105.王城騎士達の一番長い日~~~食べ物の怨みは怖い
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます(^人^)
☆評価、ブクマ、いいね 等もありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
サブタイトル通りのお話顔(-_-#)( ̄□ ̄;)!!
スタンピード戦・大遅刻──その後の近衛遊撃隊は……実は結構幸せを満喫していた。
オッサン達よりも元気で逞しいオバチャン軍団と、そうなる前の恥ずかしがり屋揃い可愛い美人っぽい娘達の作ってくれる大鍋料理。パンは王都で食べられている物より柔らかくて甘い。何より野菜が美味い。地熱の蒸気で蒸かしただけの野菜が美味いとかおかしい。でも美味い。
風呂は温泉。大風呂。混浴もあると(アリシア嬢に)聞いて騙された見習い数人が、禿げた爺さん白髪の婆さんついでに幼児達に散々揶揄かわれる洗礼を受けたらしい。だがそれはそれで他では体験できない思い出にはなったわけだ。
一方で、地元軍や地元民、そして休暇を取って王城から駆け付けてきた四人に混じり魔獣の後始末を手伝った者達にも学びやら思い出やらができた。
何故に軍が掃討の前面に出なかったのか? との素朴な疑問には、アリシア家の兄弟の判断だという。
理由その一・とにかくスタンピードに対する体験を積ませる目的。体験談は後々まで語り継がれ、未来の子孫達への知恵への一助となるだろう。
理由その二・体験させるにも、ある程度の安全の担保は欲しい。その場合、逃げる等の自由度が高いのは寧ろ前方との判断。……確かに周囲に何も無ければ何処へでも逃げられるだろう。その代わりに盾になる物も避難できるであろう場所も無いに等しいのだが。
理由その三・後方に衛るべき対象がある場合、さすがに素人に護り切るのは難しい。文字通りの死守の覚悟を以て布陣に着いた軍が後方に控えていれば、前面に立つ地元民は気負い過ぎず自身の安全を顧みる余裕が生まれるだろう見込み。
「まあ蓋を開けてみたら自分達の出番がまるで無かったわけですがね」
明るく笑って説明してくれたハリシア軍の中堅責任者に、良い意味で王城の騎士達とは心構えが違うのだろうなと思わされた。
「赤湯ザリガニは胸に魔石を抱えてるんで、まずそれをナイフで抉り取って……ああ、それでは魔石に瑕が付いてしまいます。ナイフはこのように──」
「火鼠は貴重な毛皮なので、腐る前に手早く綺麗に──」
ケイトや地元の綺麗処に教えてもらいながらの魔獣の処理は、勉強になると共に、正直気が遠くなった。しかし遊撃隊として派遣された筈の近衛騎士達が食べて温泉に入って寝て……一晩明けると俄には信じられない程の数が処理されていた。ざっと見積り三割程の面積が魔獣の赤から山肌の灰色がかった茶色に戻っている。
「………え?」「ウソだろ……」
「皆様、朝食が整いましてよぉぉぉー!」
近衛(と魔法騎士)達が言葉に詰まる驚愕の側から、おそらくアリシア嬢のものであろう声が離れた場所から朗々と響く。声は続く。
「徹夜組の方は食事を摂ってからお風呂に入って休んでくださいませ! 女達が交代致しますわ!」
彼女の号令で街が動き出す。
おそらく街を護りつつ魔獣の解体を続けていたであろう軍属(ケイト込み)の人間達が街の外からぞろぞろゾンビのように集まって来る。対して街中に居た女を初めとした人間達が徹夜組の世話人と外に出る者とに別れて動き出しているようだ。
「………ハリシアの底力、凄げぇー」
この後に知った事柄だが、小さな魔獣は腐り易い。それを防ぐ為に一部は冷暗貯蔵庫に詰め込まれ、間に合わない分の殆どは火山灰の上(地熱込み)で簡易乾燥に回され、もれなく無駄なく素材に化けたという。
こうして「凄いハリシア」はもれなく「神秘のハリシア」として王城出向組に認識された。
王城からの出向組がハリシアの旨みを知ってしまったすぐ後に、ハリー・デヴィド・サセクが遣ってきたのだった。その為に騎士達の楽しみと化していた“食”が危機に曝される事となり、騎士達の怒りが通常よりもかなり景気良く?燃え盛るのであった。
騎士達の王城への報告書はそれらの怒りが激しく詰め込まれる事となる。
騎士は肉体労働者。
お城の中では頭脳労働も見せる魔法騎士と近衛も所詮は脳筋気質。つまり、食には貪欲であります。
怖い、恐い、こわいですねぇ~(/o\)
騎士達に共感してくださる方は、ポチっと☆評価、ブクマ、いいね
をお願いいたしますm(_ _)m