幕間 涙の余波
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございますm(_ _)m
今回はコロコロ現場が変わります( ̄▽ ̄)ゞ
「泣いた!?」
アリサ嬢の涙は各方面に、結構な衝撃を与えていた。
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まずクルイウィル三兄弟。発端はジオラスではなく、何故か長兄のサイラスからであった。どういう経路でかアリサ嬢涙の報せを携え、上の弟クラウスと末弟ジオラスを召集したのだ。仕事場に用意されたサイラス専用の休憩室に。
「警務の者達が何か仕出かしたのではないのか?」
「いえ。警務隊の皆様は何も」
「そもそもの原因は何なんだ?」
「それが……今思い返しても全く……」
サイラスとクラウスの質問にもジオラスは首を振るしかできずにいる。
情報を整理する為に観測に出てからの話しを聞いても全く意味不明で、三兄弟はすぐさま唸るしかできなくなった。
「あ、悪い。この後魔導師長に呼ばれてるから、俺とラスはもう行くわ」
「ラスもか?」「俺も?」
「だって今日は俺付いて行かなかったから、説明できるのラスしか居ないじゃねーの」
「え……でも魔導師長だなんて、そんなに上のお方に上手く説明できる自信無い」
「大丈夫だ。お前も知ってる相手だから」
魔法のオジサンがその人であったとジオラスが知るのは、三十数分後。
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クラウスとジオラスを返し、男は大きく溜め息を吐いた。
ジオラスから話を聞いても原因は不明のまま。残るファルゴルと警務の面々への事情聴取は無理。そもそも魔導師に捜査の権限は与えられていない。どころか、今回のお嬢ちゃんの涙は事件ですらない。魔法のオジサンこと通称局長は仏頂面で黙り込んだ。
残る手段は泣いた本人を直撃する事だが、これはアリシア伯爵に阻止されてしまった。あのオヤジ、嫡男と長女を回収次第、外泊許可をさっさともぎ取って帰宅してしまったのだ。因ってアリシア伯爵も現在城には居ない。
お嬢ちゃんは学園にある森の上空を見詰めながら泣いたという。しかし他の人間には何も認められなかった。お嬢ちゃんにしか見えなかった何か。十代半ばの女の子を泣かせるような何か……。
想像してみても見当もつかない。
「俺が直々に調べてみるしかねーか……」
興味もあるがアリシア伯爵の機嫌を損ねるのも宜しくない。あのオヤジがあそこまで子煩悩だとは思っていなかった。只でさえ領地に帰れないとここ二年程愚痴が止まらずに居たらしい。これを名目に領地に行かれたら大変だ。あのお嬢ちゃんの美味い飯にありつけなくなってしまう。
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騒ぎは思わぬ大物にまで波及した。殿下方の耳にまで入ったのだ。特に機嫌を拗らせたのが王女殿下だったりする。というのも、アリサは王太子妃殿下にアドバイスするだけでなく、妃殿下や王女付きの女性近衛にまで助言をもたらしていたのだ。しかも効果は覿面。女近衛に接した城の女達がこぞって彼女達のファンに趣旨がえした程なのだ。アリサは女近衛達に、舞台の王子様風の言動に改めるだけで女性の味方が増えるだろうと言っただけである。しかし王女本人が近衛等の立ち居振舞いをいたく気に入ってしまい、王女は助言を与えたアリサ本人も好きになってしまったらしい。
「アイリス、そのように怒るな」
「可愛い顔が台無しですよ」
王太子と王太子妃モレアがそれぞれ声をかけるが、王女の歪んだ唇はへの字のまま。
「だって、何も無いのに泣いたという事は、泣かされたという事でございましょう? 変わったお方でしたけれど、優しい方でしたのよ。そのような方を何も無いのに意地悪するだなんて、許せませんわ」
「今回は周囲に居た男達が原因ではないらしい。報告でもそのように聞いているが、もしも原因になった人間が居たなら、シスコンのファルゴルが黙っていないだろうからな」
「バルド……」「バル兄様……」「バルド様……」
王女の言に応えた第二王子に、王太子、王女、王太子妃モレアが揃って呆れたような声を上げた。
「調べたのか。それも彼女の兄君まで」
「ファルゴルとは学生時代、生徒会で少し。あいつは後輩です」
「……そういう事にしておこう」
この会話がなされたのは夕食時。
「どのみち警務隊は引き続き調べさせます。最近の彼等はおかしい」
この時点で、この日アリサの夕食を食べられた人間が居なかった事実に気付いた者は居なかった。
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そしてどういう巡り合わせか。王族の噂に上った当の警務隊が、このアリサの涙の一件で内部告発へと踏み切る。
一番上ではなかったものの、そこそこの地位に居た人間がアティア本人とその母親に洗脳を受けていたらしい。アリサに対する指令に疑問を抱いていた一部の人間の調査によって判明した事実。警務隊は警務隊で、既に仲間がアティアの毒牙にかかっており、この上司を許せなかったらしい。完全ではないにしても調査報告を宰相と騎士団を預かる元帥に届け出たという。
書類を提出された宰相が、一日の終わりに仕事が増えたと嘆いていたのは別の話。
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それから二日後、ガーストン子爵夫妻が事故死した。
ガーストン子爵は領地を持たず、手掛けていた事業は不振、娘は行方知れず。娘アティアの前後に生まれていた男児四人はいずれも病死。
国は無理に嗣子を作らず、ガーストン家を取り潰しとした。
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