激怒
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今回は説明回
当然だが、アリサの吐血後は大騒ぎになった。
前回の暴行事件の時は、騒ぎは騒ぎでも、何のかんので警務とその関係者の内々で騒ぎは封じ込められていた(はずな)のだ。が、今回は会議室エリアから担架で、しかも血を吐きながら(変わった衣装の)令嬢が運ばれたので、それなりの数のそれなりの人々に目撃されていた。結果、箝口令を敷く間もなく、それなりに他者の口に昇る………。サセク元宰相補佐官の残念な中身をあらためて目の当たりにした上役達は、それらを踏まえて庇う気が逸れた。アリサの方が──ひいてはアリシア伯爵もといハリシアの方が価値が圧倒的に高かったのも理由の一つだろう。
それも踏まえてサセクの処遇が決まったのだが──
アリシア伯爵が今度こそ激怒した。
まず、アリサの吐血が止まらず、出血多量で死にかけた。優秀な医務官と薬師と神官を大量に投入して漸く命を取り留めたのだ。というか、アリサでなければ死んでいた。アリサが助かったのは、見事な治療の前に、彼女が度々死にかけてきた来歴が大きい。この娘の踏ん張りに乾杯、の事実あり。
アリシア伯爵が元上司──サセクに対する要望を出しに来た時には怒りが一周していて静かで怖いという状態。いつの間にか提出されていて受理されてしまった書類は、アリシア伯爵の休暇届けではなく、辞表であった。休暇願いであれば部署との兼ね合いがあるので上司──この場合は宰相の採決が必要になるのだが、辞表となると簡単な手続きで済んでしまうのだ。現在のアリシア伯爵が宰相補佐官の執務官であったのも城側としては災いした。所謂中間管理職であり実質雑務なので、簡単な書類提出で済んでしまったのだ。
実のところ、ユナス・フォン・アリシア伯爵という男、なかなかの仕事人である。二年近くも領地に帰してもらえないくらい宛てにされる程度には。城側は焦った。これでアリシア伯爵は一領主で当主となる。城内の役職による圧力で忖度を期待できなくなった。しかもハリシア領は何気に国の重要拠点を押さえているのだ。まずは南北の港。国内外の貿易拠点として大きな役割を果たしている。ここにそっぽを向かれるのはかなり痛い。他にもハリシアと言って真っ先に出て来る名前《帰らずの森》は、精霊や神獣の住みかと云われ、人ならざる存在は余所者を嫌うという。というか、アリシア家の中からたまに出てくるお気に入り以外は排除される。更に良質な魔石の産出地で、もはやフリングホーニでは魔石の無い生活は考えられない。他にも良質な材木、農産物、水産物の産出地。合わせて次々出て来る加工品の数々。ハリシアを敵に回せば国は回らない。百年は文化が遅れるとまで云われる程なのだ。そんな土地の領主を本気で怒らせてしまった。
とどめにハリシア領民は領地愛が強いとも云われている。そしてハリシア領民はアリシア家が大好き領民としても有名。少なくとも王都や諸外国と付き合いのある有力ハリシア領民はアリシア家に義理を立てるだろう。
まずい………非常に不味い!
ただでさえアリシア家は王家に良い印象を抱いていない。それには、アリサ達世代から見た曾祖父──現アリシア伯爵の祖父に原因がある。
現アリシア伯爵の祖父は当時の王弟で、ハリシアと王家の為と張り切り、結果としてハリシアを食い荒らした。必死に止める妻──当時のハリシア領主を無視して。当時の領主が鬼籍に入った時、王弟による妻暗殺説が真しやかに流れたくらい、本当に誰の言葉も聞かなかったらしい。その傷痕は未だにハリシアを苦しめているというから、彼等の王家嫌い、延いては余所者に対する警戒の強さは仕方がない。実際彼の地は場所によって土地の特色が大きく変わり、必然的に文化も変わる難しい土地でもあるのだ。川一つ亘れば文化が変わり、同じ領民でも分かりあえないとまで云われているとか。そんな土地を十把一絡げに机の上で処理し、全く現実を見ずに土地を殺し、最後は自分の息子──現アリシア伯爵の父親に実力行使で幽閉に追いやられた元王家の男。
──何て事をしてくれやがったんだ!
もうこの一言に尽きるだろう。
アリサは三日も目を覚まさなかった。
その間にアリシア伯爵はアリサごと諸々を王城から引き上げる準備も整えてしまう。
王と皇太子、そして宰相は慌ててアリシア伯爵を引き留めに走るのだった。




