スポーツドリンクはどうなったのだろう?
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございますm(_ _)m
今回、会話はございませんm(_ _)m
大変に下らない騒動が静かに巻き起こりつつある。
騒動の発端は年齢不詳男──魔術師長の子供じみた自慢から始まった。
彼曰く──オムレツという名の卵料理は絶品だった。朝から焼き立てのパンは麦の香りが芳しく、白く柔らかく甘かった。パンに付けるジャムは幾種類も用意されていて、どれも珍しく大変に美味であった。新鮮な野菜とは、かくも美味いものだったのか。珈琲なる高級品を初めて口にしたが、苦味の中にフルーティーな華やかさと甘味があり素晴らしかった。アリシア家の食事は羨ましい限りである。
当然ながら魔術師達の間で話題に上る。今朝にいたってはクラウス以外の魔法騎士も御相伴にあずかっていたので、妙な具合に羨望の輪が広がりを見せたのが不味かった。他の騎士団にまで噂が広がってしまったのだ。
問題は別方面からも悪化の徒を辿る。魔術師長に直接自慢された大物、宰相が大変に僻んだのがいけなかった。宰相はわざわざ事を大きくする為だろうとしか思えない相手、殿下方に、それも御丁寧に三人全員に愚痴ったのである。
これまた当然のように魔術師棟でアリサ手作り料理にありつこうとする王子二人。王女は夕飯を狙っている。
が!
当のアリサがその日は魔術師棟に戻って来ない。
原因を調べたところ、王城の警護が任務の第二騎士団がやらかしていた。
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元々はジオラスが兄クラウスの騎士としての訓練を見学させて貰う予定を口にしたのが発端だ。アリサとの距離を縮めたい兄弟が揃ってアリサを訓練見学へと誘ったのだ。アリサとしては城の中ではやれる事も無く、歩き回れる範囲にも制限がかかり息が詰まりつつあったので了承。警務の面々も頷いたので予定が決定する。
しかしここでアリサがお節介を思い付く。地球で言うところのスポーツドリンクを用意して行く事にしたのだ。クラウスは時間が押しているのでこれ以上の同道を諦めた。当たり前にアリサに同行しようとする弟ジオラスを引き摺ってその場を退場。二人にしてみれば警務の人間が居るのだからという油断である。しかしこれがいけなかった。アリサが用意を終えていざ出発の段になって、それまで付いていた警務の面々が急遽呼び出しとなったのだ。要件は内部告発に関するあれこれであった。その際に成された引き継ぎが不十分であった為にアリサは別の訓練場へと案内されてしまう。それが第二騎士団の訓練場であった。では何故第二騎士団の訓練場かと言えば、たまたまその時間に訓練が重なっていたのが第二であったからとしか言えない。
本来ならば、だからどうしたというだけの話だ。だが第二騎士団の訓練場に到着して見学を告げるやいなや、何故かアリサの参加が強制的に成される。アリサの言い分は誰の耳にも届かない。元々の話を知らない警務の面々は第二を止めようともしない。アリサは訳も分からず延々と走り込みをする羽目になる。しかしアリサは騎士など目指した事もない女の子だ。当然付いていけず、他が打ち合いの訓練に移るまでノルマの周回を許されなかった。彼女の悲劇はまだ終わらない。更なる試練がアリサに襲いかかる。彼女の息がまったく調わない内に、今度は打ち合いを強要されたのだ。普通ならこうなる前に護衛に付いていた警務の面々が止める。だが彼等はアリサのせいで警務隊が告発を受けたと思っていた。それ故の嫌がらせ。見て見ぬふりに出ていたのだ。ついでに第二騎士団は、単なる脳筋であるが故に初めの思い込み、アリサは騎士に憧れる十二、三歳の男の子の体験入学説を疑いもしていない。信じられないことにこのような体験入学は本当に間々あり、本格的に騎士の世界に入る前に現実を突き付けて篩にかける意味もあるのだ。
それはそれとして、もう無理だという声を肝心のアリサ本人がもはや挙げられる状態ではない。だが良いのか悪いのか、アリサは訓練用(しかも子供用)の木剣を持てなかった。彼女には重すぎたのだ。しかしそれでも諦めないのが脳筋集団・第二騎士団。子供達の体験入学に慣れていたのも災いした。今度は子供用の棒状の武器を渡して来たのだ。重さその物は木剣とさして変わらないのだが、持ち手を自由に分散させられるのが良かったのか悪かったのか、アリサでも扱えてしまった。
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魔法騎士団の訓練場に兄ファルゴルが向かって、異常が発覚した。アリサが居ないのだから騒ぎになるのが当たり前である。ここに至るまでどうしてクルイウィル兄弟は気付かないのだとなるが、訓練に参加していると時間の感覚は通常とは違うので「あれ?」とは思っても訓練を中止する程ではまだなかった。そう。ジオラスもちゃっかり訓練に参加していたのだ。彼は学園で〈騎士訓練部〉に入っていたので余裕は無くとも食らい付いていたので、尚更アリサがそこに居るものとして動いていたらしい。逆に言えばアリサが見ていると思い込んでいたからこそ張り切り、踏ん張りが利いたとも言う。それが逆の目に出た。「アリサは何処に行った!?」とのファルゴルの叫びで現状を把握した魔法騎士団の慌てぶりや如何に。
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残念クルイウィル兄弟を置き去りにしてファルゴルはいち早く第二騎士団の訓練場へと辿り着いた。理由は、魔法騎士団と同時刻に訓練が被っていたのが第二であると記録を調べたからだ。クルイウィル兄弟もファルゴルの後を辿るように同じ道筋で第二騎士団訓練場に辿り着くが、その時にはもうアリサはファルゴルの背に庇われていた。これは後から判明した事だが、手加減されていたのはあるが、アリサはただの一撃も受けなかったらしい。ついでにアリサの相手をしたのは、昨夕にアリサの泣き顔に気付いた(仮)門番であった。
(仮)門番の頭の中は、これまた残念思考であった。本日のアリサが男装であった為、昨夕の姿を〈女装〉であると決め付けてしまったのだ。そして(仮)門番の価値観では、身体と心の不一致は認められても、身も心も男であるのに女装とは何事か! という類いの脳筋であった……。
第二騎士団には、心と身体の性別不一致を認められない者が中年層に少数、心身の性別不一致は認められても男子たる者〈女装〉など許すまじ! という人間が年齢や身分関係無しに一定数。どちらもケースバイケースだとする者が、これまた年齢や身分関係無しに極少数。不幸なことに(仮)門番は大多数の中に居て、自分の価値観を疑った事なぞなかったらしい。それ故に、子供でも気付けるような馬鹿げた真実を見逃し、馬鹿げた結果に至る。唯一の慰めは、アリサに対する手加減の事実だろうか。
どの道またしても(仮)門番はファルゴルの激怒を真正面から受ける羽目になったのであった。
アリサは兄ファルゴルに保護された時、既に立っているのがやっとの状態になるまで疲弊していた。どうやら只でさえ魔力欠乏症から完全回復していない状態であったにも拘わらず、圧倒的に足りない体力を魔力で補っていたようだ。しかも彼女は身体強化の才能はゼロ。結果、無理な補い方をした反動で、そろそろ命の心配をした方が? と言うくらい危険に陥る。
アリサは立ったままグハグラしているのを危ぶんだ兄に抱え上げられ、医務室へ緊急搬送された。
魔力欠乏症の相手には魔力の譲渡を行えば良い。ただし相性というものがあり、大概は血の繋がりのある者同士の方が相性の良い確率が高い。地球風に考えれば、臓器提供や骨髄ドナーの確率的な問題に似ている。つまり、血が繋がっていても決して相性が良いとは限らない。アリサもその類いで、家族でも魔力譲渡に向いた相手は弟のジィーンだけであった。ここに居ない相手は呼ぶしかない。ならばそれまでできる事は試そうとジオラスが魔力譲渡を試すと、なんと! 上手くいってしまった。これによりジィーンの召喚は取り止めになり、これ迄アリシア親子に大して意識されていなかったジオラスは、アリサ魔力バンクとして再評価を受けたのだった。




