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私、レイナ。今研究室に居るの。

数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


副題は「レイナ」ですが、お祖父様視点



 孫娘アリサの心臓が止まったとか何とかいう騒ぎの時、私と息子ユナスは扉の外に居た。勿論ドアの外には護衛の近衛やら他の護衛騎士が立っていたが、室内に声をかける前に騒ぎになったのだ。息子ユナスは飛んで行ったが、私は何故かその場に留まり室内の会話を盗み聞きし続けた。今はそうするべきだと思った。勘だ。そして出てきた決定的な名前。


「私、レイナ」


 前回のスタンピードで死んだ──否、父上に殺された私の愛娘。

 あまりの衝撃に身体が震えた。私と息子の伴をしてきたセダム、セネキオ、ジムの三人は私より早く衝撃から立ち直っていたらしい。三人および他の護衛騎士達が心配そうに私を見ている事にも気付かなかった。中に入って確かめたい。なのに身体が動かない。

 守ってやれなかったという罪悪感、あらゆる後悔、父に対する憤怒、そして二人に対する愛情……。他にも押しては引く波のように去来する様々な感情。


「アリサ、その名を誰から聞いたのかは知らんが、冗談で済む事と済まない事があるのだ。その名は冗談では済まぬ」


 息子ユナスの怒りを含んだ声。だが私には分かる。アリサは冗談や嘘を口にしている訳ではないのだと。

 しかしアリサは臆さなかった。


「そもさん!」

「せっぱ! ……はァ!? 何故それを!?」

「ウチの、ハリシア領《竜の瞳》の湖近くの砦屋敷にある松ノ木を真っ直ぐ見る方法は?」

「無いわ! 年寄り共から聞いたのか!? それとて姉上の──」

「いつ頃答えが出たのかしら? 小さかった貴方は松ノ木の周りをクルクル走り回って転んで答えを探して可愛かったのよ。ああ因みに、あの頃は貴方があまりにも小さかったから説明していなかったと思うけれど、“そもさん”とは“如何に”とか“さあどうだ”といった掛け声の意味。そして“せっぱ”は説を破ると書いて文字通りの意味。聞いてる?」

「………それは当時、なかなか答えが出ずに悩んで拗ねた時に聞かせてもらった。

──答えだが、私が最終的な答えを出して諦めたのは学園に上がる歳、十五を迎える春だ」

「あら、まあ。随分時間を掛けましたこと。もしかして私が答えはあると言うたが為に、延々答えを探し求めておりましたの?」

「ああそうだ! 姉上は答えは必ずあると仰せになられたのだ。けれど答えなぞ無かった!」

「だってそれが答えですもの」

「今何つった!?」

「常在戦場っ。領主たる者、常に平静を失うなかれ。それも教えたでしょう。当時、貴方はまだ小さかったけど」


 アリサの静かで重い一喝が轟いた後の、これまた淡々とした説教。立場が完全に逆転しとるようだな。


「落ち着きなさいませ。精神年齢が些か逆行しておりましてよ三児の子持ち」


 アリサの声がいつもの飄々とした音に戻る。


「……そうだ。アリサが生意気を立て板に水を流すように言い始めた時、まるで姉上のようだと父上と話していたのを思い出したぞ」

「はいはい。とにかく今の掛け問答は、素直に物事を見る、というのが真っ直ぐ見るということ。自身の都合に合わせて物事を捻じ曲げるなという問い掛けです。故に、真っ直ぐ見えるようになる方法は無いというのが真っ直ぐ見たという証左になるのが答え」

「ええい、まどろっこしいわ! そもそも当時のワシはまだ三つか四つ。姉上は六歳くらいだったと記憶している。そんな捻くれた六歳児が居て堪るか!」

「実際居たでしょう。レイナという小娘が。そもそもレイナの言葉の一部に固執していたから答えにうっすら気付いていたでしょうに、どうせ正しい答えの方を潰し続けていたのでしょう。そのようになるなと願いを込めた掛け問答でしたのに」

「分かり難過ぎるわ! どれだけ姉上の言葉に振り回されたか……!」

「でも、まあ、成人するずっと前、学園に上がる前に学習できて良うございました。自身の力で掴み取った答えは本人にとっては本物、玉の価値がございますから。力になれたというのなら、本望ですわ」


 再び少しの沈黙が流れた。誰かの息が詰まるような気配。もしかしてとは思うがユナスよ、お前呼吸はできとるか?


「……………まさか…まさかとは思うが、本物? 本当に姉上なのか?」

「今の何で信じてもらえたのか?」

「会話の積み重ねだ。言ったでしょう。アリサは姉上に似ているという会話があったと。姉上も脈絡の無いような話し方をする方だった。そのくせ物事の真髄や嫌な局所を突いて来るような方でもあった。短い時間しか一緒に居られなかった私でも強烈に印象付けられている……」

「レイナとしてアリシアにあれたのは、ほんの七歳まででしたものね。ああ因みに(くだん)の問答はレイナが捻くれていたから出てきた設問ではなく、数百年前の日本に生きた捻くれ僧侶からの問答でしてよ」

「そんな事はどうでも良いのです。何故あの時、スタンピードによる緊急避難が発令された時、よりにもよって先代になぞ付いて行ったのですか!」

「付いて行った訳ではないわ。拉致されたの。王都からお祖父様に付いてきた一派に。レイナと貴方から見たお祖父様、アリサから見た曾祖父アシュラム一派に」

「その名は既に消したはず……! だからアリサは婿殿婿殿と……」

「当時はまだ消されていないもの。というか、本人が生きてたし」

「姉上なら、レイナなら何故今まで黙っていた! 私もだが、それよりも父上がどれ程苦しんで来たか……! いいや、それより当時の事です。あの糞ジジイはのうのうと五体満足で帰って来た。しかし姉上は着ていた衣服しか見つからなかった。それとてあまりに(むご)いというので、私は確認できていないのです。いったい何があったのですか?」

「うーん……まあ、いっか。トト様ここにいらっしゃらないし」


 ここでちょっとユナスがピクリと反応したが、生憎アリサは見逃したし、本人たる私は未だドアの外である。つくづく中に入らなくて良かった。どうやってレイナが殺されたのか、私も知りたかったのだ。


「一応のお断りはさせていただきますけれど、そこそこ惨たらしいお話になりますので、気分が悪くなる方も居るやもしれませぬ。特に王太子妃殿下には席を外していただきたいですわ」


「王家の人間として、わたくしも聞き届けたく思いますわ。遠慮せず話してちょうだい」


「ですが万が一妊娠などしていて惨たらしい話の為に流産になぞ繋がったとかになれば、わたくしは後悔してもしきれません」


「んん!? ごほんゴホン。大丈夫よ。言い切れる証があったばかりです」


「それならばお話しさせていただきますが、一応余計を承知で忠言を申し上げます。そこは頬を赤らめるところではなく青褪めるところかと? その手の問題は外部の余計な操作で肉体を害され易い問題ですから、どうぞお気を付け遊ばしませ。わざわざ毒を盛る必要も無く、貴女様及び次代の王族を亡き者とし易い事柄ですので」


「!?」

「忠言、感謝しますアリシア嬢。──王太子妃、わたくしも注意致しましょう。ですから貴女も不安を感じた時はわたくしを頼りなさい。こういった事は男の人は頼りにならない事が多いから。尤も、洗脳されたばかりのわたくしでは頼りないかもしれないけれど」

「いいえ、お義母様。ありがたきお言葉に感謝します。──アリシア嬢も本当にありがとう」


「恐縮ですわ」


 孫よ、アリサよ、お前はその気になれば常識的な応対もできるのだな。


「姉上? いや娘? アシュラムの話を」

「呼称は今この話題が済んだら娘に戻してちょうだい。では話を戻します。

 当時アシュラムに執拗に付き従っていた女が居たでしょう。シメサツシから渡って来たとかいう女が。私は、レイナはその女に殺されたのよ。滅多刺しされた上でスタンピードの群れの中に放り込まれる形でね」









続きますm(_ _)m

次回はレイナ殺害をも少し詳しく? 書けたら良いな。

電波よ降って来い!ヽ(´A`)ノ     (ノ;≡ω≡)ノ


今後は土日の投稿を目指します。

週一か週二の投稿ですね。頑張るo(`^´*)

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