戦いのきっかけ
絵本のような物語と思ってお読みください。
時間が止まった様な気がした。
ルートが冗談を言ったとは思わないけど、本気だろうかと疑いたくなった。
「戦いを止める?そんなこと、どうやって…。」
「ねぇ、ラリス。君はどうして僕達鬼同士が傷つけあうようになったのか、
その理由を知ってる?」
「それは、この戦いが始まった理由のこと?
黒鬼達が武器を持って攻めてきそうだって聞いたから、
自分たちを護るために立ち向かったんだよ。」
「そうか。僕たち黒鬼の皆も同じような事を言っているよ。
“白鬼が攻めて来るから武器を持て”ってね。」
「え?黒鬼が先に攻めようとしてきたんでしょ!」
僕は自分達が原因だって言われているような気がして腹が立った。
でも、ルートは僕の目を見ながら穏やかな表情で静かに続けた。
「お互いがそう言いあっているだけなんだよ。
でもね、実際どちらが先に仕掛けようとしてきたかは問題じゃないんだ。」
「どういうこと?」
「僕はどうして仲の良かった色違いの鬼達がいがみ合うようになったのか知りたくて、
長老達や大人たちに聞いて回ったんだ。
一人で旅をして、青鬼と黄鬼と赤鬼にも会いに行った。
ものすごく警戒されたけど、何度も何度も頭を下げて話を聞いて来た。
そこで皆の話を繋げたら、なぜこんなことが始まったのかがわかってきたんだ。」
ルートは今までに旅の中で聞いてきた事を語り始めた。
ある日、仲良く暮らす鬼達の元に旅のモノ達が訪れた。
その旅のモノ達は世界を回る中で見つけた物を売って回っていると言う。
しばらくの間、各色の鬼達の長老や大人達の元を回りながら、周囲と上手く信頼関係を築いていた。
しばらくして、それぞれの色の鬼達の元で、『あなた達のことを別の色の鬼達があれこれ話していた』と心配げな顔をして話すようになったという。
最初はあまり気にしなかった各長老や大人達も、物知りで親身になって話を聞いてくれる旅のモノ達からの言葉に少しずつ影響を受け、色違いの鬼達に不信感を持つようになる。
そして、各鬼達はギクシャクし始め、言い争いも増えていった。
そうなった頃に、『実は別の色の鬼から武器を売ってくれないかと秘密の相談を受けた』と各鬼達に告げるのだ。
高まっていく緊張感に、青鬼、赤鬼、黄鬼達は戦いを避けるために別の地へ旅だった。
そして残った白鬼と黒鬼達の間で、少しずつ、けれど着実にお互いへの不信感や敵対心が高まった。
その後はもう、旅のモノ達が「相手は武器を買い始めた」と言っただけである…。