新旧アリシア伯爵とジオラス
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タイトル通りの回。
漸く王宮のお茶会から脱出できました(*´-`)
ジオラスは現在新旧アリシア伯爵と馬車の中に居た。
一言で言うと、拉致である。
今回アリサが色々秘密の暴露に至ったので、そのまま帰せなかったともいう。まあその辺はジオラス自身も察していたので問題はない。その辺りは、と注釈は必要だが。
「複雑そうな顔をしているね」
「……顔に出ていましたか。お恥ずかしい」
現在アリサはこちらの馬車には乗っていない。王家が護衛付きで貸し出してくれた馬車に……ジオラスと新旧アリシア伯爵が乗り込み、アリサとイェンスがアリシア伯爵家の馬車での帰宅となっている。因みに新旧アリシア伯爵のそれぞれの侍従達は、一人はクルイウィル家へ、ふたりはそれぞれアリシア家へ報せを携えて馬を走らせた。
ジオラスは初めその選択に疑問を抱いたが、年寄り二人──レイモンド老とイェンス神官長の主張によりそうなったのだ。レイモンド翁曰く、アリシア家の馬車の方が断然性能が優れているそうだ。そして実際走り出して、自分達の選択は正しかったと頷いていたので、この乗り心地最高の王家の馬車以上の性能とは如何に? と思わなくもない。
「そんなに警戒しなくても良い。悪いようにはしないよ」
「いえ、警戒している訳では……。ポッと出の自分に信用が無いのは分かっていますから」
あの後、その場に居たアリサ以外の全員が制約魔法を受けている。
しかも二重に。
まず局長が魔法による制約を掛けた。だがこれだけだと魔法で制約の裏道を衝かれる事も稀にたがある。
そこで高位の神官であるままのイェンスが神々へ乞い願い、神殿筋の制約も掛けた。尤もこれも破られる可能性はある。本当に滅多に無い事ではあるが、ゼロではない。らしい。
ただし、この二重掛けはまず想定されない。できないと言った方が近い。けれどそれができてしまった。これは神々と精霊、双方の《愛し子》を守る為の秘密保持の制約で、故に神々、精霊、双方の望みにも叶うからであろうとの結論に落ちついた。
そんな訳でアリシア家としてもジオラスがペラペラアリサの事情を吹聴するとは思っていない。だが、言葉以外が報せる物事もある。何より秘密を抱えてしまったジオラス本人に善からぬ何かが降りかかる可能性も無視できない。これはアリシア家によるジオラス個人への保護でもあるのだ。
現アリシア伯爵はつくづく思ったものだ。婚約させておいて良かった。だが婚約者であればこそ今回巻き込んだという考え方もある。どのみちアリサに想いを寄せているジオラスは何処かの時点で道が交わったであろう。
何のかんのでジオラスを案じている大人達の想いなぞ露知らず、ジオラスは不満と不信を抱え込んだままであった。何故、誰も──
「警戒ではないなら、どの可能性かの? 妙に空気がピリピリひりついておるがの」
レイモンド翁の直接的な指摘にジオラスは居ずまいを正した。自分は目上の人間に対してとんだ失礼を働いていたのだ。それをこうもハッキリ言われるまで気付きもせずに。改めて頭を下げる。
「失礼な態度をお許しください。ですが警戒ではなく……」
「ん? 言い難い事かの?」
レイモンド翁の促しに、ジオラスは腹を括った。顔を上げる。
「その……皆様に不満を覚えておりました」
「我々に?」
思いの外穏やかな声音の現アリシア伯爵に頷き返す。
「アリシア伯爵方と言うより、あの場に居た大人達に。今回アリサ嬢は負傷致しました。それと分からなかっただけで、命の危機に脅かされてもいました。それが分かったというのに、誰も、アリサ嬢本人ですら彼女の身を案じていないように見えましたので……」
「ふむ……」「なるほど」
新旧アリシア伯爵の顔に苦笑が浮かぶ。
「実際あの馬鹿娘は自分の事なぞ二の次だがな」
アリシア伯爵の言葉にジオラスの顔が心配で曇る。
そんなジオラスの曇り顔を見て、新旧アリシア伯爵の表情が優しく緩む。
「あちらがどうかは知らんが、こちらとしては深掘りされたくなかったのよ」
「ワシらも把握しておらぬあれこれもまだありそうだしの。とにかく今はアリサを休ませてやりたいでの、一つ一つの追及は追々よ」
「娘の情報を王家と共有する必要は無い。情報の共有が広がる程あいつを利用しようとする誰かが増えるだろう」
「そんな事! あってはなりません!」
「だから急ぎ、形振り構わず撤退してきたのよ」
「クルイウィルの、お前さんにも踏ん張りを利かせてもらうぞい」
「まずはこちら流に馴れてもらわねばの」
「え?」
ジオラスのアリシア家留学が決まった瞬間であった。
これより後ジオラスは学園が始まるまでの当日を含めて三日間を郊外の屋敷で過ごす。そして学園が始まってからも貴族街のアリシア邸からの通いとなり、週末は郊外の屋敷へと通う事となるのだ。
回を重ねる毎に空気に近付くジオラス君。君の成長を願うものなり。
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