番外編② ふうわりふわり
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緑色の髪を持つ騎士が青く染まった髪を持つ女性を大事に大事に横抱きにして、息を荒げながら階段を上っている。
緩やかとは言えないが、丘陵地に延々続く階段。所々に木々はあるも、大地を覆うのは白い石と岩。丸い段々畑のような、丸いピラミッドのようなその地は、所々に柱のような岩があって、色味も相まって神聖な祈りの場のようだ。
頂上近くまで上り切った騎士が見晴らしの良い場所で足を止める。そのまま暫く呼吸を調えながら、言葉無くただ見下ろせる景観に自身の心も整えた。
今、彼の眼下に広がる景色は凍った湖。まだお御渡りには早い。所々に透き通った緑がかった青色が覗くアイスブルーの湖面。この独特の青緑を見られるのは極めて短い期間だけ。今回見られたという事は、随分と運が良かったらしい。
「レディ。そのままで良いので、この景色を観てやってください。夏とは違う湖の色を。独特な青緑色は今しか見られませんよ」
騎士は彼女を下ろす事なく優しく声をかけた。今まで声をかけなかったのは、自身の呼吸を調えるばかりではない。胎児のように体を丸め、震え続ける彼女が泣いていると思えたからだ。実際顔を上げた彼女は、目にいっぱいの涙を浮かべていた。しかし溢すには到っていない。よくこれで流れぬものだ。
騎士の勧めに景色に目を向けた彼女が大きく目を見開いた。それを切っ掛けに、たまっていた涙が零れ落ちる。一粒、二粒、三粒……次から次へと零れる涙。
「……………綺麗」
大変に麗しい声も零れた。
それからそう時間を置かず、背後から荒々しい足音と息遣いが近付いて来た。一人二人の物ではない。かなりの数のそれに、彼女が騎士の胸に顔を埋めてしまう。一度は治まった震えが再燃する。騎士は気遣いの欠片も無い追っ手に静かに振り返った。彼等が何かしか口を開きかけたところに人差し指を一本立てて示す。本来なら唇の前に立てたかったのだが、両手が塞がっているので仕方がない。言いたい言葉は一言。
静かに。
しかし相手──団体様の代表者は気付いているのかいないのか配慮を見せる心積もりは無いようだ。
「騎士殿、そちらの女性をお渡し願いたい」
「騎士たるもの、そちらの御要望にお応えする訳には参りません。逆の立場にお立ち願えれば、御理解いただけるかと」
緑髪の騎士は穏やかな口調で撥ね付けた。
代表者の表情が険しくなる。しかし緑髪の騎士に理解は示したようだ。少しばかり逡巡したようであるが、さすがは隊を率いる人物だ。すぐに立場を明かした。それでなければ緑髪の騎士を納得させられないと考えたのだろう。
「わたくしどもは国よりそちらの御婦人をお迎えに上がるよう言いつかって来た者です」
「国」と一言で言ってはみても、国のどのような部署の人間達であるのか、また腕の中の彼女はどのような人間で、何故国などという大きな組織からこのような大がかりな迎えが来るのか……何も分からない。そもそも迎えと表現するには、些か乱暴に過ぎる。
それでも、と緑髪の騎士は思う。力押ししようと思えば幾らでも実力行使にて奪える。しかし目の前の責任者であろう男は言葉を以ての解決を選んだ。
「………レディ。貴女はどうしたいですか?」
それでも、とうの本人を無視して進めて良い話ではない。
すっかり青褪めた女が顔を上げる。改めて良く見ると、まだ若い。せいぜい二十歳前後だろう。そのような若い女に何故このような大がかりな追っ手がかかっているのか?
「御婦人。帰りましょう」
帰る?
緑髪の騎士は混乱する。
緑髪の騎士の腕の中で嫌イヤと首を振る女性。
騎士は素直に迎えの男に応じられない。
迎えの男、責任者らしき男が左腕を軽く上げてクイッと手首を振った。途端に現れる首輪。首輪を嵌められた女が騎士の腕の中でもがき出す。
「彼女に何をしたのです!」
「騎士殿、どうか御理解願いた──」
「理解などできない! こんな!」
「我々はこうするよりないのです。こちらのお方をこれ以上苦しめたくないとのお考えならば、どうか御婦人をこちらにお渡しください」
はいそうですか、と渡せるものではない。まずこのように苦しめている時点で信用できない。腕の中でもがく女を、これから先も苦しめ続けるであろう予測しかできないではないか。だが! このままでは………!
女がこれまで以上に暴れ出した。騎士が落とすまいと必死に声をかけながら抱きすくめようとし、責任者らしき男も助成として手を出す。他の男達も近寄ってこようとしたが、男達の奮闘虚しく女性は騎士の腕の中からまろび出る。だが地面に落ちる事なくフワッと男達を避ける。急斜面──崖に近い方へ向けて。
「レディ!!」
「魔女様!!」
魔女!?
騎士も追っ手の男達も混乱の中にあったが、咄嗟に彼女を追う。
責任者よりも足の速い若者が騎士と並ぶ速さで女性に迫る。だが地の理は騎士に。二人の手が女性にあわや届くか! となった時、女性にかけられていた首輪が弾けた。自由になった女性が、首輪の力を破った反動を利用して一気に湖上へ移動した。
そして!
湖上の氷が中央から割れる。割れながらせり上がる。水面下から何かが出て来る。とても大きな何か。ドラゴンのような頭が水と氷をかき分け、女性に狙いを定めたように見えた。
「レディ!!」
しかし女性は逃げる素振りも見せず、怯えるでもなく、ドラゴンのような何かも食べるでもなく、頭突きの要領で鼻面にとらえた女性をポーンッ! と弾き飛ばした。
女性が空高く舞い上がる。
そのまま風に吹かれるようにして、何処ともなく姿を消した。
ドラゴンのような何かも、女性を見送ると幽霊のように姿を消した。
割れた氷は割れた状態のまま、水面に浮いている。つまり、幻術の類いではなかったとい証左といえよう。
番外編、まだ続きます。
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