我等はアリサ様の専属侍女である
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せっかく名前を付けたけど、きっと今回限りのゲスト、の巻き。
私達はアリサ様の専属侍女である。
全員で五人居る。
他の御家族でも専属侍女は一人ないし侍従が一人ずつであるのに、アリサ様だけ五人も付けられたのだ。
方々遠征(外交)されている御長男ファルゴル様でさえ専属侍従が二人であるのに対して我々は五人。いかに多いか分かるだろう。
理由はアリサ様の活動範囲の広さだ。
アリサ様はとにかく行動的なのだ。幻獣の背に乗って落ちて大怪我をするだとか珍しくない。
勘弁してください。
他にも空ばかりぼーっと眺めていたかと思うと記録していたり、地形を地図に起こしていたり、キノコを食べて食中りしてみたり、子供ならではの工作かと微笑ましく見守っていたらハリシアの産業が増えていたり……多岐に亘る御活躍。
因みに空の記録は天候や、季節ならではの雲等の観測でありました。この観測記録を元にした、嵐や季節の寒暖(例えば冷夏とか、暖冬だとか)の予報が可能になり、災害に発展する前に備えを整えられるようになり、結果、領民の苦労と不幸が激減しました。
地形は、私では理解できない三点何とかいう方法で、線だらけの地図が出来上がりました。私には見ても良く分からない地図なのですが、外回りをする男達は至極喜び勇みました。わからん。
キノコをはじめとした食中りは……元は奥様、延いては領民の為の薬各種に繋がりました。何より食料と料理の幅が広がり、冬の備えの心配と不安まで減るというありがたさ。私個人としてはおやつ各種が激増して幸せです。
そして産業。ブツブツ何か呟きながら何か工作してらっしゃると思っていたら、超高級品の機械時計を分解なさっていた事がございます。気付いた時は慌てました。焦りました。涙しました。けれどもそれを元にアリサ様は時計の小型化に成功! 今や小型時計──一般に膾炙して懐中時計はハリシアの名産品の一つに成長致しました。
他にも銅とか鉄とか鋼とかの生成で死にかけたり、製糸方面での活躍では蜘蛛の魔物に喰われかけたり、硝子をペンにするとか意味不明で火傷を負ったり……。いえ、平和に形になった産物もございます。綾織りの布地ですとか、軽くて温かなお布団ですとか、女性用下着各種ですとか、後は……組み紐だとか、あとは……あら? 製紙を地域の産業に押し上げた時とかは凍傷で指が何本も落ちてらしたし、焼き物は泥の採集で生き埋めになりかけたり釉薬の調合で危うく中毒になりかけたり最終焼成で火傷と寝不足はお約束。各種農産物系列は害虫害獣害鳥との戦い。そう言えば新たな農作物にと田んぼなる水浸しの畑を実験なさっていますです。
嗚呼……失礼致しました。取り乱してしまいました。ふっ。
あ、そう言えば木組みという技術と知恵は大工さん達が大絶賛でした! アリサ様的には他にも〈サシモノ細工〉〈クミコ〉は見逃せないとも仰っておられました。
はっ!アリサ様の侍女たる者が肝心な一品を忘れていましたわ! それは箒! たかだか箒と言うなかれ。各種箒がこれぞ逸品なのです! 侍女は主の私室も掃除するのでありがた味は一入なのです。うむ。
さて、そろそろお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、我々侍女は一方面に特化してございます。因みに私はアリサ様の護衛として半分騎士です。他にこれといった特技もございません。ですが五人の侍女の中では一番の古株で、最もアリサ様のお側に侍らせていただいております。
さて、他の四人ですが、一人は気象大好きオバサン。いや失礼、ギリギリお姉さんだそうです。名はサリー。空模様以外にも、季節の草花の開花を記録したり、紅葉前線を追い掛けてみたり、初雪積雪を各地点で記録したり、変わったところだと川(河)や湖等の水嵩を調査したり、結構暇そうなのにかなり忙しいという大変なお役目です。因みに空模様以外の観測は、言わずもがなアリサ様のお望みです。
「これ以外にも火山を観測しろとか無理ー! 星の観測とか、さすがに別分野だからぁー!」
本人の叫びはただの愚痴です。物理的に不可能であるのも確かですが。
この分野だけでも、行政の方で人を増やしたい旨をお館様はじめ上に上申中だとか。
次に地図部門でしたね。こちらの担当はシルヴィアです。アリサ様より若干年上の若手です。無口です。寡黙です。え、無口も寡黙も同じ、ですか? はい、その通り。でもそうとしか表現できない真面目な娘なのです。
黙々もくもく、黙って測量、黙って記録、黙って地図起こし……を、アリサ様と共にしております。
「……最近、は……御一緒、できて、いません」
アリサ様は学園のスキップ試験なる物をほぼ通過しておられましたから、お目覚めになったらまた御一緒できますよ。また以前のように。
次は、医療部門の才女です。見た目は若作り、中身は大人!
「誤解を生む発言は控えてくれないかしら、筋肉女」
……子供に見える最大の要因は、その低い身長でしょう。
「! ……………泣泣泣泣泣き」
名前はステラ。栄養が頭脳に極振りされたと思われる、私とほぼ同期の後輩。
「後輩ではありません。脳筋とは同期です。年齢は下ですが。私は最近は天使様の影響で、料理にも目覚めました」
彼女はどちらかと言うと薬学を選考していて、だから素材関係に惹かれたものかと。何より、アリサ様曰く、料理は破壊の創造作業なのだそうですから、そういう意味でも向いていたのでしょう。
最後にセレナ。彼女はある意味、一番多忙です。今こちらに居ないのがその証拠。彼女は製造加工の担当なのですが、アリサ様の興味の範囲に付いていけないと日々嘆いておりまして……。
失礼ながら現在は劇団の方へ助っ人として貸し出されております。
真っ先に地元ハリシアの各地に専門拠点が出来たのもこの部門です。はい。セレナには同情します。本当に忙しそうですから。
さて、アリサ様のおしたくが整いましたよ。
アリサ様がいつお目覚めになるか分かりませんが、本日は久々に御家族揃ってのお出かけです。
どうぞお楽しみくださいませ。