父と宰相~舞台裏にて迷子の話し
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
今回は父視点にてお送り致しますm(_ _)m
「またですか先輩。娘の料理が待ってるんですよ」
「お前、前も同じような事言っとらんかったか?」
わたくしことユナス・フォン・アリシアは私を呼び出した宰相に不満を訴える。ここは既に公の場ではない。人払いをしたのは先輩の方だ。文句を言われる筋合いは無い。そして私は不平を隠さない。
「宰相ともなれば忙しいなどと言ってもいられない程の激務でしょうに。私などに構っている暇があるなら少しは休むなりしては如何です?」
「先だってお前の娘に会って来た」
「そのようですな」
「……他にも色々言われるかと思っとったが」
「具体的に何も無いなら、これで失礼しますよ」
「お前の娘は何者だ?」
「私の娘です。当たり前過ぎる質問で時間稼ぎですか? もう行きますね」
「茶化しとる訳じゃない。真面目に訊いている」
「………何者とは、どういう意味です」
「お前の娘は、彼女は異常だ。だがあまりに無防備だ。いや、無邪気と言うべきか? 私の評価は、総じて危険人物だ」
「このまま拘束しますか? それとも道具? 実験動物?」
「待て待て。そう物騒な話しをしている訳じゃない」
充分に物騒だっただろうが。危険人物? この場合、危険なのはアリサじゃない。アリサを利用しようとする人間だ。もうこの爺は気付いたのだろう。アリサは希人であると。天上の知識や技能、若しくは単純に記憶を持つ者であると。
「娘は自由という名の風の中でしか生きられない人間です。今は何故か大人しく城に滞在していますが、それは一生の話ではない」
「……希なる人物と見て間違いないのだな?」
「迷子ですよ」
「……お前、何を言っとるのか分かってるのか?」
「娘自身の言葉です。物心ついたかどうかというくらい小さな幼子が、領地の屋敷で、家族に囲まれた状態で泣きながら必死に訴えたのです。自分は迷子であると」
「……………天に通ずるお方はそうなのか?」
「知りません。ですがあの娘は魂の迷子であるのかもしれないとは思いました」
「…………………………」
「娘は孤独を抱えたままです。どれだけ家族が包み込んでも癒されない深い孤独です。それはそうでしょう。本来在るべき場所とは違う場所に生まれ出てしまったのだから。誰とも共有できぬ感覚をそのままに、この世にまろび出てしまったのですから」
「……本来の意味で危険人物だったか。孤独は精神を蝕むからな」
……少なくとも、人外とは会話や感覚の共有ができるのではないだろうか? 精霊などと戯れている時のアリサは孤独から解放されているような穏やかな表情をする。
「癒し切れていないだけで、癒してはいますよ。ただ……人間至上主義者ではありませんな。精霊、神々、幻獣との方が心が通わせ易いのかもしれない」
「まさかの精霊の愛し子か?」
「さあ? ですが今のあの娘は優しく強くしなやかだ。少なくとも現時点で危険人物認定は納得がいきません」
「我等は備えねばならない立場だ」
「アリシア家に犠牲になれと? それとも搦め手に来ますか? 我が祖父の時のように」
「アリサ嬢だけこちらに──」
「渡しません」
「意固地になるな。こちらも守ってやれなくなる。王命で婚姻命令でも出されたら、伯爵のお前では盾にもなれぬぞ」
「娘は結婚できません」
「身体に欠損があろうが無かろうが関係無い。分かっとるだろう」
「神殿契約を結んでおります」
「……何だと?」
「既に、最高位の神殿契約で婚姻を拒否しています。たとえ王命でも従うのは不可能です」
「……随分と用意周到だな。だがあれは契約破棄も可能であった筈だが?」
「既に不可能です」
「……契約破棄すらできぬ文言で縛ったか」
「契約内容を私達の口から明かす事は不可能です」
「不可能、不可能、それしかないのか」
「ただ、何故契約の解除ができないのかは言えます」
「ほう? 言ってみろ」
「あの馬鹿娘自ら、契約書をその場で焼き捨てたからですな」
「…………………………正気か?」
「それが家の娘なんですよ」
「思っていたより面倒臭い娘さんよな……」
「無理矢理縛るなり操ろうとするなりすれば、何をするか、若しくはどうなるか分からない爆弾娘です。丸っと諦めてください」
「そう難しい注文を付けてくれるな!!」
「では国で保護してください。娘に一切の義務を負わせずに。保護は名目だけで結構です」
「……無茶苦茶言いおる」
「好きなようにさせておけば、時折とんでもない金の卵を産んでくれますよ」
「………ああ、麻疹の特効薬とかな」
「もうそこまで調べましたか」
「本当に何者なんだお前の娘は?」
「私達の可愛い娘です。可愛い可愛い宝です」
そう。アリサはハリシア領地の宝玉だ。守ってやらねば。
ちょっとだけアリサの影が父の口から語られました。
アリシア家を温かく見守ってくださる方は
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