20.ここは何処? 今何時?
平和なアリサ視点に戻ります。
新キャラも登場します。
目が覚めたら知らない天井が見えた。
意識が覚醒して理解できたのは、自分がベッドに寝かされている事。寝かされているのが自分のベッドではない事。物語に良くあるあれが言える。
──ここは何処?
いやマジで。
じわり。焦りと恐怖が頭をもたげる。
焦りと恐怖に背中を押されて、何とか身体を起こします。……辛い。ふらふらクラクラします。世界が回る………。
パタンと横向きにベッドに逆戻りです。
「アリサ、起きたのか!?」
「え? 兄様?」
どうして兄がここに居ますの!? だって兄様は今領地に戻っていた筈ですのよ。そもそもここは何処で、今は何時ですの!? どうなってますの!?
「だいぶ混乱してるな。まず簡単に説明する」
わたくしはコクリと頷きます。
兄がベッド脇の椅子に座りました。
「ここは王城の医務室。お前は魔力欠乏で運び込まれた」
「何故、王城ですの?」
「誘拐の捜査に巻き込まれたのは憶えてるか?」
はっ!
「〈お花君〉はあの後どうなりましたの!?」
「保護されたよ。実行犯もその黒幕も捕縛されてる。心配ない」
ホッと胸を撫で下ろします。
「………あら? でもどうして王城の医務室ですの? それに兄様がここに居る説明にもなりませんわ」
「お前も被害者も、ついでに加害者も全員が貴族だから、事件は第三騎士団ではなく貴族院預かりになった。お前だけでなく、関係者は全員城に集められてるよ。あの色男の被害者もな」
色々訊きたい事はありますのに、何やら先程から騒がしくて聞き取りにくいです。たぶんですけど、部屋の外。
「兄様、先程から賑やかですけど、わたくし、このままのんびりしていて宜しいのかしら?」
「ああ、向かいの部屋に例の被害者が収容されてるらしいんだが、使用された薬が少し性質が悪い物だったらしくて、目が覚めてもどうとか言ってる」
「後遺症が出てますのね」
「──解ったぞ! これはメデュデュサの根だ!」
どうやら使われた薬の分析から梃子摺っていたようです。もう外は暗いようなのですが、ずっとこの調子だったのでしょうか? 引き続き騒いでいますが心配です。
「……兄様、メデュデュサが使用されたのなら、おそらく混合薬ですわ。同じメデュデュサの葉ならば、わたくし達成長途上の人間には猛毒。おそく目覚めません。デュラゴダの実なら痺れが出て、同様に成人以外には強力過ぎます。ヒュプモルペの花粉なら睡眠作用。いずれもまずメデュデュサの緩和が有効。メデュデュサの拮抗薬は、チチクの実とグレープフルーツと薄荷です。今言った順番に摂取させてください。本当は魔女の隠し茸があれば、キノコだけで充分なのですけれど、これはなかなか手に入らないそうですの」
「待て、整理する。同じ葉は猛毒。痺れはデュラゴダの実。ヒュプモルペの花粉が眠り。拮抗薬が……グレープフルーツと薄荷」
「チチクの実が抜けてますわ」
兄がメモ帳を取り出して書き付けております。
「チチクの実、グレープフルーツ、薄荷。この順番に経口させる、で良いのか?」
「はい。魔女の隠し茸も経口で問題ない筈ですわ」
「キノコが一番楽なんだな? でも難しい、と。まあ良い。取り敢えず一旦伝えに行く」
私は兄の背を見送りました。そしてそのまま再び眠りの底に落ちて行くのです。ああ、そうですわ。どうして兄様がこちらに居るのでしょうか? まだ聞いておりませんわ。眠ねむ……むにゃ……。
今……何時………なのかしら……………?
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妹を引き摺ってでも領地に連れ帰ろうと共と二人馬を飛ばして漸く辿り着いたタウンハウスに待っていたのは、妹ではなくて第三騎士団の団員。向こうも我が家を訪ねて来たところらしかった。
馬から馬車に乗り換えて、団員からあらましを聞いた私は頭を抱えながらおそらく青褪めていた。頭が重かった。胸の真ん中に痼ができたような気持ち悪い苦痛。
──妹よ! お前は何をやってるんだ!!
──兄は心配でならないぞ!
兄とは苦労性が定め。
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