165.ダリアの記憶
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皆さんお忘れでしょうか、ダリア先生の夢の中。
これは夢だ。
嗚呼、目が覚めたら、きっと忘れてしまう記憶だ。
あの時──ハリシア《帰らずの森》が丸ごと生け贄にされかけた時、当時のハリシア領主の娘が自身を犠牲に精霊の危機その物を救った。
当時のハリシア領主の娘レイナ──アリサの前世が。
彼女はハリシアだけでなく、この世界の精霊全ての救世主となった。そのように表現しても過言ではない恩人である。
ハリシア《帰らずの森》は精霊の故郷の一つに数えられる特殊な場所。勿論、全世界を見渡せば他にも精霊の産まれ出る地はある。しかし《帰らずの森》は故郷とまで謂わしめる特殊な地であるのだ。あの地が沈めばこの大陸だけでなく、冗談抜きに世界が沈んだかもしれない。
では何故そなような危機に陥ったのか。
辿れば元凶はシメサツシ国にある。
彼の国は聖女信仰の篤い国柄であった。
だから……だからこそ偽物に踊らされてしまったのだろう。
偽物が“聖女”と自称したから惑わされた。
当然精霊達は偽物であると断じた。
しかし……自称聖女は精霊を人間社会の活動の為の燃料に貶めた。
偽物聖女の方針に抵抗を示した人間は様々な意味で消された。
シメサツシは恩義と共存を捨て去り、ただただ食い尽くす未来を選んだ。
だから今もって国民は元の道に戻るのを拒否しているのだろう。
精霊は人間ではないから。
人間ではない存在を蔑ろにしても直接的に仕返しは無いと信じたから。
殴っても殴り返されなければ踏みにじっても良いと思ってでもいるのだろう。
何故、シメサツシの国民はそうなってしまったのだろう。
彼の国と我等が国は何が違ったのだろう。
自惚れても良いのならば、我等〈守護者〉の存在だろうか?
シメサツシには我等のような〈守護者〉に当たる存在──精霊と人間の間に立つ存在は居なかったという。というより、この国にしか我等のような存在は居ないらしい。
あの時、ハリシア《帰らずの森》が丸ごと生け贄にされかけた時、彼女は我等を頼ってくれた。
彼女──レイナ嬢は自身の死に直面しながら敵方の術を反転させた。反転して尚、進化させと。我等フリングホーニ全土に散在する〈守護者〉を案内役に、ハリシア《帰らずの森》を中心に、フリングホーニ全土に巨大な守護を施した。
精霊を消費させる禁術の完全否定及び神々への恣意的な接触禁止。
この世界の根幹──有り様の土台を更に踏み固めた形で安定させた。
シメサツシはあの時点で既に周囲の精霊を食い尽くしていた。
だからハリシアへ手を伸ばして……そして返り討ちにあった。
既に国力の衰えを見せ、各国の信用を失うどころか警戒されていたシメサツシは孤立した。どの国も支援の手を伸ばさなかった。
だからじわりじわりと侵食できる国を探し取り憑き、今、このフリングホーニで芽吹こうとしている。
そしてまたレイナ嬢──現アリサ嬢に返り討ちにされているような形だ。
だが、まだ油断はならない。
彼の国は元々人間至上主義のきらいの強い国だ。それが今ほぼ完全に精霊への尊厳を忘れ去っているのが現状である。今回の大洪水で粗方国民は水に呑まれたらしいが、生き残りが居る。生き残り全てが“偽聖女”信仰に毒されているとはいわない。だが、疑いを捨ててはいけない。彼の国の人間は、永きに亘り自国を守護して来た守護精霊さえも裏切り続けて恥じていなかったのだから。
彼の国の守護精霊は今、どうして居るのであろうか?
嗚呼、目覚めたらきっと忘れてしまう。
忘れてしまう前に他の守護者達に願わなければ。この情報をフリングホーニの精霊達へ伝えるように。
彼の国の毒が蔓延する前に、フリングホーニの守護精霊にまで届くように。
もしかしたら、この後ちょくちょく書き直すかもしれない回。