親友との再会
絵本のような物語と思ってお読みください。
ある日、いつものように戦っている時に
僕は大きな傷を負ってしまって。
何とかその場を逃げながら、少し離れた森の中に逃げ込んだ。
大きな木の陰に隠れて座り込んで、
痛いのを堪えていた時、こちらに誰かが近づいてくる音が聞こえた。
“もし黒鬼だったら、僕は助からないだろうな”
怖くて、胸が痛くなるほどバクバクしてたけど、
“死んだらもう戦わなくてもいいのかな”なんて、ふと思ったんだよ。
そう思うと、不思議と“それでもいいかな”なんてね…。
ぎゅっと目を瞑って待っていると、音が自分の前まで来たのが分かった。
「怪我をしているの?僕は医者だよ。君の手当てをさせてくれないか。」と
静かな声が聞こえた。
そっと目を開けると、目の前にいたのは黒鬼だった。
一瞬で体が凍り付いたみたいになった。
呼吸をするのも忘れて、ただ固まるしか出来なかった。
そしたら、黒鬼は傍にあった箱を傍において、
僕の方に何も持っていない手を静かに差しだしてきた。
僕は黒鬼の手を見つめながら呟いた。
「僕を攻撃しないの?」
「そんなこと出来ないよ…。」
「なんで?」
「どうして大親友の君を傷つけると思うの。」
僕はきっと雷に打たれたような速さで顔を上げたと思う。
一瞬前まで敵だと思っていた黒鬼の顔は、
僕の大好きな大親友の面影がくっきり残っていた。
しばらくお互いにじっと相手を見つめていた。
「本当に…、本当に君はルートなの。」
「そうだよ、ラリス。久しぶりだね。こんな再開になっちゃったけど、
僕に君のその痛そうな傷を手当てさせてはくれないの。」
なんて君が穏やかな顔で答えるから、僕が君を抱き締めたのは仕方ないと思うんだ。
傷の痛みなんて、ちっとも感じなかった。
…、嘘だ。ちょっぴり、いやかなり痛かったさ。
けど、僕の中の色を失った世界に閉じ込めてしまった君や他の皆の姿が、
鮮やかな色を持って蘇ってきたように感じたんだ。
とても大好きだった彼らを置き去りにしていた自分に気付いて、
「ごめんね、ごめんね、ごめんね」と言葉と一緒に温かな涙が溢れた。
「うん?いいよ、許すよ、いいんだよ」
首をかしげながら、君が僕の背中をポンポンと叩いてくれたから、
僕を苦しめていたのは僕自身だって気付けたんだ。
その時僕は皆が最後にあった日、君に頭を撫でられるピキを
羨ましく思っていた感情まで蘇ってきた。
ちょっぴり恥ずかしかったけど、とても嬉しかった。
ルートは涙がなかなか止まらない僕に
「ラリスは前より涙もろくなったね」なんて冗談っぽく言いながら、
僕の傷を手当てしてくれた。
話したいことは沢山思い浮かんだけど、
「君はどうしてここにいるの?」と聞くのがやっとだった。
「僕は、医者として戦場にいながら、いつも君を探してた。
君の父親は軍の責任ある立場にいるから、きっと君も参加してるだろうと思って…。
会うことはもちろん、話をすることだって出来ないかもしれないと思たけど、
僕は諦めたくなかったから、医者になってここに来たんだ。」と真剣な目で言った。
「僕に会うために、こんなところにまで来てくれたの?」
「そうだよ。君に会って、話をしたかった。この戦いを止めるために。」