スタンピードの後に
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今回は主役達は出て来ません。
クラウス達魔法騎士は、ボンヤリなのか呆然なのか、気抜けしていた。
沸き上がる湯気。熱めの豊富な湯。大浴場。
現在魔法騎士達は最優先で、ハリシアには数あるという温泉に浸かっていた。
──何だこれ……?
これは、厚待遇と表現して良いのではないだろうか?
確かに働いた。慣れない空中飛行──一部憧れのワイバーンライダーになってそれなりに魔法戦闘員としてこき使われた。自覚はある。しかし普通の遠征と比べても非常に快適。食事も美味しい。基本、清潔でいられた。そしてトドメがこの温泉だ。
これはいけない。人間駄目になる。
「なんか、もう帰りたくない……」(岩・土・結界)
「分かる。同意したくはないが……深い理解を示したい」(回復係)
「………」(クラウス水・氷)
同僚二人が何かほざいている。王宮騎士としての意地にかけても同意はしない。反対意見も出せないが。
「この後、打ち上げだよな?」(回復係)
「ああ……たぶん」(クラウス水・氷)
「今日の飯、何かなぁ?」(岩・土・結界)
「今度は酒が出てくるかもよ?」(回復)
「ハリシアは素晴らしい」(岩・土・結界)
「幻獣とか可愛いし、御婦人方は別嬪だし(うんうん)」(回復)
「飯は美味いし、温泉は天国だ……(うっとり)」(岩・土・結界)
「神秘の隠れ里ハリシア。誰にも教えたくない」(回復)
「……………(大丈夫か、こいつら……?)」
〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉
その頃、王宮騎士第二騎士団所属ケイトは面目を丸っと失くした近衛遊撃隊の面々の説得に当たっていた。
「とにかく、休んでくださいっ」
本音:邪魔くさいから現場から離れてくれ!
「いやっ、我々はなんの役にも立っておらんのだ。せめて後片付けくらい手伝わせてくれ」
「それを言われたら、私もハリシア軍も戦ってませんよ。皆さんと同じです」
ケイトはアリサが囮として出るとの会話をハリシア軍の中で拾った時、ガロンドに文官達を任せて最前線の山の麓まで走ったのだ。幸いギリギリでアリサ達の出撃に付いて行けそうだったのだが、後退して来る地元のオバチャン達に捕まり「あんた鈍足だろ!」との駄目出しをくらって首根っこを捕まれ引き摺られて離脱していた。まさに遺憾。慚愧に堪えない心境で一杯なのだ。
「騎士様方、そんなデカイ剣じゃバラシ難いだろうよ。それより魔獣達を魔法使い達の元に運んどくれな」
「ああ、もう! オバチャン達、偉い人達なんだから、駄目だってば!」
「いや、かまわない。子供達も働いているんだ。遣らせてくれ」
スタンピードがほぼ終了した今、山に一番近い小さな町ではなく、少し離れた少し大きな街から人々が溢れて来る。それこそ女子供から老人まで。明らかに非戦闘員だ。後ろの街で息を潜めて避難していた人々。今彼等は魔獣の解体の為に集まりつつある。
「数が数だからね! 冷やしとかないと全部処理する前に腐っちまうよ!」
「冬の保存食だからね! 全員気張りな!」
地元のオバチャン達の号令に、近衛遊撃隊の男達は戦いた。
「ネズミを食べるのか!?」
「いや、火鼠は毛皮と魔石を採取するだけです。食べるのは赤湯ザリガニの方ですよ」
「火鼠!! これが高級毛皮の、あの!?」
「保温に優れているので、冬に必須の毛皮です。外套に用いれば凍死を防ぐだけでなく、炎の攻撃を防いでくれる優れ物でもあります」
日本の『かぐや姫』に出てくる、あの“火鼠の衣”の火鼠である。家鼠くらいに小さいので、かなりの数を繋ぎ合わせないと着衣としては使えないのだが。
それはそれとして、現場に転がっている魔獣達は全部で何十万か何百万か。億には届いていないと信じたい。
「はっ! 駄目ですよ! 陸路で来るなんていう無茶をしたんですから、休まないと!」
「マジ!?」「陸路で来るなんて凄げー!」「勇者だぁ!」
ケイトの絶叫に周囲の地元民が反って──特に子供達が活気付く。活況な雰囲気に、もはや引っ込みなどつかないだろう。近衛達はこれ幸いと動き出し、ケイトは自爆したのを悟って頭を抱えたのであった。
「若様と天使様からの指示ぃー!! 赤湯ザリガニは魔石を採った後は縦半分にして灰干しだよぉー!!」
灰干しとは何だろう?
近衛遊撃隊の男達は子供のように内心心踊らせていた事をケイトは気付かない。
因みに山の主たる赤いドラゴンは、暫く昏倒していて目覚めなかった。その為にドラゴンの下敷きになった魔獣達は尽く潰れ乾燥していたという。
目覚めたドラゴンは正気に返り、山へ戻って行った。
はたして、恋の花は開いてくれるのでしょうか?
近衛の騎士その一さん、ケイトに興味を持ってくれたまえ( ̄^ ̄)
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