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王城への~~~竹採り村・第一村人発見

数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等も、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


遊撃隊のほのほの旅が始まりましたo(*⌒―⌒*)o




 火山地帯のお隣さんのお隣さんのそのまた……幾つかのお隣さんも、小さな地方村落であった。おそらく火山地帯の街と町よりも小さい。そのような集落に騎士の団体様がいきなり遣ってきたので、さあ大変。大騒ぎになる……どころか、村民達が慌てて各々の家屋に引き籠ってしまうではないか。この段になって騎士達は後悔した。せめて先触れで報せておくのであったと……。


 暫く(スレイプニル)に跨がったまま村を練り歩く。集落の外から来た旅人に必要な施設(代表は宿屋)の類いは大概は表通りに(つら)なっているものだ。一口に村とは言ってみても、一目で見渡せる程に狭くはない。おそらくはこれが主要道路だろう道をポクポク進むも、すぐに家がまばらになる。だが村を出た感じでもなかったのと他にどうしようもないのとで、引き続きポクポク進んだ。すると再び家々の列なりが現れる。それを三度(みたび)繰り返して、進行方向に手に鉈を持った老人を見付けた。老人は別に騎士達に害意があるとかではなく、単に道沿いの藪の手入れをしていただけのようだ。だがこれは好機である。やっと見付けた第一村人発見なのである!


「もし、御老人!」


 ──ガサガサ! バシバシ!!


「御老体、突然のお声掛け失礼する!」


 ──バッサバッサ、ガシガシ!!


「非礼は詫びる! ええい、聞こえとらんのか!?」


 ──ガサガサ、ガシガシ……!


「駄目だ、真面目に聞こえていないぞ、あれ」

「手伝うか? 老いた身体で大変そうだし」

「観光案内も欲しいしな」


 最後の意見が本音だろう。

 騎士達は一斉に下馬したのであった。






〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉




 

「あんた方が王都から来たっていう騎士様方かい。ハリシアが世話になったねぇ。ありがとさんよぉ」


 やけにほわほわした善良そうな老人に案内されながら、少し奥まった山間(やまあい)に近い方へと案内される。老人が徒歩なので、騎士達も馬の手綱を握っての徒歩となった。なんでも距離はそれ程無いと言うので歩きとなったのだが、それなりに歩いている。老人はかなりの健脚で、騎士達の感覚でも足が遅いとは感じられない。それでもまだ着かない。田舎のすぐそこは遠い。


 そうしてやっと着いたのは小さな木製の小屋。一応住めるとは言うが、基本は作業小屋なのだという。そう言えば──


「火山地帯の町もそうであったな」

「ああ、住民がたくさん住んでいる大きな街と、加工場の為に自然発生したとかいう町に別れていたな」

「ここもそうなのか?」


 騎士達の問い掛けに、老人はほわほわ笑いながら頷いた。


「ハリシアは一時期災害の絶えない土地でしたからなぁ。常に万が一の備えを整えるようになったのですよ。家屋という物は利用しとらんと傷み易いのですわい。だからこうして仕事で毎日通うのじゃ。そうすれば家屋とも気心の知れた仲良しになる。いざという時には家族を避難させるのに持ってこいになるいうものじゃてのう」


 “家屋”という無機物施設をまるで人間を相手にしているように語る老人。もしかしたら……この家屋に助けられた過去があるのだろうか?


「さて、騎士様方、小屋の中は暑いし散らかっとるでな、とりあえずは裏庭で休んでいきなされ。裏庭には井戸もあるでの、井戸で冷やした真桑瓜と枇杷でも食べなされ」


 貴族の家ならば、いきなり裏庭で休んでいけ、はない。馬鹿にしているのかと喧嘩になりかねない案件だ。しかし相手は民間人。しかも通りすがり(団体)を気遣い持て成してくれる心意気や善し。罠の可能性も限りなく薄い。騎士達は老人の好意に甘える事にした。

 裏庭は裏庭らしくしっかり日陰。

 日陰に入っただけで、生き返るように涼しくなった。




@@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@




「うぎっ!?」


 呻き声を上げたのは井戸の釣瓶を引き上げ途中の老人。眺めていた騎士達は、初め何が起こっているのか理解できなかった。疑問符を顔の周りに振り撒きながら眺める事しばし、漸く理解したのは──


「御老体!」「ぎっくり腰か!?」

「違う! 膝じゃ!」

「膝でも動けなくなるのか……」

「なるじゃろう! 普通じゃろう!?」


 生憎まだ若い騎士達には分からない。

 だがまずは助けなければならない。助けなければ騎士の名折れ。

 騎士の一人が老人の手にする釣瓶の綱を引き受け、二人が老人の身体を支える。騎士は戦闘職。仲間の負傷に備えて最低限の応急処置等の知識と訓練は叩き込まれている。現役騎士からすれば庶民の老人なぞ一人で対処できる。それを二人がかりなのは、老人の身体の負担を考えてだろう。


「村長!? あんた達、何してるんだ!?」


 老人は村長であったらしい。

 村長の介助途中で更なる第三者から厳しい問い掛けが為された。騎士達が声に振り向くと、村長の右手背後の方に立派な竹を抱え引き摺って来た青年が立っている。


「この御老人の知り合いかな?」

「我々は怪しい者ではなく──」


「怪しい奴ほど自分は怪しくないって言うらしいな」


「確かに……」

「馬鹿、納得するな。──失礼した。我々は王都から派遣された王宮騎士団の者だ。これは、どうも御老体が膝を傷めてしまったようでな。我々の為に申し訳ない」

「おお孫よ! 熱めの手拭いを用意してくれ……!」

「あ…そういうことか。──こちらこそ失礼しました騎士様方。祖父の事はどうかお気になさらないでください。膝は元からですから」


 青年が竹を放置して騎士達の脇を駆け抜け、小屋に一人入って行く。待つことしばし、青年が折り畳んだ布を右に左にお手玉しながら出て来た。手元が非常に熱そうだ。


「身体を傷めた際には冷やすのが基本だが?」

「それは炎症を抑える場合の処置だそうです。でも祖父は疲れ等からくる凝り固まりが原因なのだそうです。凝りは温める方が良いそうですよ」

「目の疲れも温めると楽になるそうですぞい」

「そうなのか。良い事を聞いた」


 騎士達は呑気な声を返しつつも心配した。この地元民二人、見知らぬ旅人相手にこんなにお人好しを発揮していて大丈夫なのか。その内に騙されるぞ。


「しかし時代は変わりましたなぁ」

「ん?」

「どういう事かな、御老体?」

「なぁに騎士様。騎士様方は火山のスタンピード対策で来てくださったんじゃろう?」

「そうだ…が?」

「前回のスタンピードん時は、見殺しにされたからのう」

「!?」

「祖父さん、いくらなんでも不味いよ……」

「いや! ……できればいま少し、話を聞かせてもらいたい」

「はっはっは。まずは真桑瓜でも食べなされ。良く冷えておるぞい」


 村長の言葉に青年が慌ててせっせと瓜らしき野菜を鉈で割り始める。せっかくなら……どうせならメロンや西瓜を期待し所望したかった騎士達だが、勝手に押し掛けて図々しくもたかる形になる身の上では何も言えない。が! 真桑瓜とやらがやたらに美味い! 甘くない。けど程好く甘い♡ 何より暑さに火照って渇いた喉に、ありがたい水気。甘過ぎないのが反って美味い。




「ハリシアは先代様の時代じゃ。先々代様のツケが一気に出てき始めた頃でな、ハリシアは何処でも困窮しとった。軒並み知恵者や技能者が先々代様に投獄されて、知恵も技術も途絶えた頃合いでもあったでの。しかもそれまでは無かった災害が相次いだで、本当にどうにもならんくらい酷かった。先代様が国に掛け合って助けを求め続けたが、全て無視された」


 騎士達は沈黙した。


「そして、とうとうスタンピードが起きてしもうた。先代様は領民第一で奔走なさったそうじゃが、やはり国には無視されてのう。前回は本当に酷い被害が出てしもうた。そして先代様のお子様が亡くなってしまったのじゃ」

「え!? 先代アリシア伯爵といえば、レイモンド翁の事ですよね?」


 村長が一つ頷くと、遊撃隊を代表するようにクラウスが重ねて確認する。


「レイモンド翁のお子様と言えば、現アリシア伯爵お一人ではなかったのですか?」

「当代様には姉君が居られたのじゃ」

「では、そちらがお亡くなりに……」

「これはあくまでも聞いた噂ですじゃ。先代様の第一子である姫様は、スタンピードのどさくさに紛れて先々代様に殺されたいう話じゃ」

「御老体……!」

「だから、あくまで噂じゃて。しかしのぅ、騎士様方や。先代様はあのスタンピードのすぐ後に、先々代様を幽閉なさったのじゃよ。そして初めは先代に難癖を付けていた国も、先代様の凄まじい怒りにお黙りなすった。あの、穏やかで辛抱強い先代様が烈火のごとくお怒りになられたのは、後にも先にも、あれだけじゃ……」


 この村長と呼ばれる老人は、もしかしたら先代アリシア伯レイモンド翁の近くで見ていたのかもしれない。そんな話しぶりであった。






@@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@ @@@@@@@@@@






 この村では何が名産品なのかと訊ねたら──


「名産と言う程大した物は無いのう。まあ、ワシ等が作っとるのは、主に竹細工かの」


 そう言って見せてくれた竹籠の網目の見事なこと!

 他にも笊、笠、ヘラ、靴の代わりの“下駄”なる履き物……等々。なんと、竹酢なる液体は、ちょっとした皮膚病に効くとかいう蘊蓄まで聞けた。ついでにその竹酢をひと瓶貰ってしまった。

 そればかりか、建物の一部──窓枠等にも竹が使われている事実にも気付いてビックリ!


「ここから先に行くと、陶磁器の為の窯焼きの里がある。覗いてみたらええ」


 こちらの村に宿屋は無いというのと、まだまだ移動できる時間であったので、案内された里を目指す事にした。


 何処へ向かう王城遊撃隊。

 帰路の旅である事を忘れるな。








おまけ

「じーさん、じゃなくて村長、いくらなんでもあれはヤバいよ。先々代様は当時の王弟様なんだろう? 不敬罪に問われたら牢屋行きだぞ!」

「そん時はそん時じゃ。そん時はワシが一人で罪を背負って牢屋に入る。心配いらん。なに、ワシのような老いぼれ一人くらい居なくなっても、村はどうって事ないわい」

「はー……村長の身を案じてるってのに」

「お! さっきから少しばかり(かしこ)まった表現をしとるな。少しは大人になったか?」

「そうやってすぐ茶化して誤魔化す。それと、“少し、少し”って、“少し”を強調しすぎだろう!」

「はっはっはっはっ♪」








ちょっとだけ最後の方にシリアス入りました(。´Д⊂)

レイモンド翁は本当に大変だったんです!

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