一雨毎に寒くなる
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ママン出っ発
本日は雨。
良く見ると白くボテっとした霙が混じっている、冷たい雨。
そのような日でも人々の営みが止む事はない。今日も人々は忙しく働いているのだ。
フリングホーニ城にある貴族牢に収監されているシメサツシ第二王子に面会者が訪れていた。同第三王子やそのお付きの者達ではない。彼等は学業を理由に第二王子に近寄ろうともしない。
では誰か?
ハリシア領主夫人、ディアナ・テイア・メティミネウァ・アリシア。アリサ達の母親である。
「おや、はじめましてだね、御婦人。ひょっとして、私を慰めに来てくれたのかな? その割りには少し年長者のようだけれど」
ハリシア領主夫人ディアナを見たシメサツシ第二王子の第一声である。相変わらず何の気負いも悪意も無く、かなり失礼である。
因みにディアナは一人ではない。お付きの侍女と従者だけでなく、(アリシア家及び国からの)護衛騎士をゾロゾロ引き連れて遣って来たのである。それでもシメサツシ第二王子のこの発言だ。ゾロゾロ付いて来た者達はこの第一声で既にお冠物だ。だがディアナはシレッと受け流した。女の社交は嫌味の連発。いちいち真に受けて取り乱していては足元を掬われる。尤も今回の相手は一応は男性であるのだが。
「はじめましてシメサツシ第二王子殿下。わたくしは貴方様に大変お世話になったアリサの母でございます」
「ああ、彼女との結婚に関する挨拶に来てくれたんだね」
ディアナは相手の名も自分の名も口にせず、且つ嫌味をたっぷり交えて挨拶をした。しかし、相手の反応はぱっとしない。天然過ぎて通じていないのか、それとも嫌味を丸飲みしているのかの区別が付かない。それもかなり素っ惚けている。相手がどこまでどのような人間であるのかが分からない。ディアナは敢えて返事をせず、目を細めて返事の代わりとした。
「けれどフリングホーニは変わっているね。普通、娘の結婚に関する話し合いは一家の当主が出て来るものではないのかな」
「ふふ。いきなり父親であるあの人に会えるとお思いますの?」
「ああ、なるほど! 私は勘違いをしていたのだね。つまり、勿体を付けられている訳だ。しかしアリサ嬢を正妃にする訳にはいかないのだよ。正妃はドラゴジラ家のフレシア嬢と決まっているからね」
「あら、まあ」
「けれど彼女の事は厚待遇で迎えると約束するよ。どうやらアリサ嬢は使える女のようだからね。それに珍しいピンクの髪色でなかなか可愛らしい。私の利益になるように成果を出せたなら、ねっとりじっくり愛でてやる心積もりだってあるのだよ。ただその場合、成果が出ないと放置になるから、寂しいと騒いだならば他の男を宛がうくらいの度量は私にだってあるからね。ただそうなると彼女の産む子供は誰の子か分からないから奴隷落ちは否めない、とだけは予め断っておくよ」
「………わたくし、貴方様が何を仰っているのか、まるで理解できませんわ」
「それは貴女が女だから仕方のない事だよ。女は男の話を大概理解できない生き物なのだからね。ああ、でも安心してくれ。アリサ嬢の処女は私が貰うし、間違っても父上、現シメサツシ王が散らす事になるだろう。それと調教している間は他の男には触れさせない。その間に妊娠した子供なら、私の子として扱う。ね、安心だろう?」
「……フリングホーニが何故あの人を絶対にこちらに向かわせなかったのかが理解できましたわ」
「おや? それこそ何の話だい? 本当に女の話は脈絡が無いね。あれ? もしかして私の手解きを心配しているのかい? 私はこれでももう何人か調教済みで、結構な評価なのだよ。そうそう、フレシア嬢も私が調教したんだ。だからほら、随分と従順だろう?」
もう随分前から(主に周囲の)空気が悪くなっていたが、この辺りでハッキリ空気が重く冷たく変わった。ヒリヒリピリピリ刺すような空気。ここまで感情を表に出さなかったディアナが内心を顕にしたのだ。
ほんの短い時間であったが、ディアナは我慢を止めて告げる事にした。
本来なら後半を占めるはずだった話を次回に回します(-人-;)