わたくし、アリサ・テッド・アリシアですの
発作的に書き始めた作品。
短編に纏められるくらいには、短い予定です。
剣と魔法の世界。でも世界観は近代よりの中世ヨーロッパ。中世ヨーロッパというより、所謂ゲームっぽい世界。この世界に自動車の類いはまだ存在していません。
そして物語の進行役であるわたくしアリサ・テッド・アリシアはテンプレを踏まえた前世の記憶持ち。
はい! 異世界転生キター!!
らららららららら~♪
前世の事はうろ覚えですけれど、地球人口80億超えてたような? あら? 70億だったかしら? まあとにかくこちらの比でなく人間増え過ぎでしたものね。魂の人口密度が高過ぎて、死後、〈忘却の河〉を渡り切る前に〈河〉に流され弾かれこちらの世界に漂着したのだろうと、拾ってくださった神様的な何かが生まれる前に教えてくださいましたの。
何はともあれ、わたくしはこの世界で貴族令嬢として生きております。まあ現時点では家格は上でも下でもなく真ん中の伯爵、という建前ですけれど。ついでにこの世界がゲームにリンクしているのか将又小説繋がりか、それとも完全独立世界かは分かりませんけれど。……………結論。わたくしは完全モブですわ! 物語が在ろうと無かろうと知りません。心穏やかに、嫁に出る可能性も潰し、家の事は兄弟に任せ、お一人様生涯を目指すのです! 実は既に半分以上目的達成しております! 両親には嫁に出なくとも良いという許可を正式に(書類付き)でいただきました! ええ、わたくしすっかり変わり者令嬢です! あら? ……変わり者って悪目立ちして物語に巻き込まれ易いのですわよね? ああ、でも大丈夫ですわね。だって指針以外はいたって普通ですもの、わたくし。
ふふふ……さあ、安穏平穏お一人様を目指しますわよ!
そうして迎えた剣と魔法の国立学園。
物語なら「これぞ舞台」ですわね。
現在アリサ・テッド・アリシア、15歳(になる年)。学園入学。
「聞きまして? わたくし達と同じ入学生に神に愛されたとしか思えない美しい御子息がいらっしゃるそうですの」
「もしかして、あの方かしら? わたくし、遠目ですが拝見する機会に恵まれましたの。ブルーオパールのような不思議で美しい瞳をしてらしたわ」
「ブルーオパールの瞳というと、〈水伯爵〉の御子息ですわね」
あ、しまった。はしたなくもついつい口を挟んでしまったわ。でもイケメンの話なら交ざりたい。
「でも、〈水伯爵〉ならば髪の色は水色か水色のかかった銀髪ではなくて?」
「違いましたの?」
「そう言えば髪の色は申しあげておりませんでしたわね。鴉のような美しい漆黒でしたの」
〈水伯爵〉は近隣諸国にまで名を馳せる有名な一族である。
何よりも有名なのが、その特徴が在り過ぎる瞳──ブルーオパールの瞳。不思議も不思議で、本家を離れると自然とこの特徴は産まれなくなるそうだ。因みに髪の色もほぼ同一で、水色か水色のかかった銀髪。だが髪の色はまだばらつきがあると記録に残されていた。はい、有名でも何でもない記録です。何で知っているんだとの突っ込みは聞き入れません。
「でしたら珍しくも母君のお色が出たのやもしれませんわね。でもそれって、何となくアネモネを想起いたしませんこと?」
と、わたくしが話をずらすと、元々目的も筋道も無い内容は誘導に従って逸れていく。
「何故アネモネですの?」
「美しい黒髪というと、わたくし、西風の精霊を思い浮かべますの。西風関連の素敵な殿方となれば、西風の恋人アネモネですわ」
「いやだわ。アネモネは美の女神様の恋人ですわ。西風の恋人候補はヒュアキントス、花に変えられてからの名はヒヤシンスでしてよ」
わたくしがわざと間違えた名を鬼の首てもとったかのように、御令嬢が鼻息も荒く訂正してくる。私の人生、御令嬢相手のこの手のあざとさは大事なのである。但し! 殿方相手にあざとさを振り撒いてはいけない。遣った事無いから結果は知らないけど。
「いずれにせよ、花に例えるのは良いかもしれませんわよ」
およ? そこまでは意図してなかったけと、考えてみれば自然な流れですわよね。
そんな感じで通称〈お花さん〉は、案の定、学園中の女子の人気を掻っ拐っていくのであった。
ここまで読んで下さって有り難うございます(^人^)