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作戦本部は実質実況中継を聞くだけの会

数ある作品の中から拙作をお選びくださりありがとうございます(^人^)

少し間が空きましたがお届けいたしますm(_ _)m



 動き出したハリシア空軍は素早かった。


 長男ファルゴル率いるが本隊で前戦の空を牛耳る。嫡男が本当の最前戦に立つのかと城側の人間達を驚かせたが、ファルゴルの騎獣はブラックドラゴン。蛇足になるが、名を昴という。空の部隊を総括できる大幻獣。後ろに引っ込んで守られるだけなぞあり得ない。尤も本当に先陣をきる訳ではない。幾重にも陣を整えそれらを統括し、敵の主力たるかつての守護精霊の力を削ぎつつ目的の地点へ可能な限り誘導する。


「はっは! あの小娘、口程にもない! 結局後ろで守られているだけではないか!」


「今回当方の主戦力、心臓部は我が娘です。娘が倒れたその時は作戦失敗。つまり敗戦だと御承知ください」


 城の作戦本部での会話。云わずもがな前者が元帥で後者がアリシア伯爵である。

 ついでに周囲には、王族から男達三人──国王、王太子、第二王子と、元帥補佐たる将軍が三人、魔法棟からは局長が出揃っていた。宰相は裏方に回り、作戦以外の全ての執政を請け負っているのでこの場には居ない。あとは記録を撮る文官数人と、各所へ連絡を密にする為の騎士、その他万が一に備えての護衛の騎士達でなかなかにごった返している。


「アリシア辺境伯、元帥が失礼を働いた。申し訳ない」

「頭を上げてくれ、三人とも。将軍達が頭を下げる道理は無い。それに、限りなど無いのではないか?」


 ()に限りが無いのか。アリシア伯爵は明言しなかった。


──元帥、この男は自分が何を言っているのか理解できていない。よって反省も何もできない。周りがいくら尻拭いをして頭を下げ回ったところで切りなぞ無いだろう。


 意図的に伏せられた言葉を、全員が概ね上記のように理解した。意外にも、元帥その人も。


「──貴様! 私を愚弄するか──」

「元帥、黙れ」


 激昂する元帥を止めたのは国王であった。

 決して大きな声ではなかったのに、威厳ある静かな声で場を沈めてみせたのだ。




──予測通り、カラカラ街道から来ます。

──サビル山、空けておけ。

──サビル山周辺の避難は完了してるのか?

──元々国の役人が粗方避難させてたそうです。それでもまだ危ない辺りは、引き続き国の役人と地上軍が動いてくれてます。

──現在進行形か……。

──こちらスコル部隊。そろそろコイツ等の抑えがきかん!

──抑えろ。もうじき国境を越える。作戦開始は敵陣が国境を越えてからだ。それより国境の集落はどうなっている?

──こちらの指示通り守りを固め、やり過ごす構えです。こっちとしては地上の他領地にまで手は回りませんからね。上手く受け流してもらうのを祈るしかありませんよ。

──こういう時の為の国軍だろうに。

──最低限は出してくれてるんだろう?

──本当に最低限だけどな。元帥閣下の命令とかで、こっちに丸投げだ。

──はー………(多数の溜め息)



「マジでこの通信魔法、激烈に便利だな。(うち)の魔法棟で開発した通信魔法具が霞むわ~」


 局長が現実へと話しを戻して来た。

 実は先程から現場からの通信がひっきりなしに入っていたのだ。この通信を繋いでいるのは末子のユージン。勿論他のアリシア家の面々も使えるのだが、ファルゴルは現場の指揮に集中させる為、アリサは攻撃の主力である為に余計な魔力と集中を削がないよう、使用を控えさせている。因みにアリシア伯爵も行使可能である魔法なのだが、元帥の存在がある為に口を噤んでいる。こちらからは連絡できないと思わせておきたいからだ。作戦本部から余計な注文を付けて現場を掻き乱されては敵わない。大真面目に死人が大量に出かねない。


「全体的には敵主力を鶴翼(かくよく)にて迎え撃ちますが、細かな陣形はフェンリル隊が矢尻、ワイバーン隊は凸型──」


 作戦本部ではアリシア伯爵が予定する陣形の説明を国の用意した地図の上に用意してきた駒を置きながら説明していく。あまりにも不出来な地図に。


「全隊で代わる代わる波状攻撃を掛けながら敵主力の力を削ぎつつ娘の待機するこちらの塔へ誘導。娘が迎え撃ちます」

「ちょっと待ってくれ。アリシア穣が一人で迎え撃つのか?」

「……………」


 言葉による返答は無かったが、アリシア伯爵の苦虫を噛み潰したような表情で第二王子の確認を肯定しているのが分かった。あまりの驚きにザワリと動揺の声が湧く。


「待て待て! 大真面目にどういう事だ!?」


 叫ぶは局長。その問い掛けにもアリシア伯爵の眉間のシワは深くなるばかり。


「………父としては不本意ながら、対精霊戦である以上は娘しか決着を付けられません」

「………護衛は?」との将軍その一からの確認に──

「根本的には役に立ちませぬ。それならば戦場へ向かわせるべきかと。圧倒的に戦力が足りませんから……」


 アリシア伯爵のへの字に曲がった口は


「因って地上の国軍を庇う余裕はありません」


 そのように言い切ってきつく引き結ばれた。






 部屋に魔道具の灯りが(とも)される。

 外はいつの間にか薄暮も夕焼けも更に影の曖昧な逢魔時(おうまがどき)さへ過ぎて夕暮れ。

 空には闇の帳が降りようとしていた。








華やぎの全く無かった回。申し訳なく(T_T)

遅くなりましたが、

☆評価、ブックマース、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

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