へジオラスを導いていく。
アリサは足の下に何かを敷かれて脚を高くした状態で、片手を表情を無くしたアリシア伯爵に握られ横になっていた。他は神官達が三人も取り囲んで、彼女に某かの回復魔法をかけている。それでも彼女の顔色があり得ない程に真っ白で、ジオラスは泣きたくなった。
「少年──いや、青年! 彼女に魔力の供給を施してはくれまいか?」
気付くとアリシア伯爵が必死の形相でジオラスに縋るような眼差しを向けている。ジオラスは一も二も無くアリサの残る手を取った。
自分にもできる事がある。
それがどれだけの救いで支えになるのか、ジオラスは初めて知った。
アリサはその後、足掛け三日も目を覚まさなかった。
そして、ジオラスの日課にアリサへの魔力の供給が加わった。
地味に地味にジオラス、成長しております。
そしてそろそろアリシア伯爵は挫けそうです。
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