女の喧嘩?
皆様お久し振りですm(_ _)m
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)
☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
投稿予約に失敗しましたΣ(ノд<)
時間はアリサが学園の訓練場にグリフォンで降り立った後にまで遡る。
学園の学生食堂……とはいかず、引き続きの運動場にて各種メロンパンの試食大会に突入していた。飲み物はそれぞれが自分で用意していた水筒等で賄ってもらっているようだ。だが元より訓練後で渇きが増しているところにパサついているメロンパンの投入である。配分を考えずに自前の水分を飲み干してしまった者もおり、そういった者は喉を詰まらせていた。
「ビル! ビルベルト!」
そこに一人の御令嬢が現れた。赤毛に近いふんわり茶髪。これだけなら可愛らしいだろう条件であるが、面相が酷い。決して醜女という訳ではない。寧ろ整っている方だろう。だが、女の嫌な部分を濃縮したような意地悪そうな顔付きとしか言い様のない顔。尤も、同性と異性とでは感想が違ってくるかもしれない。だがアリサとジオラスの二人には概ね不評であるようだ。
騎士訓練部の先輩方には声だけで、御令嬢が誰であるのかすぐに分かったようだ。全員分用意する為に切り分けられまだ食べられずに残っていた目の前のパンを、彼等は無理矢理口の中へと押し込んだ。揃いも揃ってである。
………どうにも宜しくない予感しかしない。
そして多くの場合、嫌な予感ほど的中するのである。
「あら、見ない顔ね」
アリサを認識した端の第一声である。とても御令嬢とは思えない、身分も何も考えていない態度。
「誰かの弟? お姉さんが構ってあげましょうか?」
「姉上やめてください。貴方は人並みの挨拶も出来ないのですか?」
「煩いわね。わたくしは魔法棟への入棟試験を受けた逸材ですのよ」
何となくだろう。ジオラスが一歩アリサの前に出て乱入者の視線を遮った。だがそれが逆に目立ったようだ。名も知らぬ令嬢の気を引いてしまったらしい。
「ああ! クルイウィル様! 御機嫌麗しゅう♡♡♡」
お前に他者の気分を決められたくはない、とでも言いたげな雰囲気が周囲で見守っている部員達の顔に浮かんでいる。そして名指しされた当のジオラスは──
「………どうも、はじめまして」
暗に「お前誰だ」「お前なんて知らない」と匂わせる挨拶だけを口にした。一般常識として、せめて自己紹介くらいしろ、の意味だ。だが貴族ともなれば、誰かを間に挟んでの初回の挨拶が基本だ。今回は彼女を「姉上」と呼んでいた先輩が双方を紹介するのが筋だ。乱入者はそれを丸っと無視した挙げ句、高圧的かつ自分本意な言動であるので、かなり印象が悪い。
蛇足になるが、アリサの時はジオラスを挟んで「俺の婚約者です」「部活の先輩と同期」なる大変に大雑把な紹介で終わった。それでも筋は通されている。一応の形でそれ以降は世間話くらいなら問題無く会話できるのだ。
これらはわざわざ教えてられなくても何となく成立する距離感でもある。その距離感が一般の通念から逸脱した令嬢と、彼女の弟らしき部活の先輩。因みにこの“先輩”は「フラれるかもぉ~!」と騒いでいた後輩の突っ込み役の一人で理知的な雰囲気の先輩だ。もしかしなくても“姉上”に鍛えられた結果だろう。お可哀想に。同情物である。
「あら? もしかしてそっちのピンク髪、女なの?」
“姉上”がアリサの性別に気付いた。
「短い髪。やだ、みっともなぁい~! 可哀想♪」
アリサが可愛らしい少女であると分かった途端の掌返し。しかしアリサは我関せずの態度で背筋を伸ばし澄ましている。それが余計に癇に触ったらしい。
「それにその服、何? 男物じゃないの。ドレスも買ってもらえないの? 平民だってスカートくらい履いてるのに。あ、そうか。“みたい”じゃなくて貧乏な平民なんだ」
アリサは空の旅であった都合上、一見して男装である。だが彼女自身は何も反論しない。しないどころか聞こえない風体である。これは相手にするに価しないと態度で示しているのだ。これはこれで相当高飛車だが、実際アリサの場合はそれが罷り通る。
アリサは辺境伯令嬢。辺境伯は国の重要拠点を預かる者。その地位は実はかなり高い。公爵の下で侯爵の上。公爵は元を辿れば王家一門になるので、純貴族の中で一番地位が高いのが辺境伯になるのだ。しかし辺境伯は有事に際しては独立機関として王の裁可を得ずに動ける権限を持つ。そういう意味では普通の貴族とは一線を画す。物理的に領地が辺境である事も踏まえ、表舞台では低く見て侮る愚か者が絶えない悲しい現実もある。“姉上”はその愚か者に見えるのだが……それ以前にアリサの正体に気付いていない。
「姉上! いい加減にしてください! 彼女はグリフォンに騎乗して来た都合であのお姿なのですっ。あちらに立派なグリフォンが居るのが目に入らないのですか!?」
先輩、激オコである。しかしそこまで言われても“姉上”には通じない。
「……ホントだ。グリフォン……。グリフォンって言うと、空の部隊? 空の部隊って……何処だっけ?」
この国どころか国外でも勇名を馳せるハリシアを知らないとは、この“姉上”は市井の三歳児並みの知識であるようだ。あまりにあまりなお粗末さに先輩が頭を抱えた。
「我が国で“空の部隊”があるのはハリシアだけです」
「やだ! ハリシア? あの貧乏で有名な?」
ここでアリサの纏う空気がピリッとひりついた。部活の部員達が恐々とアリサを窺うが、一見してアリサに変化は無い。
「ハリシアって言えばさ、魔法棟の事務官に居る女、あいつ厭らしいんだよね。素敵な殿方にチヤホヤされて喜んでんの。身体でも売って仕事もらってるんじゃないかしら?」
アリサの纏う空気がハッキリ冷えた。
「こっちのピンク髪も令息達に囲まれていい気になってるし。ハリシアってそういう女しかいないの?」
だがここまで言われてもアリサは反応を示さない。
「ここまで言われても一言の反論も無いってことは、本当の事なんだ」
「姉上!!」
「御令嬢。私の婚約者への侮蔑はやめていただきたい!」
アリサよりも先にジオラスの堪忍袋の緒が切れた。
「先輩、申し訳ありません。クルイウィル家として後程抗議させていただきます!」
「っな!?」
先輩その人は諦め納得しているように、ただ頷いている。反応したのは“姉上”の方だ。彼女、本気で自分が何を口走ってしまったか理解できていないらしい。貴賤の別無く、言って良い事と悪い事がある。彼女は明らかにそれが分かっていない。
「どうしてですの、クルイウィル様? そんな女およしになってわたくしを見て。ハリシア出身の女なんて、みんな売女ですわ。わたくしなら──」
ブワリ
アリサから威圧が放たれた。おそらく現役の騎士が相手でも通じる威力の重さ。当然その場に居る学生や“姉上”ごときでは抗えないレベル。“姉上”にいたっては何を思ったか、ただ恐慌に陥ったのか、逃げ出した。へっぴり腰で。
グリフォンへ向かって。
アリサの騎獣グリフォン──名を北斗──は、おかしな動きで近付いて来る女が自分の間合いに入る遥か前に、親切にも警告を示した。尤も鳴き声抜き、翼による威嚇抜きの優しいものだが。
──シャー!
猫の威嚇のような、蛇のような、空気を鋭く発しただけの音。たが“姉上”にとっては立派な脅威。彼女はとうとう腰を抜かし、失禁してしまった。
「あらあら」
漸く声を発したアリサの声音は、いつも通り呑気な音であった。
@@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@
その後は見るに堪えなくなったのだろう“先輩”が“姉上”を回収して行った。
その二人の後ろ姿を見送りながらアリサが確認の声を上げる。
「彼女はダメリア・バッテン・ギルヒル令嬢でしょうか?」
唐突とも思える質問に、ジオラスが戸惑いながらも頷く。
「うん? 先輩は確かにギルヒル家令息だから、たぶん、そう?」
「間違いない。彼女は俺達から見ても先輩だけど当時からあの調子で有名だったから、名前も知ってる。彼女の名はダメリア・バッテン・ギルヒル嬢だ」
別の先輩が答え合わせをしてくれた。
アリサは礼を伝えてから、あさっての方向に話し掛けた。
「魔法のオジ様。わたくしアリサ・テッド・アリシアの名に於いて魔法棟へ抗議致しますわぁ。我等が領民へ対する侮辱は大変なる憤りを感じましてよ。部下の躾くらいお願い申し上げますわ」
『そりゃないぜお嬢さん。分かってて言ってるな?』
──!?
「アリサ……今の……声、は?」
「魔法のオジ様でしてよ」
『おう、弟君! 兄ちゃんのクラウスが帰って来るまでもちっと時間がかかるんだわ。待っててやってくれな』
「………え?」
ジオラスだけでなく、その場に居た部員達は揃っておおいに驚いたそうな。
“姉上”は今回限りのキャラです。
せっかく名前付けたのにね(´-ω-`)
最近、作者個人のさる都合で色々気力が落ちております。
いいね等のドーピングください(-人-;)