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150/203

150.くだらない、のに

数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


最後に残酷結末が待っています。苦手な方は御注意ください(/o\)



 翌日、宰相が城の執務室に入ると、アリサからの遣いが待ち構えていて驚いた。驚き過ぎて動けなくなったくらいだ。だがアリサからの遣いは宰相を気遣うことなく、当然のようにアリサの一報を置いて立ち去った。宰相に拒否権は無い。何故なら、アリサの遣いは精霊だったので人間の返事など待ってはくれなかったからだ。



──閣下のお耳に入れたい(むね)がございますので、午前の内にお訪ね致します。お時間が合わない場合は、お手数ですが研究室まで御一報ください。



 午前中とは、またざっくりした時間の指定だ。だが本日は執務室に詰める予定であるので、まあ問題無いだろう。アリサ嬢のことだ。お茶の時間に茶菓子等を持参で訪ねて来てくれるかもしれない。可能性は限り無く低いが、昨日の見合いの誘いに関して心変わりがあったものと期待しよう。

 下心満載でウキウキ執務机に着くと、今度は城──暗部から直接の報告が入った。アリサ嬢の周辺に配置した護衛だ。知らず知らず眉間に力がかかる。


「問題が発生しました」

「……人払いは必要か?」

「陛下にも御報告を上げたく存じます」


 余程の事らしい。


「陛下に先触れは?」

「別の者が」

「分かった。そちらに合流する。──誰でも良い。アリサ嬢──あー、アリシア令嬢が到着したらもてなしを頼む。それまでには戻って来れるとは思うが、間に合わなかったら呼んでくれ。陛下の執務室だ」


 宰相補佐の執政官達に一声掛けてから国王陛下の執務室へ行くと、執務室の続きになる部屋へ案内された。こちらは防音、陛下と暗部の人間しか居ない。宰相は自分に付いて来た暗部とだけ中に入った。自分に付いて来た侍従は陛下の侍従との愚痴大会でも開くだろう。


「さて、何があった?」


 陛下の催促に応えた報告は、大変に馬鹿馬鹿しく頭の痛くなる内容であった。




 ノックの音に陛下が一つ頷いた。もう扉を開けても良いとのお許しだ。今回宰相と陛下の侍従は部屋の外なので(というか、その侍従がノックをしているのだろう)、暗部の一人がドアを開く。


「アリシア嬢が御到着致しました。どちらに通しましょうか?」


「待て。アリシア嬢だと?」

「御報告が遅くなりましたが、朝一番で先触れがございました。午前中の内に私と面会したい、と」

「私も行く」

「……変装はどうなさるおつもりで? 変装ありの国王としての謁見か、変装を解いての面会か」

「…………………………」


 陛下は長考なされた結果──


 


@ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @




 アリサ嬢の手土産──少し大振りな(おそらく)飴を茶菓子代わりに報告会が始まる。宰相の執務室で。因みにアリサ嬢の要望で宰相付きの侍従や執政官達は人払いされていない。ついでのついでで、陛下は宰相の付き人のフリをしている。


「アリサ嬢、ようこそ。随分早いお着きですな」

「おはようございます、閣下。貴重なお時間を朝から割いていただきまして、()()()()()()()()

「いや、アリサ嬢が報告を急いでくれたのも分かる。学園に立つ精霊の樹が燃やされたとか……」

「やはり御報告が上がってましたわね」


 アリサ嬢が暗部達を見ながら言った。庭師とか学園の門番等々に扮していた暗部は、どうやら見破られていたらしい。


「御報告の前に、陛下はお座りにならなくても宜しいのですの?」


 ……陛下の正体も見破られていたらしい。陛下が気まずそうに空いている席に座った。


「アリサ嬢。君が体験した事を、初めから話してくれんかな?」


 宰相の催促にアリサ嬢が自身の手土産を一つ口に放り込んだ。毒味の意味合いだろう。そればかりか、もう一つを彼女用に出した紅茶にも一つ。


「え……」


 思わずだろう声は宰相の物ではない。主に周囲、侍従や執政官達の物だ。


「本日御用意した菓子は落雁(らくがん)と申します。尤も、今回の物には澱粉質を加えていない和三盆という糖質を練り固めた物です。砂糖の一種ですので甘もうございます。このようにお茶に加えても、その物を菓子として直接口にしても、お好きにお楽しみくださいませ。皆様も」


 アリサ嬢の視線は執政官達に向いていた。執政官達の顔が綻ぶ。うむ。執政官達よ、気持ちは分かるぞ。だがな、大切な話し合いが始まらなぬではないか。


「アリサ嬢や」


「彼女達の認識も──というか教育? 常識、いや良識も大変甘もうございましたわね。頭の中に(かび)でも生えていたのではないかしら?」


「……随分と辛辣だがの、何があったのかの?」


「団体様で突撃してきてわたくしを取り囲み──」


 もう頭が痛い。


「全員名前も名乗らず、『ジオラス様の婚約者だなんて、貴女は相応しくないですわ』とか『貴女から辞退しなさい』とか『わたくしを紹介しなさい』とか吠えているだけならば可愛らしい部類の小さなお嬢さんでしたのよ」


 ……本当に辛辣だ。言葉の刺を無視できない。いや、相手の出方からして仕方がないのは理解するが……。


「でも些かぼんやりし過ぎていると思いますの、あの方々。閣下や閣下の妹君はしっかりなさっておりますのに、自称お孫さんは学園の公共物である樹木に放火なさってしまうのですもの」


「待て! 待たれよ。何故そこで私や私の妹が出てきた? 私の孫に学園に通っている娘は………は!? 自称孫! 妹! まさか!?」


「カザリヤ・ハン・ラングイ嬢、でしたかしら? 閣下の妹君のお孫様、でしたわよね?」


「証言からして、私の身分を笠に着て振りかざしている、あの……」


「……あー、アリシア嬢。君は名も名乗らぬ相手が誰なのか、良く分かったな」


「だってあの方々、お仲間同士でのお声掛けが大きいのですもの。他の御令嬢方のお名前もこちらに控えてございますわ。一応の裏取りは済ませてございましてよ。けれどそちらの方々の方が信用もございますでしょうし、実際確かな情報でございましょう」


 アリサ嬢が視線を暗部の方に向けると「失礼します」と言って暗部の一人がアリサ嬢の提出したメモを回収していった。おそらく後で首実検に使うのであろう。


「……して、その自称宰相の孫が、よりにもよって精霊の樹を燃やしたと」


(にせ)(いばら)リリンですわ。現在、半精霊の宿り木ですわね」


「その……精霊に被害は」


「雪もしくは冷気の半精霊に被害が出ました」


 うがーーーあああ!!


「わたくしが保護して研究室の冷蔵庫の中に匿ってございます。樹木その物はすぐに消火しましたので、枯れてしまうかどうかは半々の確率ですわね。来年の春までお待ちくださいませ。春に花が咲けば枯れていませんわ」


「精霊の怒りは……」


 陛下の重々しい問い掛けにもアリサ嬢は淡々と平坦に答える。


「被害の規模は全く予想できませんわ。彼女達だけで済めば宜しゅうございますわね。守護精霊様が皆様の対応をどのように見ているか、ではございませんかしら?」


「暗部は引き続き裏取りだ。警務に連絡。取り調べを進めよ。令嬢達は厳しく処罰する。宰相、執政官、忙しくなるぞ。二人の王子にも連絡だ。調べが固まり次第、王妃にも一報だ」


 陛下の指示で、時間の止まっていた宰相執務室が動き出す。


 嗚呼(ああ)……本当に頭が痛い。どうしてアリサ嬢が急に今朝から私を〈閣下〉呼びし始めたのか分かった気がした。局長とは別方向で私も格下げだな。しかも明確に距離を取られた。はぁ~……。




@ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @




 アリサ嬢の記録は正確であった。

 記録に従い令嬢達を捕縛。授業中に学園長室に呼び出し、今朝のアリサ嬢担当の暗部達が顔を確認。全員一致したのでそのまま連行。

 城に入ってからは警務に担当が変わり取り調べ。結果、アリサが観測の対象にしているらしい樹を燃やしたとのこと。自称孫を煽り立てた周囲も力を合わせて放火。動機はアリサ嬢への嫌がらせ。

 だが………

 やらかした事は国家転覆だ。自覚があろうがなかろうが、貴賤の別無くこの国に生きる命を危機に晒した。否、現在進行形で危機に晒している。


 このままでは国その物に精霊の祟りが降り掛かる!


 あまりにアホらしい動機が判明した時点でそれぞれの〈家〉に連絡。結果、彼女達の名前は家系図から消去された。それぞれの〈家〉の判断で。彼女達は貴族牢から地下牢へ移動。その時点で矜持が崩れた令嬢からボロが出た。精神的に自分を保てなくなった娘達から宗教に走ったのだ。ボロから出て来た真相は──


 彼女達はシメサツシの聖女信仰に嵌まっていた。


 可哀想だがやらかしが酷過ぎる。何より危険過ぎて生かしておけない。


 泣き叫ぶ彼女達は全員、絞首刑に処された。









御令嬢達への処罰は大袈裟ではありません。

半精霊を傷付けた以上、精霊の怒りを買います。

問題は、その規模。個人か家か領地か国か。最悪は勿論〈国〉です。それを避ける為の極刑、しかも貴族としての毒杯ではなく苦しみの長い絞首刑となりました。

※ 彼女達の刑は足元を失くすのではなく、逆に頸に掛けた縄を引き上げ吊り下げる方式でなされました。意識が一瞬で刈り取られないので、かなり苦しい刑罰です。

怖いヽ(;゜;Д;゜;; )ギャァァァ

こんな作者でも見放さずにいてくださるお優しい方は、どうか

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