〈お花君〉は近づきたい
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
今回は〈お花君〉ことラ・ジオラス・クルイウィル視点
最近のジオラスの朝は爽やかな目覚めで始まる。
これ迄は、また一日が始まるのだと憂鬱であり、就寝にあたって一日無事終えたと胸を撫で下ろす日々であったのが、ガラリと変わった。
目が覚めたらベッドに横たわったまま伸びをする。これはアリサに教わった健康法だ。
それから起き出して身支度を調え、朝一杯のお茶(気分によっては白湯)をゆっくり飲む。これもアリサから聞いた朝の習慣。ただ今の段階ではただのお茶も白湯も飲み込むのに苦労するので、クズコという白い粉を溶かしてから口にしている。このクズコなる粉をくれたのもアリサ。
これらアリサから聞いた習慣をなぞっているだけで、意味もなく力が湧いてくる。いやきっと意味ならあるのだ。アリサ曰く、穏やかに、素早く身体を目覚めさせる一つの方法であるという。おそらく、聞いた習慣はジオラスには合っていたのかもしれない。
朝食は帰って来てから。ジオラスは廊下へ出た。
丁度アリサも廊下に出て来たところであった。
「キュート……」
「おはようございますわ、ラ・ジオラス・クルイウィル様。今、何か仰いまして?」
「いや、気にしないで。おはよう」
挨拶を済ませて歩き出す。
今日も朝から幸せだ。
本日のアリサの装い。
短くなってしまった薄いピンク──アリサ曰く桜色の短髪にも似合う男装。だが微妙に男用とは服のラインが違う。スレンダーでも女性らしい曲線美が隠されていない。白いシャツに黒っぽい青のベストと細身のズボン。靴も色を合わせた黒。上着無し。ただ「女の子だな」と思わせるのは、ベストの後ろ身頃からヒラヒラ臀部を覆い隠すレース状の布。帆立貝を思わせる形。
「男装なのに可愛い服だね」
「ふふ、ありがとう存じますわ。やっぱり誉められると嬉しいものですわね」
「可愛いだけじゃない。格好いいとも思う」
「格好いい殿方に囲まれている状態で言われるのも、何だか不思議な心地がいたしますわね」
今朝はアリサの隣に立っているのは警務の人間だけ。アリシア伯爵も兄という青年も居ない。
「男ではないのだから、シャツが真白でなくとも良かったのでは?」
「似合っているのですから良いのではありませんか、警務のお方」
ジオラスが庇うような発言をすると、当の本人からいつものように淡々とした返事がなされた。
「殿方の方が色の感度は低いというのは本当ですのね。日の光の下でしたら今少し判別がきくと思いますけれど、シャツは薄い桜色ですのよ」
「桜色って、ピンク?」
「左様にございますわ。ですが、こちらのシャツは白が強うございます。他は茄子紺色。茄子紺も日の光の下ですと印象が変わりましてよ」
「……そうなんだ」
普通の令嬢と違って日の光に肌を晒しても、やはり女の子といったところか。きちんとお洒落には気を遣っているらしい。
「そう言えばアリサは夏の日射しに当たっても、肌が黒く焼けないんだね」
「そういうラ・ジオラス・クルイウィル様こそ。羨ましい限りですわ」
「血筋かな」
「きっとわたくしもですわね」
こうして今朝も緩やかに時間が過ぎていく。
おまけ五
「そうだアリサ、私を弟子にしてくれないかな」
「名ま──ふえ!?」




