従姉妹と一緒
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)
☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
今回も短いです。従姉妹はゲスト☆
本日ジオラスは茶会に参加していた。
本意ではない。
しかしジオラスにも付き合いはある。建前の付き合いだが、あるのだ。いや、今回に限っては建前の付き合いでもない。
ジオラスはまだデビュタントしていないので夜会の参加は無い。しかし茶会や某かのパーティーには参加できるのだ。そして大概その手の催し物はお相手探しを兼ねていたりする。まあ夜会程に重視されてはいないが、そういう側面があるのも無視できない事実である。
そんな訳でジオラス絶賛囲まれ中、である。
「はじめまして♡」「お名前をお聞きしても宜しい?♡」「まあ、国立学園の学生さんですのね♡」「優秀でいらっしゃいますのね♡」「素晴らしいわ♡」「御趣味をお尋ねしても?」「騎士を目指してらっしゃるとか?」「普段は何をして過ごしてらっしゃるの?」「今度劇場にでも御一緒いたしませんこと?」
前後左右全方位からいっぺんに話し掛けられて何が何やら分からない。分からないなりに、所々聞き取れた箇所だけでも、答えぬ内から何故こちらの情報を握っているのかが不気味でならない。正直、怖い。ただ最後の方でちょうど良いお誘いを受けた。
「私には婚約者がおりますので、申し訳ありません」
「え……?」×複数
この「婚約者が居る」発言は重宝する。まあ重宝云々以前に、ジオラスにはアリサ以外の女性と親しくなる心積もりが無い。
「………では……此度は婚約者様と共にお出でになりましたの?」
あの一言で決着がついたと思ったのに粘られる。アリサの名を出すかどうかでジオラスが一瞬迷って応対が遅れた。すると空かさず横から──とは言っても少し遠くから答えが飛んで来た。
「彼はわたくし達姉妹のエスコートでしてよ」
「今日は妹の社交を広げる為に参加させていただきましたの。彼はわたくし達夫妻共通の知り合いです」
今回ジオラスを駆り出して来た従姉妹である。
姉の方は次兄クラウスの友人と夫婦だ。元々姉妹は姉が結婚する前からクルイウィル家にも遊びに来るような親しい付き合いの親戚である。なんと言ってもクラウスの友人と姉妹の出会いの場がクルイウィル家なのだ。出会いは何処に転がっているか分からない。
「今回彼は、わたくし達の護衛も兼ねてますの。ですから、ね? そろそろお返し願えますかしら?」
「淑女の皆様、失礼させていただきます」
ジオラスは従姉妹の助成に乗って女性達の輪から無理矢理抜け出す。
「助かりました」
女性達の群れから距離を取ってからジオラスは従姉妹にだけ聞こえる声で礼を口にした。
「貴方にも、まだまだ勉強が必要なようね、小さなラス」
「今度義兄様を貸し出したら姉様。男の子の教育は、やっぱり男の人に任せるべきだと思うの」
「それを言ったらラスのお家は男ばかりじゃない。でもみんな働いているから社交の実戦が少ないと思って今回があるのに」
「うーん……確かに小さいラス兄は場数踏んでないよね」
「将来は騎士になるか婚約者の故郷に引っ込むから、社交慣れなんていらないよ」
「いつ何が役に立つか分からないんだから、経験だけでも積んでおきなさいな」
「そうは言っても、今日はもういいんじゃない? 小さいラス兄は元々不器用で無口な方だもん。──それより、ね、ラス兄。今度婚約者さん紹介してよ」
「相手が了承してくれて、その上で機会があったらね」
「私達相手なら上手に断れるのに、駄目ね、姉様」
「あんまり苛めちゃ駄目よ、フフ」
この従姉妹はジオラスを異性として意識せずカラリとしていて付き合い易い。アリサが目覚めたら、今度紹介しようと内心こっそり決めたジオラスである。