夏休み明け
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宰相さんだぞ<(`^´)>
夏休み明け初日。
宰相が王城御近所の学園研究棟へ着いた時、何故か目的の人は昨日会ったばかりの女性騎士と共に居た。それも室内ではない、屋外。おそらく研究の為だろう草花の繁茂する畑の僅かに残された空き地で木刀を女性騎士に振らせている。
「水」
アリサの謎の言葉に即座に反応して〈型〉を変える女性騎士。まるで剣舞のような見事な美しさ。それをアリサは時にしゃがんだり立ったり左右に行き来しながらじっくり眺め、不意に新たな木刀を放り投げる。何の前触れも無く投げ渡された木刀を危なげ無く受け取った女性騎士はそれまで振っていた方の木刀をアリサへ投げて返している。
「風」
再びのアリサの謎の声掛け。女性騎士がまた違った〈型〉を披露する。その度渡される木刀も、もしかしたら全て違う物なのかもしれない。
アリサの単語と女性騎士の〈型〉を変えながら同じ事を幾度か繰り返し、アリサが納得したようだ。
「木刀は五番、重心は中央よりやや先寄り。とにかくこの一振は別途保存」
アリサがブツブツ呟きながら一本の木刀を避けた。眺めている宰相達にはそれらの行動の意味が分からない。
宰相達はゆっくり彼女達に近付いていく。驚かさないように、警戒されないように……──
「よぉう! お嬢さん方!」
勝手に付いて来た局長が元気な掛け声で宰相の気遣いを御破算にした。
アリサと女性騎士二人がそれぞれ振り返る。
「………これはこれはごきげんよう、魔法のオジサン、眼鏡とお髭のオジ様。それと…何やら新しいオジ様方」
「よ! 何か食わせてくれ! 無くても飲ませてくれ!」
「……まさか、とは思いますけれど確認させてくださいませ。これまで見掛けなかったオジ様方は、万が一にも偉い方々ではございませんわよね?」
「大丈夫!」
「……どういう意味で大丈夫なのか……? このやり取り、追及した方が宜しいのかしら?」
「やっぱ馬鹿疑惑は嘘だな! それとも野生の勘か?」
「…………………………(胡乱な眼差し)」
「平和に行こう!」
「胡散臭い時点で、平和や平穏という言葉が蕩けて消えてしまいましたわ」
「お互い気にする礼儀やら何やらは常識の範囲でかまわん。どうしても嫌なら退くが、邪魔させてはくれんか?」
「お髭のオジ様……………わざわざお運びくだされたのです、お茶くらいはお出し致します。その前に、皆様、お仕事は大丈夫ですの?」
「超特急で終わらせて来た!」
「不本意だが、右に同じ」
残りのオジ様二人(明らかに武官)も頷いた。
アリサは戸惑うケイトと偉そうなおじ様軍団、その護衛らしき近衛をゾロゾロ引き連れて〈アリサの研究室〉を目指した。
「通~りゃんせぇ通~りゃんせ~、こ~こは何~処の細道じゃ~♪」
どこか神秘的で怪しく不気味で不穏な旋律を口ずさみながら。
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @
宰相はアリサに付いて歩きながら回想する。
宰相は、実は少し突っ込んで調べた。
それは王に依頼されたから。だが元々自分でも調べるつもりではいた事。
親シメサツシ派について。
ドラゴジラ以外──ドラゴジラは親シメサツシではないが──の親シメサツシの家々は、嘗てアシュラムに寄生し、ハリシアを貪り喰らい、ハリシアの富を掠め取った者達の末裔であった。
何故、フリングホーニへの侵食が今なのか?
年代なら後輩ユナス──現アリシア伯爵が良い目安になる。
彼の姉レイナが精霊を命懸けで守ったのはユナスが幼い時代。それからざっとで四十年。ドラゴジラ令嬢の亡き母親が工作員だと仮定しても、レイナ嬢の死から二十年は経っている。
そして更に二十年近く経った今、何故今仕掛けて来ている?
何か意味があるのか、無いのか……?