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13話

「僕は『魔弾』と『オートリロード』と『千里眼』だよ」


「『魔弾』とはどんな弾なんだ?」


「そのまま魔力を込めた弾だね。少し魔力を消費して弾の性質を変えられるらしいんだ。属性の付与とかホーミング付与とかね」


「割と使い勝手良さそうだな」


 作戦を立てる上で選択肢が多いのは有利だしな。


「使いこなすのは少し難しいらしいけどね。思ったように魔力が込められないとか、装填に時間がかかる割にはすぐに撃たないと効果が切れちゃうとかね」


「まあ勝算はあるんだろ?」


「当然、天才だからね」


 と自慢げに言うエイムが初心者並の自称天才。


「それじゃあゴーストを倒しに行くぞと言いたいところだが、ブーメランを投げる時のスキルなんて狩人に無かったから当てられないな」


 ブーメランマスターの方には色々ありそうだが、現状だとどうしようもない。


「僕の『魔弾』があるから。任せて!」


 とリンネが自信満々に話すのでもう一度ゴーストに挑むことに。


「さて、僕の銃が火を噴くときが来たみたいだ」


「早くしてくれ」


 ドヤ顔をしながら弾に魔力を込めること早数分。


「初めてなんだから勘弁してよ。今終わったから」


「なら行くぞ」


 俺たちは次の階層へ向かうべく全速力で墓地を駆け抜ける。


「後ろだ!」


「分かった!」


 俺は先程手に入れた『探知』のスキルを使い敵の方向をリンネに伝える。


 ホーミングと光属性を込めた弾丸は狙い通りに敵に吸い込まれていき、見事に消滅する。


 一発で消滅するので意外と楽な敵ではある。


「こっちには敵が3体いるから回り道をするぞ」


「オッケー」


 魔弾には限りがあるので極力戦闘を避けながら移動する。


 そして走り回る事数十分、ようやく次の階層へ向かう階段を見つけた。


「目的地はここだけどゴーストが居るね……」


 動き回る中で魔弾を使い切ってしまっていた。魔力量には問題が無いらしいが、装填には時間がかかる。


『隠密』のスキルを使ったとしてもリンネを隠せるわけでは無いため、俺たちが見つからないように息をひそめながら準備する以外ない。


 が、見つかってしまった。


「まずい、見つかった!」


「分かっているけど!」


 魔弾を用意するのに慣れていないリンネは動きながら用意が出来ない。


 かといってスピードでは負けているので逃げた所でいずれ捕まる。さっきと違って逃げ場所は近くない。


「やるしかないのか……」


 ブーメランで敵の操る物を破壊し続けなければならないらしい。


 敵は1体。それならまだ出来ないことはない。持ち上げてから投げるという動作がある以上、確実に視線にも入ってくるから見落とすことも無い。


 俺はブーメランを手に取り、リンネを守る戦いが始まった。


 極力動いてこちらに気を向かせつつ、投げる予定の物を先んじて狙い打つ。初手が上手くいったことにより相手の気は完全に俺だけに向いた。


 最初は一撃で仕留めようと大きな物を使ってきていたが、撃ち落されると判断したのか、徐々に小さくなり、一度に投げる数も多くなってきていた。


「まだか!」


 最終的に迎撃が不可能になると判断した俺は、リンネを急かす。


「あと少しだから!」


 とは言ってももうギリギリだ。


 俺を殺さんとするシャー芯入れ位の石が30個ほど同時に襲い掛かってくる。


 それを撃ち落とすためにブーメランで迎撃する。


「ギャアアアア!」


 すると大きな悲鳴が聞こえてくる。ゴーストだ。リンネが間に合ったらしい。


 俺はリンネの元へ駆け寄る。


「遅かったぞリンネ。もう少し遅かったらどうなっていたことか」


 あのサイズなら死にはしないだろうが、怪我は必至だった。


「何もやっていないけど。魔弾の準備をしていたら突然ゴーストが悲鳴を上げて消滅してた」


「は?」


 誰か助けてくれた人が居るのか?


 お礼を言うために周囲を見渡すが誰も居ない。念のため『探知』も使ったが周囲には何も居なかった。


「とりあえず階段を降りよう。ボス部屋の前は安全だから」


「そうだな」


 ひとまずボス部屋の前に向かい、何が起こったのかを確認することに。


「リスナーの皆、誰が助けてくれたのか見てた?」


 リンネがリスナーに質問する。


 そしてリンネのカメラを手に取りコメント欄を見てみると、


『一体どうなってんだ?』


『敵はゴーストだろ?』


『何した?バグか?』


『は!?!?!?』


 とそれどころではないご様子。


「えっと、どういうことかな?」


 再度質問し直すリンネ。すると、冷静なリスナーの数人が答えてくれた。


『AIMが投げたブーメランがゴーストに当たって死んでた』


 とのこと。


「俺がか?」


 確かに最後ブーメランを投げた時はゴーストに当たる弧を描くように投げた。しかしブーメランを投げた時に発動するスキルは一切取っていないんだから当たるわけが無いだろう。


「冗談じゃないよね?」


 もう一度リスナーに質問し直すが、そのリスナーの返答を否定する人は誰も居なかった。


「俺にもよく分からんが、一旦検証してみよう」


「そうだね」


 今はリンネの魔弾がちゃんとあるので、リスナーの言葉が正しいかどうかを確認するためにもう一度第3層へと戻った。


「リンネは念のためカメラを持って敵をズームで撮影していてくれ」


「うん」


 俺はいつも通りブーメランを幽霊に投げる。


 幽霊の脳天に当たる軌道を描いたブーメランは、本当に命中し幽霊が消滅した。


「え……」


「嘘……」


 お互いに絶句だった。幽霊という実態の無いモンスターに命中する少し丈夫なブーメラン。そんなよく分からない光景が紛れもなく目の前にはあった。


「えっと、これはブーメランマスターの仕様かな?」


 俺はキャラすら忘れてリンネにそう問いかけた。


「多分そんなことはないと思うよ。たとえどんなジョブでもスキルが無ければ他の職業と差異は無いってのがこの世界の仕様だから」


「そうなんだ。じゃあこれはどういうこと?」


「うーん…… よく分かんない!」


「とりあえずボス倒しに行こうか!」


「そうだね!」


 完全に思考停止した俺たちはそのままボス部屋へ続く扉を開けた。


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