ロコソップ温泉町より
拙作をお選びくださり、ありがとう(^人^)ございます
まだ国の名前も出て来ていないのに、領地と北の港町の名前が出て参りました。
小さな町の昔話。
領地ハリシア。北の小さな漁師町、ロコソップ。
「ああ、最近クラーケン料理と温泉で観光地化した町だったな。こちらではまだクラーケンを食材として見ぬが常識だが」
「姿に忌避感があるのでしょうな。まだ輸送も難しい。クラーケンはロコソップでお試しください。クラーケン料理はロコソップの名物料理に迄なりました。なかなか美味いですよ」
アリサはクラーケン料理だけでなく温泉も堀当てたのだが、温泉の件は黙っていよう。
「ですが今でこそ名物料理と豪語できますが、当初は開発も必要だったのです」
「それは当然の道筋だな。その開発をお前の娘児が進めたのだな」
「開発と言うほど大仰なものではなく、無邪気に料理を作ってましたな。今に繋がったのは、町の人間の努力と諦めぬ熱意ですよ。これから話すのは、今の料理として完成される前の事です。まだ娘が十か十一の頃の話です」
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当時ロコソップは温泉が湧いて出た事もあり、活気を持ちつつあった。
領主(の子アリサ)の主導で改装した町の食堂屋さんは、ちょっとした御当地グルメの発信地として機能し始めていた。実際、町の外から温泉と料理目当てに訪れる観光客も増え始めていた頃だ。
食堂の席には着いたが一番安いメニューを一品だけ、それを二人で分けあい、テーブルに初めから置いてあるパンをひたすら食べる客が居た。明らかに商売に失敗した風の男女の連れだ。食堂の雰囲気も悪くなるし、店を任されている女将は客を追い出そうとした。それを止めたのがまだ小さなアリサだ。
アリサは何の気負いもなく例の客の元まで行って話し掛けた。
「御機嫌いかが?」
明らかに気落ちしている客に「御機嫌いかが」もへったくれも無いだろうと見ていた女将は思ったそうです。
「お客様は町の外の方? 観光でこちらにいらしたの?」
「いや……ああ、そうだな。この町はオンセンというお湯と美味しい料理で旅人を癒してくれるって聞いてね」
「来てみたはいいけど、未知の料理は食指が動かない?」
「ああ、いや……」
「手元不如意ってヤツだよ。見りゃ分かんだろ、お嬢ちゃん」
「お姉さん、笑う門には副来る、ですわ! そんなに怖い顔をしていたら幸運も逃げて行ってしまいますわよ」
「世の中ってのは世知辛くできてんだよ。ま、あんたにゃ分からないだろうさね」
「ふふふ。お姉さんはお優しいのね」
「はあ? あんた頭おかしいんじゃないかい?」
「そうかもしれませんわね。きっとわたくしおかしいのですわ。ですからお二人に試食をお願いしたいのですの」
「だから金が──」
「って言うか、ですからって何?」
「試食ですので、お代はいただきませんわ」
「……聞いて無い?」
「……憐れみはよしとくれ」
「いいえ。こちらとしては町の外、もっと言えば領地の外から来た方の感想が欲しいですの。それだけでなく、お身体に害が出ないかも見極めたいのですわ」
「何食わせようってんだい!」
「クラーケンですわ」
「化け物じゃないかい!」
「ただの巨大生物ですわ。この町の人間は普通に食しましてよ」
「あたし達は町の人間じゃない──」
「ですからお願いしているのですわ。町の人間が平気でいられるのは、魚介を食べ慣れているからとも考えられますもの」
「そんな物、タダでもごめんだよ。ここに来て体調崩しちまったら、二進も三進も行かなくなっちまう」
「経過観察もしたいですの。ですからこちらで温泉宿を手配致しますわ。かかりはこちら持ちでしてよ」
「そんな旨い話があるわけ無い──」
「どうせ後一回の失敗で身売り決定だ。ならここで運試ししてみよう。万が一の時には慰謝料を請求する。証文も書いてもらうよ」
「勿論ですわ。万が一の時は親が支払い致しますわ」
「……どうして僕達を選んでこの話を?」
「万が一の時の賠償金が安くて済みそうだからですわぁ。何事も無く済んだ時は、出世払いと、町の外で宣伝をお願いいたしますわぁ」
まだ子供の身でありながらちゃっかりしている、と旅人達は笑ったそうな。
二人の旅人は温泉で鋭気を養い、町から旅立って行った。
その後、二人の旅人は結婚して商売も大きくなりつつあるようだ。二年に一度の間隔でロコソップを訪ねてくれるようになった。そしてこの二人の旅人や、他の旅人の口コミによってロコソップは観光地として宣伝され、今賑わいをみせている。
町に出没する可愛いが奇妙な女の子に絡まれると幸運が訪れるという曰く付きで。
今回は小さなアリサが出たいと引っ込んでくれず、出演決定。
名も無き旅人二人に乾杯!
活動的座敷童子アリサにも乾杯!
そして、そろそろ〈お花君〉が恋しいと思われた方は、
ポチっとお願い(。-人-。)します




