番外編① ふうわりふわり
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
今回は初めての番外編をお送りしますm(._.)m
──魔女様らしき反応が感知されました!
その報が城に響き渡ったのは、魔女殿が失踪されてから、ゆうに四ヶ月──もうすぐで五ヶ月経つ頃合いであった。
魔女
宰相と並ぶ国の舵取りを担う一人。国の役職であり、男一辺倒になりがちの政に女性の視点から風を吹き込むのがお役目の立ち位置。
城を出奔した魔女殿が魔女の位に就いてから、早十六年。この十六年間、魔女殿の言葉を素直に聞いた者は皆無──皆無ではなくとも稀であった。彼女が魔女の位に就いた年齢が、あまりに幼い時であったから、どんなに正しい助言も注意も賢しらに聞こえてしまったのだ。
これが先代の魔女様であったなら違ったであろう。先代は既に八十の齢を超えていたので、纏う貫禄だけで頭を下げたくなったものだ。
彼女が位を引き継いでからも先代様が御存命の内は堪えておられた。だが、先代様がみまかられ、心の支えを失われ、心の芯が折れてしまわれたのやもしれぬ。
ある日の舞踏会で、魔女殿は伯爵婦人にからかわれた。だが魔女殿は何も言い返さなかった。顔色も変えなかった。城にある者達は気付いていなかったのだ。魔女殿がとうの昔に声を失っていた事に。涙すら枯らしてしまった事に。
魔女殿はその舞踏会から自宅へ帰宅する事なく、そのまま出奔なされてしまわれたのである。
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この国には『姫の奪還』というスポーツがある。起源は文字通り、奪われた姫君を奪還した昔の出来事にあるという。かつては姫になぞらえた本物の(ただしドレスではない)女性を奪い合う競技であったそうだ。しかしそれだと女性の負担が尋常ではない。主に精神面が。実際に女性の怪我が続いたのを機に、今では大きな麦袋を運ぶようになった。
この競技は男性達、特に騎士のような職業の人種のロマンを掻き立てるらしく、女性から麦袋に変わってからも変わらぬ不動の人気を誇る。結果として、国中に競技者及びチームが存在しているのだ。この辺境の街でも人気は盛んで、寒い冬の熱い風物詩の一つとなっていた。
そう、この競技は農閑期──基本、冬に行われる。理由は競技者や観客の確保や、広い競技場の必要性からと言われる。今年も雪の舞い散る中、熱く滾った男達が右に左に走り回る季節がやって来た。しかし今年はいつもの年とは少し様子が違う。それは特別な観客が観に来るようになったから。
彼女は妖精なのか何なのか、気が付くと競技場の上にふわふわ浮いて競技を観ている。初めは金髪に灰色の服が、彼女の興奮を示すように赤く染まって行くのだ。すぐに選手も観覧者も彼女の存在に気付いたが、如何せん彼女は上空に漂っている。手出しどころか話しもできない。
いつしか彼女は競技者の守り神と云われるようになった。実際に不思議な力が働いたとしか思えない状況で、怪我人が全く出ていなかったから。
同時に、男達の憧れの存在ともなっていた。人間は大魔導師や大魔女でもなければ空を飛べない。だから彼女はきっと妖精か精霊。安心して、仮の恋心に胸をトキメかせていられる。
本日もいつの間にか上空に彼女が現れていた。女性にしては短い髪──肩まで届かぬボブに、体にピッタリ首から足首まで覆うタイトなワンピースが既に赤く染まっていた。ふうわりふわりと、円を描くように競技場の上空から競技を見守っている。そんな彼女が不意に揺れた。彼女の異変にまず気づいたのは観客であった。彼女が狼狽えながら地表にふわふわ近付いてくる。地面に近付く程に、彼女の内心の表れか、髪の毛ばかりか服まで青く変わりながら。彼女の美しい顔が見てとれる距離まで降りて来た。彼女は明らかに戸惑い怯えている。キョロキョロと周囲に視線を彷徨わせながら、地上には降りたくないと脚を縮める。
異変はもう一つ。観客席からゾロゾロと見慣れぬ男達が隊列を組んで下りてくるではないか。明らかに素人のそれではない。観光客も訪れる競技なので警戒が疎かになった。彼等は初めから彼女の捕獲が目的だったのだ。
競技に参加していた一人の騎士が動いた。彼女の背中側と言っても良いような横合いから彼女にタックルを掛けているかのような勢いで彼女を確保したのだ。彼女を手にして騎士はそのまま駆け去ろうとする。それを阻止しようとするのは敵チームの人間ではなく、乱入を果たそうとする謎の男達。その謎の男達を阻止しようと動くチームメイトや敵チームの面々。
競技場は混沌の様相を見せ、観客達が大いに沸いたという。後々に至るまで語り草になったのは言うまでもない。
元は夢ネタ。短編として書き出した物ですが、無理矢理本編に組み込みました。
その為、今回短い。次回に続きます。
一応、番外編はオチまで夢ネタです。




