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ひょうすべりしてヒョウスベになった

数ある作品の中から拙作をお選びくださりありがとうございます(^人^)

☆評価、ブックマーク、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


“ひょうすべり”って何? “ヒョウスベ”???

作者、このどちらも全く認識していなかったのに何故か降って湧いた題名。

念のため調べてみたら、本当にどっちもあった!






 《年金倉庫》食糧在庫の食べ放題。主に軍人参加の現場にて──


「はっはっはっ! 今度は雑草か!」

「薬草ですよ」

「嘘だー!」


 憎まれ口担当ハリー・デヴィド・サセクの高笑いに、もはや慣れた感満載の周囲は反応しない。いちいち相手を努めてくれるアリサはある意味優しいのかもしれない。




 この会話の少し前に、街の子供達がアリサに群がり懐いて来たのが始まりだ。


「天使様~♪」「いらっしゃ~い♡」「お久しぶりなのぉ~♡♡」

「天使様、仕事ちょうだい~♪」「しごとなの~♪♪」


 児童と幼児の5人組。全員が兄弟という訳ではなく御近所さんだろう。応えるアリサは調理の手を止める事なく子供達の顔をうかがう。


「今回、報酬は出ませんよ?」

「分かってるって!」「今は非常事態なのぉ~」「みんな何かのお仕事してるもん」「俺達だって仕事できるんだぞ!」「………できるのん」


 可愛い。アリサは少し考える。

 ハリシアでは子供に仕事をさせてはいけない、等の価値観は無い。勿論、児童労働は嫌悪されてはいる。苦難のハリシア時代があったが故に、子供達を労働の道具とする価値観は忌避される傾向が強いのだ。しかし同時に子供の頃から働かせもする。一見して矛盾しているようだが、違う。ハリシアでは経験を積ませているのだ。自分の力で生きていける人間として育てる為に。そして“仕事”は人に“誇り”という一本の筋を与えてくれる。人によってはその“誇り”が精神の背骨にもなり得るのだ。


「…………そうですね、小型ナイフは扱えますか?」


 アリサの確認に子供達は一斉に肯定の返事をそれぞれに上げる。もう元気な返事だ。そして周囲は、ほのぼのと眺めている。驚き恐々と見ているのは、王城からの他所の土地出身者だけ。


「ここから見える原っぱには“ひょうすべり”が生えているのでは?」

「あの辺りなら、いっぱい生えてるよ!」


 子供の一人が野原の一画を指差しながら答えた。


「では、《年金倉庫》の一角にナイフがございますから、それで“ひょうすべり”や、他にも口に入れられる物を採取してきてください。ああ、でも笊までは無かったかしら?」

「一度お家に取りに行って来る!」「俺、自分用のナイフ貰ったばっかりなんだ!」「あたしも~♡」「えー、いいなあ……!」「……………」


 子供達は喋りながら、たったっと小走りに街へ戻って行った。そして然程の時間を置かずに戻って来た。戻ると言うより、直接目的となる一帯へチョコチョコ走って行く。集まっている大人達から良く見える範囲だ。子供達も心得ているということだろう。


 で、子供達が行って戻って来るまでの間に──


「はっはっはっ! 今度は雑草か!」


 一応は子供達を慮ったらしい。子供達が去った後の高笑い。しかしあっさり返り討ちに合う迄がお約束。


「薬草ですよ」

「嘘だー!」


 冒頭のような遣り取りがあった次第。

 因みに“ひょうすべり”とは、日本名“スベリヒユ”なる植物で、一般認識は雑草である。地球の物は手で採取が可能。今回アリサが子供達にナイフを使わせたのは、まず一つにナイフの扱いに馴れさせる為。もう一つは、幼児に毛の生えた程度の小さな子供がいた為だ。成長しきった“ひょうすべ”は、たまに固い茎の物が紛れているのだ。話を戻して、雑草と侮るなかれ。古く中国では、“五行草”なる薬草であったので、アリサの言い分は嘘にはならない。実際に“オメガ3脂肪酸”が植物の中では断トツに高く、東北地方や沖縄辺りでは食べてい(る?)たらしい。あれだ。アマニ油やシソ油に多く含まれている栄養素で健康食品だ。ハーブと捉えれば食すのにも抵抗は減るだろう。だが本来は若い枝葉を食糧として利用するのであって、夏も終わりの時期になると、些か固くアクも強くなる。そこはちょっと茹でる時間を長くすれば解決だが、悲しいことに“オメガ3脂肪酸”は加熱に弱い。固さを無視できるなら、茹でる前の水に晒す過程を長くするだけでも違うだろう。

 食べる時は、和えるだけ。酢味噌が初心者にはお勧めだ。芥子を加えても美味しい。炒めるのにも、一度茹でこぼす。アクが強いのだ。

 保存食にするには、根を除いた全草を採取して、良く水洗いする。ざっと水気を拭って、日干し。乾燥したものは馬歯筧(バシケン。筧は本当は草冠)なる生薬になる。効用は解熱、解毒、利尿作用。虫刺されやニキビ等にも利くというから、多少の炎症に効果があるという事かもしれない。


 あれやこれやハリシア民の逞しさを見せ付けられた王城勤務のボンボン達は、己れの驚愕と感動を込めまくって何度目かの報告書を送った。


 この後、元・犯罪者(未満)の職人軍団──勿論、全員が脛に傷を持っている訳ではない──との邂逅で、も一つ頭をガツンと殴られる未来がまだ待っている事をボンボン達は誰も気付かない。








“ひょうすべり”は草の名前。“ヒョウスベ”は河童を指す方言。

「草が“して”河童になった」って、訳が分かりませんね。

現場に居た王城勤めの騎士達は、この題名のごとく混乱していたのではないかと思われます。

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