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30話

「新居だー!!!」


 そして三日後、新居が涼に正式に引き渡された。


 予め業者に全てを頼んでいたので涼の荷物は既に部屋にセッティングされている。


 ちなみに俺とリンネの荷物はPCも含め、冒険者関連以外は全て新規で買ったものである。


 というのも前の住居も一応残しているためだ。


 理由は単に3日で家を引き払い、荷造りを済ませるのが余りにも面倒だったから。


 ワンルームならともかく、かなりの部屋数があったため流石にやる気は起こらず、なら全て買い直そうということになった。


 既に5億というでかい買い物をしているのだ。追加で1千万とか追加されたところで懐に大差は生まれない。


「改めて馬鹿でかいな」


「写真で見ていた三倍はあるね」


 内見で見た家の数倍以上の広さを持った超豪華な家に俺たちは圧倒されていた。


「そもそもエレベーターが一軒家にあるってどういうことだよ」


「4階もあるからね。個人部屋もそこにあるし、無いと不便でしょ?」


「それはそうだが……」


 金持ちって皆こんななのだろうか。


「キッチンでかっ!」


「何人で飯食うんだよ」


「庭も広いよ。バスケぐらいなら余裕で出来そう」


「物置スペースも多いね。マジックバッグの中身全部収納できそう」


「和室は三人での生配信とかオンラインのインタビューとかで使えそうだね」


「踊り場って家に必要なのか?」


「ベランダも広いね。寝れそう」


「何でも出来るじゃん!」


 俺達は新居を2時間程巡り、十分楽しんだ後各自部屋に入った。


「落ち着かねえな」


 家の10%程度しかないはずなのに、俺の住んでいたマンションの倍はある。なんなら実家位広くないか?


「どう使っても結局部屋は余るだろうし、何か施設でも配置すれば良いか」


 それで何部屋か潰せば居住スペースは実質的に減るから落ち着くだろう。


 そうだな、小さなゲーセンでも作るか……?


 どんな部屋を作るかPCで調べつつ考えるといつの間にか夜になっていた。


「時間だし共有スペースに行くか」


 涼の提案で初日は豪勢にバーベキューをすることになっていたので、部屋を出てエレベーターを使って1階に降りる。


 すると何やら会話が聞こえてきた。どうやら二人は既に降りているようだ。


「あの二人って何話すんだろうな。共通の話題ってあったっけな」


「なななななんで涼さんは!!!!!」


「別に変じゃないでしょ?」


 何をしているのかと思えば、リンネが涼を見て大騒ぎしていた。


「リンネ、どうしたんだ?」


 俺には異変が感じられなかったので当の本人に聞いてみた。


「どうしたって、あの格好だよ!」


 涼が着ていたのはノンスリーブの白Tとボーダーの半ズボン。


「ただの部屋着だろ」


 あまりここは家っぽくないが、ちゃんと家だからな。楽な恰好をしていても大して問題じゃない。どうせ俺たち以外見ないだろうしな。


「いやいやいやいや。不味いものが見えてるよ!ブラとか!」


「ん?ああ、確かに」


「何でAIMはそんなに冷めてんだよ!」


「一緒に暮らしていたら何度も洗濯するからな。慣れた」


「慣れんな馬鹿!」


 リンネの暴走が止まらないので涼には上に羽織るものを我慢して着てもらい、無事にバーベキューを行うことが出来た。


 が、


「なななんでそんな恰好で家を歩いているの!」


「もう少し服着て服!」


 と風呂上りや寝起き等リンネは何度も涼に対して恥ずかしがりながら怒っていた。


 結果、


「僕、家帰る!」


 と言い残し、杉並区の家へと帰っていった。


「ねえ、私達悪いことしたかな?」


「別に普通だと思うが。家だし、配信もしていないしな」


「家だもんね」


 結局俺達にはリンネの考えていることが分からなかった。




「じゃあ行くか、S級ダンジョン」


「うん」


「そうだね」


 数日間の休暇を終え、身も心も完全に疲れが取れた俺たちは遂にS級ダンジョンの一つ、千代田ダンジョンに挑むことに。


「調べていた通り、原っぱに出たみたいだね」


 目の前に広がっているのは、ただ広い原っぱ。周りを見渡すと、様々な虫や動物がそこら中を駆け回っている様子が見られる。


「ああ。そしてしっかりと塔も見えるな」


 雲をも貫き、天高くそびえ立つ巨大な塔。これがS級ダンジョンにおいて次の階層へ上るための階段のようなものだ。


「今回はあそこを目指すってことで良いんだよね」


「うん、そうだね。ただ、今日中にってのは無理かも。思っていたよりもかなり遠いみたいだし」


 異常な程に巨大で高い塔なため、入り口から観測出来ているがかなりの距離があるように見える。


「ってことは泊まる場所も考えないといけないね」


「それが今日の目標だな」


「うん。じゃあ配信つけるよ」


 今日の目標を設定し終わった所で、リンネがカメラを起動して配信を始めた。


 いつも通り挨拶を済ませた後、塔に向かって歩みを進めつつ人が居る場所を探すことに。


「一応すぐ近くに村があるってのは『火炎の導き』さん達の調査で分かっているんだけど、大丈夫かなあ」


 道中、リンネは心配そうに話した。


「まあ、これに関しては完全に運だからな。言葉が通じることを願うのみだ」


 このダンジョン内は完全な異世界であるため、人に似た知的生命体が居たところで言語が通じるわけが無い。


 しかし、それを見越した救済措置なのか、パーティ単位でランダムにその世界の言語を一つ無意識に理解できるようになっている。


 一応ダンジョンから出た地点から近い所に存在する言語が優先される仕組みがあるらしいので、大抵は何も起こらないのだが、その周囲に言語が異なる国があった場合非常に面倒なことになる。


 実際、『火炎の導き』はその言語ガチャに失敗した結果、このダンジョンを攻略することを諦めている。


「その時は野宿しかないよね!」


 ただ、涼はそんな心配はしておらず平常運転だった。


「まあ困ったら3人で全て殲滅して逃げ帰れば大丈夫だよね」


「そうだな」


 まあ、別に言語が通じなかったからといって即死亡というわけではないしな。今は先に進むことだけ考えれば良い。


「ん、敵だな。攻撃してみるか」


 そんな会話を交わしつつ先に進んでいると、遠くに小さく屈んでいる獣の影が見えた。


 未知の敵だが、進行方向に居るので避けては通れないと判断し、迷いなく投げた。


 するとあっさりと命中し、その場に倒れた。


 その後周囲に居た仲間らしき獣たちが10匹程集まって周囲を警戒していた。


「どうやら待ち伏せして誰かが来るのを待っていたみたいだね」


 リンネも敵を捕捉したらしく、そんな風に結論付けていた。


「じゃあ僕が打ち抜くね」


「任せた」


 残りはリンネがやると言って来たので、任せることにした。


 大きなスナイパーライフルに何か魔力を込めた弾を装填した後、連続で2発撃った。


 標的へ追尾するように進んだ弾丸は着弾後拡散し、周囲に居た獣ごと纏めて倒してしまった。


「よし、全部倒せたね」


「お疲れ、早速何だったのか確認してみよう」


 周囲の安全を確認しつつ、先程倒した獣の元へ向かった。


「ウィンドウルフのようだな」


 倒れていたのは草むらと同じ緑色の毛を持つウィンドウルフだった。影しか分からなかったのは単に保護色のせいでシルエットがはっきり見えなかったからだったんだな。


「ならあそこまで念入りにやる必要も無かったね」


「それは結果論だよ」


「確かにそうだね。これで最強の狼のフェンリルが出ました!ってなってたら流石に危なかっただろうしね」


「そういう事。じゃあもう一回気を引き締めて進もうか」


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