花は虹
投稿が遅くなりました。
まあ、そんな感じでイケメン観察の土台が固まってしまったのですわ。
そんな感じってどんなだよ、とか思われますわよね。わたくしも思います。
クルイウィル様の「人間相手にマーキングを付けないか」との申し出が冗談か本気かハッキリしない内に、いまお一人の初見の方が一度は話を逸らしてくださいましたのよ。食事が冷めてしまいますから食べてしまいましょう、と。けれどデザートまでたどり着いた時、よりによってダリア先生が振り子を戻してしまいましたの。
「そう言えばアリサ君、今朝のロッカーの持ち主が誰なのか気にならないのかい?」
「クルイウィル家御子息なのではございませんの?」
ダリア先生はニコリと、担任教師は苦笑を浮かべられました。
「その判断の理由は?」
「この場にクルイウィル様がお出でだからですわ。勿論、いまお一人方の関係者である可能性も捨て切れませんけれど。ですがダリア先生がロッカーを検めた際に零れ出た内容物を鑑みるに、〈お花君〉……失礼、クルイウィル御子息の可能性が高いかと」
学年主任が困ったような溜め息を吐かれました。お行儀が悪いですわ。〈お花君〉呼ばわりしてしまったわたくしが言えた義理ではありませんけれど。
「アリシア嬢はクルイウィルの末子を名前で呼ばないのですか?」
この御質問はいまお一人の初見の方ですわ。わたくしはこちらの質疑にも馬鹿正直にお答え致します。
「同窓でもございませんので」
──この場合の「同窓」とは「同じ先生に教示を受ける(た)」の意。つまり色々はしょって、担任が同じの意味になります。ぶっちゃけクラスが同じかどうかというだけの表現。日本とは少し使われ方が違うので、ちょっと混乱します。
「──わたくしは彼のお名前まで存じ上げておりません。それに〈お花〉のあだ名は、自然発生したものですわ。大概の女性徒は〈アネモネ〉〈ヒヤシンス〉〈百合〉〈薔薇〉等々、花の名に〈君〉を付けて呼んでいるようでございましてよ」
〈お花〉の名があだ名になる切っ掛けを作ったのがどうやらわたくしらしいというのは、当然秘させていただきましたわ。
「我が家の末っ子はモテるという解釈で合っているのかな?」
話のお相手がクルイウィル様に戻りましたわ。
「……大概の御令嬢は心奪われてしまうそうですわ」
「まるで他人事だね。ジオラス──末っ子は君と同学年だ。姿くらい見た事はあるんだろう?」
「はい!」
わたくし、ついつい元気良く反応してしまいましたわ。捕捉説明を入れておかないといけない感じですわね……。
「クラスはお隣のようですわ。ですから時折目にできる機会があるのですけれど、遠目にでもお目にかかれた時は心が浮き立つようになってしまいますの」
クルイウィル様が笑いを噛み殺したようなお顔をなさいます。
「君も弟の事は憎からず思ってくれているようだね」
「お言葉ながら、それは違いますわ」
わたくしはハッキリと否定させていただきました。
「綺麗な何か、美しいと心洗われる何かを目にすれば、人間は広義において幸せを感じる生き物であると思います。わたくしもその類いですわ。そうですわね……空に虹の橋を見付けた時のように、はしゃいでしまいたくなったり、心宥められたり……ですかしら」
「…………………恋心とは……?」
「別物ですわ。わたくし、虹等々に恋い焦がれる感性は持ち合わせがございませんもの」
何故かクルイウィル様は大きく頷かれました。
そして、本当に何故か、噂の弟さん、ラ・ジオラス・クルイウィル様にマーキングして欲しいとの要望が出されたのです。
本当に、本当に意味が分かりませんわ!
「同窓」の意味で作者がちょっと混乱。「同窓」なんて「同窓会」くらいでしか使わない。
同学年の意味だっけ? クラスが同じ事は何て言うんでしたっけ?
そんな訳で無理矢理に「同窓」の意味を改変しました。注意書を挟む為に少しばかり改稿です。