添えられたのは豚汁。最後に蛸一本
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます。
☆評価、ブクマ、いいね 等、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
「暴力的な」と表現しても良いくらいの、真夏の食堂でも食欲をそそる未知の香り。嗅いだ記憶など無いのに、美味そうだと思う。思ってしまえる。昼時はとっくに過ぎた職員用の食堂に漂う衝撃。自然と厨房へ目をやれば見慣れぬ可愛いチンクシャ。はて?
こう暑くなって来ると軟弱体質の文官はめっきり減る。奴等は夕方に涼しい民間の食事処に出没するという。しかし騎士は身体が資本だ。訓練等で、もう胃が受け付けない! とか思っても、少し休めば腹がへる。健康な証拠だ。
しかし季節柄、城の食堂はどうしても傷み難い料理の作り置きが多くなる。正直飽きる。飽きても食べるけどな! 特にこんな中途半端な時間に外食は無い。時間が足りない。城の食堂しかやってない。ないない尽くしだな。
そんな時にこの匂いはない。何だ? この狂暴な匂いは!?
──グググググルルルルルゥゥゥぅぅ………ぐるる
やばい。胃腸が猛烈な主張を始めた。食いてー!
食えねー!
何でだ!?
いつも通り食事を取りに行くと待ち構えている料理人。渡された料理には変わったところはない。食べてみても何も変わらない……。
一方、見えるテーブルでは見慣れない面々が見たこともない献立に舌鼓を打っている。あれだ! 凶悪な匂いはあそこから漂ってる! 何だあれ!?
近づいて追及したくても第二王子とか居るし無理! つか、何で王子が一職員食堂に居る? 美味そーう。肉? 野菜多過ぎないか? あれ米? 輸入品だろあれ? 美味いの? 美味いんだな! 何なんだあのクソ餓鬼! あの目は〈水伯爵〉家の餓鬼だな。「あーん」とか、「あーん」!! 夢の「あーん」を、あんなに!!!!!!
く・や・し・い……❗
羨ましい❕❕
目撃者の多くは第二騎士団の人間であったそうな。
それ以外、少数派の第一騎士団や文官は、勿論何故第二王子が? とは思っても、それ以外のあれこれも当然気付く。どうして側付きや護衛騎士までテーブルに付いて居るのかとか、その他の同席者とか……。特にオッサン(アリシア伯爵)だけ年齢層がかなり上。いったいどんな集まりなのか? とか、とか。
当然のように噂になる。だが、まるで都市伝説のように要領を得ない噂に変質していった。
城勤め女官達の噂話し
「第二王子に粉掛けてる女の話、知ってる?」
「それ女じゃなくて男の子だって! 髪の毛女じゃあり得ない短さだって」
「え!? じゃあ同性愛?」
「うちの国なら、嫡男とかでなければありだしねー」
「マジか……」
「どうりでお妃候補が全滅する訳だわ」
「ね、ね、それよりクルイウィル家のボンボンが最近城に出入りしてるって知ってた?」
「それよりって……」
「それ、御次男のクラウス様でなく?」
「御長男のサイラス様もエリート街道でしょう?」
「違う! って事は、弟さん?」
「粉掛けたい……」
「誰なのか分からず話してたの?」
「あたし子供はちょっと……」
「子供じゃなくて色男よぉ、きっと」
「きっと!?」
「私は色男より頼りになる男希望」
「頼りと言えば経済力よねぇ」
「出たわ、守銭奴」
「私は愛がないと」
「愛より常識……」
「あんたも色々あったもんね」
女官達の噂話しは止まらない。
〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉
その日の午後の観測は急ぎ足で行って、帰りはいつも通りの帰城となった。
アリサの同行者は警務の人間が外れたのでスリム化し、ついでにどういう訳かアリシア(保護者)親子も居なかった。要はクルイウィル兄弟しか同伴者が居ない。するとどうなるか。入城の際に城門で引っ掛かる。別に怪しまれての事ではない。原因はアリサだ。
「君、第二の訓練で難癖付けられた娘だよねー?」
「一部の先輩達がごめんね」
「女の子なのに髪短い。短いけど可愛い♡」
「君、美味しい御飯作ってくれる娘でしょう?」
「ねーねー、何か欲しい物とかある?」
「行きたい場所とかは?」
いつもの比でなく人数が多い。門番以外の制服まで混じっている。明らかにアリサ目的だろう。クルイウィル兄弟は警戒する。
が、そこは安定のアリサ。庇われる必要も無く天然回答で撃退が叶う。
「蛸が欲しいです」
「……………」
「……タコって何?」
無言はクルイウィル兄弟。戸惑いは待ち構えていた門番達。構わず説明を始めるアリサ。
「海に生息する軟体生物です。動物界軟体動物門頭足綱蛸形亜綱八腕形上目蛸。小さな種類はわたくしの掌にも乗りますが、大きな物は貴殿方のような立派な体躯の方を絞め殺せるくらい大きく屈強な筋肉の塊です。小さな種類は猛毒を有する物も居ると聞きます。特徴は吸盤の付いた八本の足で、大変に美味。タウリンが期待でき、夏やお酒の肴に持ってこいの食材。大概の土地では化け物扱いで嫌われ物。勿体ない」
「アリサ!」
「兄様?」
つかえていた城門に、後ろからファラゴルがやって来た。
アリサが他の男達にペコリと頭を下げてから兄の元へと向かう。ファルゴルは小脇に一抱えの木箱を携えている。
「アリサ、領地から土産だ」
「領地に帰ってましたの!?」
「私じゃないけどな。それより中身は気にならないか?」
「それは、まあ……」
「蛸の足だ。実は密かに頼んでおいたんだ」
「きゃー! 兄様素敵❗」
「そうだろう。まあ、威張ってみたところで一本しかないんだけどな」
「蛸のマリネ、酢だこ、他には──」
「断然、たこ焼だ!」
「たこ焼には専用の鉄板が必要ですわ」
「領地に取りに帰るか」
「その前に蛸が傷んでしまいますわ。ああ、残念。鰹節も手に入ったなら、完全版に近いたこ焼が焼けますのに」
「今すぐ領地に帰るか? ワイバーンなら夜半にはあちらに着くし、夜明け前に向こうを発てば朝の観測に間に合うだろう」
「たこ焼の為だけに城を相手に交渉して、ですの?」
「父上に丸投げしよう。父上なら何とかしてくれる」
「そんな訳あるか、馬鹿者!」
「父上……」「父様」
「アリサ、擬きで良い。たこ焼完成品擬きは作れんか?」
「お煎餅……うーん、小さなお好み焼きならそれっぽく? でも独特の半熟っぽい食感は無理ですわね」
「今回は諦めだな。そら、入るぞ」
「はーい」×兄、妹
付き添い及びその他の男達は、結局保護者達に惨敗したのであった。
生姜焼きと豚汁を羨ましいと見ていた人間の心の独り言。
タコ。タコと言えば、作者的にはお正月とたこ焼。
現実時間軸は年の瀬でも物語は夏真っ盛り! 夏にはたこ焼。たこ焼にはビール派の作者です( ≧∀≦)ノ
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