本日のカレーには温泉卵が
お久し振りでございます。
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます。
本日は作品の場面がどの辺りか作者がおさらいする為のカレー回。
「おい、ファルゴル! これは何──何をしているアリサ……?」
「嫌ですの~! 偉い人は偉いというだけで怖いですのぉォォ!!」
娘達の根城と化している魔術師棟の個人用厨房兼食堂へ足を運ぶと、何故か娘が窓から脱出を図ろうとしていて、それを息子と娘に懸想しているらしいクルイウィル家の小僧が後ろからそれぞれ抱えるようにして止めていた。娘の台詞を聞くに、おそらく私について来た先輩が何者であるか朧気にでも察しての行動らしい。さすがは野生の勘を持つ女。我が娘ながら面倒にして厄介だ。というか、事前に察知しているとか、本当に手におえない。
「………アリサ、何やら良い匂いだが、今日はポトフか?」
「カレーの予定でしたけれど、ポトフの方が宜しゅうございまして?」
「断然カレーだ!!」×二
私と息子の声が揃った。私は続けて物申す。
「アリサは脱走を諦めなさい」
「……兄様もジオラス様も手を離してくださいまし」
「脱走は諦めたな? 着物で三階の窓から飛び降りるとか無いからな」
「兄様、お鍋が焦げます」
ファルゴルとクルイウィル家末子が手を離した。
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「ファルゴル、この書簡はどういう事だ? ん? 今日は酢の物が二品もあるのか?」
「ああ、それはハリシア領の取り引きに関してですね。根拠はアリサの野生の勘です」
「乾燥鹿尾菜がございましたので、もどしてさっと湯がいて梅酢と和えましたの。鹿尾菜はわたくし達だけのおかずですわ。こちらは廿日大根と林檎の林檎酢の酢の物ですわぁ」
私達親子三人は厨房に立っての鼎談に入る。私がファルゴルに書類の提出を求めると、息子は懐からメモを取り出して私に渡した。ズラリと列挙された貴族家の数々。だが筆頭に記された名を見て分かった。ドラゴジラの派閥だ。ファルゴルが私に耳打ちする。
「危険回避だそうです」
「当然取り零しがあるかと存じますので、残りはそちらで精査してくださいませ」
ドラゴジラは未だに妻を妬んでいる節がある。次世代であるアリサはそれを知らない筈だが……こいつの勘は侮れない。何かはあるのだろう。少し調べるか。
「お二人とも、温泉卵で宜しくて?」
「上乗せ付け合わせだな!」
「固茹ではいかんぜよ」
あっさり鼎談は終了した。
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「本日の献立は、茹で玉子と鶏肉とゴロゴロ茄子のトマトカレーに、廿日大根と林檎の林檎酢和え。マスタード入りポテトサラダ。スープは胡瓜の澄まし汁ですわ。パンは籠から直接お取りくださいませ」
本日の同席者は、相変わらず警務の人間(三人)に、クルイウィル兄弟、そして何故か魔術師局長と宰相。最後の二人、何故ここに居る!? くそう……! こいつらにアリサの料理を食べられたくない。
そして魔術師局長──局長とは言っても実際にはもっと偉い──が我等アリシア家のカレーの上に乗せられた温泉卵に目をつけた。一度はアリサが断ったが、それで諦める男ではない。アリサの方が早々に諦め、生卵を奴のカレールーの上に割り乗せた。
「生じゃねーか! あんた等のと違うじゃねーか! おんなじのが、あんた等とおんなじ白い卵が食べたかったの! あのプルンとしたのが! ね、分かる? もう……酷い。これじゃ料理その物が台無しじゃねーの。……あら?」
文句を全て聞き流しながらアリサが卵に手を翳して熱を加え続けること五分強。アリサが戻って来た。局長は子供のようにはしゃいでいる。
「アリサ、温泉卵はこんな短時間でできるのか?」
「ぎゃー! なんか生! たぶん生! 白身は白くてプルンとしてるのに!」
私の疑問にアリサが答えを返して来る前に回答が奴からもたらされた。何なんだこの騒ぎは? 奴は本当は子供じゃないのか? あまりにも馬k……情けない賑やかしだと思う。
アリサは勿論、我等アリシア家はこの騒ぎを黙殺した。
実際(常温)卵は五分でどれくらい火が通るのでしょうか?
温泉卵状にならないのは確かだと思われます。
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