精霊の雨
お久し振りです。お正月ボケからなかなか抜け出せない作者です。
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます。
☆評価、ブクマ、いいね 等、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
今回の冒頭はジオラス出発。最後もジオラス着地でお送りしますm(_ _)m
さすがに本職の魔法騎士達の訓練には混ざれない。故にアリサの元へ向かおうと決めるも、そもそもアリサがいつもの魔導師棟に居ないのは予め聞いていた。だが何処に居るとは聞いていない。さてどうしたものかと思っていたら、今度はアリシア伯爵に出会った。正確には遠目に捉えた。ジオラスは犬のように、一目散に駆けて行ったのだった。
アリシア伯爵に付いて行くこと、本館食堂。城は基本的に各棟ごとに食堂等のインフラが整えられている。しかしやはり、食堂に関しては本館に人が集まり易い。らしい。そして本日アリサは、前回に引き続き本館の中央食堂に居るとのこと。ただし前回は、本館の食堂は食堂でも騎士や平役員が集まる通称《本館食堂》であったのに対して今回は《中央食堂》。人の膾炙する《中央食堂》は役持ちや上位貴族が利用する場所であるそうだ。だが決められている訳ではなく、自然と棲み別けされた結果だという。故に何かの祝い事等には平の人間達も思い切ったように《中央食堂》に出没する事もあるそうだ。出没との単語が出て来た時点で、既にそれが稀な事であろう事がうかがえた。
アリシア伯爵の話を聞きながら辿り着いた《中央食堂》は、何故が水浸しになっていて、かくいう今現在も食堂からヒタヒタ音をさせながら水が溢れ流れて来る。パシャパシャ水を蹴りながら入れば、天井からはポタポタ雫が落ち、そこそこの護衛騎士(たぶん近衛)と第二王子、そしてたぶんかなりの上役二名、ついでにその他の役持ちらしき外野、トドメが牛か何かの肉の塊(首と足先が無いだけの)丸一頭とアリサ全員がずぶ濡れだった。アリサの手にアリサ専用の包丁がある事から、もしかしたら解体でもしていたのだろう彼女の立ち位置。
「………何事だ?」
「……父しゃまぁー」
本当に何事?
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アリシア伯爵とジオラスが到着する約三十分前。アリサは首と足先が無いだけの牛一頭から皮を剥ぎ終わったところであった。場所は中央食堂。何故こんな場所で?
「アリシア嬢、何をしている?」
「………殿下…と、何やら偉そうな方々。ごきげんよう」
「……それは牛か? 一見して皮を剥いでいたようだが。何故食堂でそのような事をしているのかな?」
本日の第二王子は口調が少し優しい──と言うより馴れ馴れしい。おそらく周囲に第三者がチラホラ見学しているからだろう。(自称)少し気さくなお兄さんの仮面を被っているようだ。
「わたくしにも良く分かりませんの。こちらに来るよう魔法のオジサンに言われまして、いざ訪ねて来たらこちらを解体するようにと、厨房から命じられましたの」
「………料理長?」
中央食堂料理長曰く、魔法棟の役持ちに期待の新人が居ると胸を張られた。彼女の料理は中央食堂よりも美味いと自慢された。ではお手並み拝見したいと願ったら、翌日──つまり本日早速派遣された。中央食堂を差し置いて美味いと評判ならば牛の解体くらい見せてもらおう。城勤めするならば、これくらいできなければ納得できない。とのこと。
「わたくし、お城勤めする予定はございませんことよ」
「こちらも聞いていないな」
え!? 新たな料理人では!?
「わたくし、ただの学生ですわぁ」
…………………………。
アリサは答えながらも手際良く解体を進める。だがさしものアリサも小さな包丁一本では作業が捗らぬらしい。最初は大人しく眺めていたお偉いさん──実は変装(を解いた国王)が悪戯心で話し掛けた。この国を初めとした周辺諸国でも通用する帝国語で。これは三百年くらい前の時代に今は無き帝国語がこちらの大陸の共通語として広く利用されていた名残で、未だに周辺諸国で通用する言語であるのに起因する。つまり教養を測る手始めに最適であるのだ。実際かつて帝国があった辺りは今でも使用されている言語である。つまり廃れ難い。
何はともあれ、アリサは答えてしまった。それもなかなか流暢に。そうすると色々試したくなったのか、国王が又しても言語を換える。それら総てに答えてしまうアリサ。そのお遊びの途中で合流した宰相と魔法のオジサンこと魔術師長の前で。こうなると本当に悪のりしてしまうのが魔術師長という人間である。魔術師長は古代語から試し始めた。古代語は官僚を目指す人間もさらっと習う言語だ。しかし簡単な単語を意味として読む事はできても音読はできない程度。つまり片言でも喋る事が可能であるというのは、周辺諸国までも鳴り響く魔法の実力を持つ魔術師棟への入団すら可能である証明になる。この娘、我が儘お馬鹿かと思えば結構な教養が詰まっている。気を好くした魔術師長は調子に乗った。今度は精霊語を試したのだ。精霊語は魔術師棟に入ってから専門教養として習う言語。ただし習ってはいけないという法も無い。実質習えないというだけ。それにもアリサは答えた。もはや魔術師長とアリサの会話に付いてこれている者など居ない中、アリサが精霊語のまま魔術師長に質問を投げ掛けた。曰く、読めない文字があると。軽くその字を示せと催促する魔術師長にアリサは水の魔法で宙空に文字を描いた。それを魔術師長に向けて反転までさせる魔力の繊細な操作力。魔術師長は嬉し楽しで嬉々としながら読んでやった。アリサがそれを真似する。少し発音が違ったのか魔術師長が同じ発音を繰り返す。それを繰り返すこと三度。魔術師長が満面の笑顔で頷くと、アリサが何やら呪文を唱えたのだ。先程の単語が含まれた短い呪文を。その途端、大雨が降った。中央食堂の中──つまり室内に。もうゲリラ豪雨並みの土砂降りが。
「……………何で上位精霊あっさり呼び出せてんだよ?」
ショックでフリングホーニ語に戻る魔術師長の言葉に中央食堂内に居た誰もが唖然とした。アリサ本人も。いや、アリサは自分が何を仕出かしたのかまだ判然としていない。
──ワハハハハハハハハ! いや楽し!
「うっせー! さっさと精霊界帰れ!!」
──召喚主はお前ではない! ワハハハハハハハハ!
「会話成立してるなら少しはこっちの話聞けよ!」
上位精霊相手に喧嘩を売れる魔術師長、貴方は凄い。
単語は多少違えど似たり寄ったりの感想を各々が浮かべている中、アリサが呆然としたまま言った。
『楽しき隣人、優しき隣人、厳格なる隣人、呼び掛けに応えてくれてありがとうございます。揺蕩う遥かなる命の海にお戻りを』
──ワハハハハハハハハ! 可愛らしき姫よ、気高き天使よ、慈悲深き女神の卵よ、汝の声にならば再び応えよう!
お騒がせ精霊がシュルルルルと消え去る。
「………何事だ?」
アリシア伯爵が到着したのは精霊が消えてから一、二分後。
「……父しゃまぁー!」
アリサが噛んだ。可愛い。ではなく、我に返ったアリサが父アリシア伯爵の元へと走り(濡れたままの状態で)しがみついたのだった。
因みに濡れた全員を乾かしたのは父親に泣き付いて少し落ち着いたアリサ本人。プルプルと濡れた頭を振り回して水気を飛ばした後の処置。
「お前は犬か……!」
呆れたアリシア伯爵の愚痴も何のその。
その傍らでジオラスが、大人になるまでにアリシア伯爵とアリサ兄ファルゴル以上に信頼される男になろうと静かに一人決意を固めていた事など、当然誰も気付いていないのである。
今回馬鹿笑いしていたのは、たぶん水の上位精霊。
今回の上位精霊のイメージは、綺麗なお姉さんではなく魔法のランプから出て来る魔神。何故だ!? しかも魔法のランプ魔神のようには会話が通じなさそう……。
魔法のランプ魔神でも別に好いよ、というお優しい方は
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