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195.泉の前にて

数ある作品の中から拙作をお選びくださりありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


すっかり暑さにやられて間が空いてしまいましたが、漸くお届けできます。お楽しみくださいm(_ _)m



 時はアリサが死にかけた後にまで遡る。


 心臓まで停止してしまったアリサのその後、皆どうしていたのか?


 ずばり、アリサは守護精霊に保護されていた。


 ──守護精霊顕現の泉で。


 いつぞやアリサがボッチャンしかけたお城の泉である。


 本来なら無茶と無理を重ねてもハリシア領の帰らずの森へ送るのが最善にして最良の選択であった。帰らずの森は精霊の故郷とまで云われる森。精霊の愛し子であるアリサなら溢れる程の精霊達から溢れる精霊の力を浴びせられて手厚い手当てが受けられただろう。だが問題は距離だ。その問題を盾にフリングホーニの守護精霊が自身の顕現場所たる泉に沈める提案をしたのだ。否、強権を発動してアリサを自身預かりとした。守護精霊顕現の泉なら帰らずの森のように精霊の力(みなぎ)()であるから、アリサの空々魔力を回復させるのにも良いだろうと。


 かくしてアリサは精霊の泉へ沈められた。


 駆け付けた家族──母ディアナが後からアリサの着替えを引き受け、実質アリサは寝間着や浴衣で眠り続ける事になる。その姿はさながら丸太に寄りかかりながらの半身浴。上記の丸太はフリングホーニの守護精霊。雨が降ろうが風が吹こうが雪が積もろうが野晒しのまま眠り続けるアリサ。

 家族は入れ替わり立ち替わり日参し続けた。


 城の重役どころか王族さえ滅多に近寄れない大精霊顕現の泉への日参が許されたアリシア家の面々は、気が付いたら特別視されるまでになっていた。


 ついでのようにジオラスまで。




 アリサと守護竜の前にて。

 ある日のこと、アリサの弟ユージンとジオラスの見舞いが重なってしまった。

 アリサが死にかける前ならユージンはジオラスを姉に決して近付けなかっただろう。しかし目覚めずともアリサが今生きていられるのは、実はジオラスの働きが大きい。狂ったシメサツシの大精霊を葬送したアリサの元へ真っ先に辿り着いたジオラスがアリサの異変に素早く気付き、即座に心臓マッサージに入ったからだ。そして兎のように耳の長い赤兎馬がジオラスの叫びを報告としてハリシア空軍の報告の魔法に乗せた。結果ジオラスの叫びは報告として関係各所へと届いたのだ。

 その後はもう大騒ぎでアリシア兄弟──兄のファルゴルとユージンが騎獣にて空から駆け付け、ハリシア帰らずの森へ運ぼうとするのを白銀の守護竜が横から拐って、今に至る。


「……………お前、僕達が駆け付けた時、姉上の心臓マッサージしてたな」


「うっ………師匠──皆様の御母堂であらせられるアリシア夫人に指導を受けていましたので」


「……………礼を言う」


「………え?」


「何度も言わせるな! 感謝してるって言ってるんだ!」


「!」


 年齢故の照れか何かだろうか? それとも単にジオラスへの感情の隔たりだろうか? 当たりは強いものの姉大好きユージンが姉の婚約者たるジオラスに頭を下げて礼を伝えて来た。一瞬、どんな苦情を浴びせられるか構えたのだろうジオラスとしては、おそらく拍子抜けしたような心境だろう。だがユージンとしては相当勇気を振り絞っての言動のはずだ。それはジオラスにも伝わったようだ。嬉しかったらしい。


「アリサ嬢もですが、そのお母上の師匠も凄いですよね。師匠の教えを受けられて本当に良かったって実感しました」


「ふん……そんなの当たり前だ。……ハリシアでは女性が凄いんだ。その女性達を引っ張ってる二人だぞ」


「いつか……ハリシアへ行きます」


「……………姉上の婿として、か?」


「はい」


「ふん………精々頑張れよ」


「!! はい!」


「煩い! そんな大声出さなくても聞こえてる。ふん!」


「失礼………」


「お前さ」


「はい?」


「………姉上の翼、見たか?」


「はいっ。どう例えれば良いのか──」


「僕からは角度が悪くて、全体が上手く確認できなかったんだ」


「? そうですか。三対の巨大にして壮麗な翼でしたよ。シメサツシの大精霊にも負けないくらい立派な魔力? の光の翼で、初めは何が起きているのか理解が及びませんでしたけど」


 ユージンがほっとした顔に変わった。


「そうか……三対揃っておられたのだな」


 心底嬉しそうな、安心したかのようなユージンの反応に、ジオラスは惑いを見せた。それが気になったのだろうユージンが「何だ?」とつついた。一度は話を打ち切ろうとした動きを見せたジオラスが、少しの惑いの後に証言した。


「言うべきであると考え直しましたのでお報せしておきます。三対の片翼の内二枚が破損していました。痛ましい程に」


「! ……………破損?」


「……………はい。一枚は途中から折れて垂れ下がり、一枚は途中で失せていました」


 ジオラスの報告を聞いたユージンは真っ青になって泣き出した。本気のギャン泣きだ。


「姉上! ()ーね! ごめん! ごめんなさい!! 次は守るから! 今度こそお守りしてみせます、から!!」


 涙で詰まりながら泉に浸かるアリサに突進して行こうとするユージンを慌てて押し止めるジオラスの図。遠巻きに二人を見守っていた近衛が近付こうとして守護竜の神気に当てられ近付くに近付けない状況。


『青年、おぬし“愛し子”の婚約者だったか?』


「え……はい! 大精霊様! 直答する御無礼をお許しください!」


『おぬしが留めている少年と“愛し子”は色々あるのだ。今日の事は無かった事にして送って行ってやれ』


 ここまで黙っていた守護竜に言われて、ジオラスは無理矢理ユージンを回れ右させてその場を辞したのであった。










『大いなる“愛し子”殿よ、貴女様の弟君はしっかり記憶が残っているようですな。元々の貴女方の記憶を』


 守護竜の呟きのごとき語り掛けを聞く者は、周囲に漂う小さき精霊達だけであった。









アリサと弟君ユージンの出発地点たる正体まで書く予定はありませんm(_ _)m


全く要件は異なりますが、短編書きましたヽ( ・∀・)ノ

「暴露劇のネタの人」

合わせて読んでくださりませm(_ _)m

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