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泉の竜神様③

数ある作作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



「守護竜様にも謝罪を。とんだ御無礼を働きましたこと、お詫び申し上げます」


 ガビガビにひび割れた声で王妃が頭を下げた。アリサに向かって。


「竜神様、わたくしの頭の上から下りてくださいまし」

『何故だ。つれないぞ』

「王妃様が頭を下げてらっしゃるのは竜神様に向けてでございましょう。けれど竜神様の下にわたくしが居る事により、わたくしにまで頭を下げているように見えますの。やんごとなきお方を前に、わたくし居心地が(わろ)うございます」

『王妃よ、さっさと頭を上げろ。我の素敵な居場所を奪うな』


 王妃のやらかしが何となく有耶無耶になった感がするが、明確に赦しを得ていない点だけは踏まえておかねばならぬ王家。王妃が特に複雑そうだ。


「失礼の後に言い難いのですが、アリシア嬢──いえ、アリシア家にお尋ねしたい事が」


「王太子御夫妻の世間の評価について、でしょうか?」


 王妃が驚きに目を剥いた。おそらくアリサの当てずっぽうが当たったのだ。

 この二人の遣り取りで周囲は王妃乱入の動機が分かった気がした。アリシア勢にいたっては、茶会呼び出しの本題も同じような理由であったのではなかろうかと腑に落ちた。


「……何故」

「王妃様も母親だから、ですかしら? 必ず、とは言えませんけれど、母親は子供を案じるものでございましょう。ましてや自分が原因の一端を担っていたのなら尚更」


 王妃が辛そうな顔で黙り込んだ。


「必要になる対応もありましょうから、わたくしからも報告させていただきます」


 アリシア伯爵が口を開いた。


「王太子殿下への世間の評価は、あまり宜しくありません。少なくとも、貴族の間では、ですが」

「わたくしは社交を全くこなしていない、とまず一言。そのわたくしの耳にも届くくらい、評判が悪うございますわ。特に王太子妃殿下が」


「モレアが!?」


「王太子殿下。ドラゴジラ令嬢一人あしらえぬ王太子妃、と。それよりも──」

「それよりではない。一大事だ……!」


 うっかり怒鳴り声にならぬように抑える理性は残っているらしい王太子。


「噂を調節してはもらえないだろうか、アリシア嬢」

「実行不能ですわぁ。だってわたくし、お友達なんてただの一人も学園に居りませんもの」


 アリサの宣言に、周囲が悲壮な空気に包まれた。しかしそれは、どちらかというとアリサに向けられた同情や憐憫が大きいようだ。


「その……無理を申した。そなたも学園で辛い日々を送っているのだな……」

「いいえ。全く」

「虚勢を張らなくても良い。貴族令嬢が一人で過ごすなぞ、辛くないはずがない」

「一人は気楽でしてよ。確かにわたくしも何故ボッチであるのか考えた事もございましたけれど、お友達を無理に作る必要性なぞ全く無いと結論致しましたの。必要事項等はお報せくださいますし、不自由もございませんから」

「いや、しかし、昼食を一人で食べたりとか、一人で帰路に着くとか寂しいだろう」

「一人で昼食を食べてはいけませんの? あの、お世辞にも美味しいとは言えぬ学食を。わたくし一人で美味しいお弁当にあずかる方が幸せですわぁ。帰りも寮まで大した距離もございませんし、大概周囲に帰路に着く学生が歩いておりますので、安全性も確保されてございましてよ」

「でも、誰とも会話が無いとか……」

「先程も申し上げましたが、必要事項は問題無くお報せくださいますわ。それに先生方とは良く話しておりましてよ」

「貴重な学生時代を、それで良いのか? 社交とて広めなければいけない時期でもあろう」

「ですから、わたくしに社交は必要ありません」

「卒業後に繋がる大事な時期だぞ」

「卒業と同時に貴族籍を抜ける予定ですの、って、あら……」


 ガシリ! とアリサの頭を鷲掴みする当代アリシア伯爵と、肩にポンと手を置くレイモンド翁。

「言い訳させていただきますわ父様、トト様! わたくしはハリシアの為の研究で身を立てる所存ですの。そして棲み家はハリシア帰らずの森ですわ。既に建物の土台までは整えてございます。そもそもわたくしに一般的な社交が勤まるとでも思いまして? 結婚を視野に入れた異性の話。同性の足を引っ張る為の噂話。ドレスやケーキの話。わたくしには無理ですわぁ。しかもわたくし学園ではただの伯爵令嬢として過ごしておりますの。アリシアと聞いて辺境伯であると気付かぬ者達とよしみを結ぶつもりなぞございません」

「確かに……」「アリサには無理だな……」


 現アリシア伯爵とレイモンド翁がしみじみ頷く。

 その一方でジオラスが密かに冷や汗を流している事に気付いたのは守護精霊の竜神様だけ。実はジオラス、初見でアリサを辺境伯令嬢とは見抜けていなかったりしたのだ。勿論今はきちんと把握しているが。


「それはそうと、そろそろ本題に戻る必要性を訴えましてよ。王太子殿下の黄金化が手首の先にまで悪化してございます。わたくし共に打つ手が無い以上、まずは殿下の腕の切除を。そして王妃様は──」


「お嬢さんが妃殿下と同じ呪いにかかったら、嬢ちゃんならどうする?」


 ここまで静かにしていた局長の問い掛けに、アリサは明解に答えた。


「自分で自分を黄金化致しますわ。頭部優先で」

「随分あっさり簡単に言ってくれる」

「だってこのままだと、脱水症で死ぬ前に、御不浄問題に晒されましてよ。自分の糞尿まみれで死んでいくなんて、嫌過ぎますわ!」

「いや、そこは魔術があるだろう。膀胱や肛門を綺麗にする医療清浄魔法が。確かアリシア伯夫人が発明した魔法だったよな?」

「然用にございますわ。怪我で動けぬわたくしの為に母が開発してくだされた魔法ですの。今では遠征等でも重宝していると聞き及びましてよ。──話を戻しまして、王妃様は既に衣服が黄金化して動けぬ御様子。それらの黄金はただの黄金ではなく、神々の意思によるもの。魔法がどこまで効くか、甚だ(はなは)疑問でしてよ」


『どのみち神々の祟りをどうにかせねば餓死が待つだけよ。精霊である我には手の打ちようなぞ無いぞ』

「手掛かり、もございませんの、竜神様?」

『うーぬ………』






『白蝶だけズルい』『我等も御子と戯れる』『可愛い子。御子。話そう』


 唐突のアリサ及び竜神の頭上に浮かぶ三つの小さな光と楽し気な声。


「運命の女神様方?」


『予知♡』『解呪♡』『《愛し子》の歌聴く♡』


「ええー……。今? ここでぇ?」


 アリサの不満をたっぷり含んだ声が響いた。








何だか地雷を踏みまくる作者( ;∀;)

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