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ショートショート10月~2回目

暗闇の中で

作者: たかさば
掲載日:2021/10/29

 ……真っ暗な闇の中で、少女は目を開けた。


 ……ここは、どこだろう。戸惑う、少女。


「誰か、いますか」


「私が、いますよ」


 真っ暗な空間に、少女と誰かの声が響く。


「ここは、どこですか」


「ここは、どこなんでしょうね?」


 真っ暗な空間に、少女と誰かの声が響く。


「どうして、ここにいるんでしょうか?」


「どうして、ここにいるんでしょうね?」


 真っ暗な空間に、少女と誰かの声が響く。


「私、何も見えない」


「私も、何も見えないわ?」


 真っ暗な空間に、少女と誰かの声が響く。


 目を閉じても、開いても……変わらない景色に、少女は恐怖を感じた。


 自分の体に触れ、布、肌、歯、爪、髪……すべて、ある事に、安堵した。


「あなた、どこにいるの?」


「私は、ここにいますよ」


 真っ暗な空間に、手を伸ばす、少女。


「ねえ、どこにいるの?」


「ここに、いるわ」


 真っ暗な空間に、手を伸ばす、少女。


「ねえ、手を、繋いでもいい?」


「……動かない方がいいと思うの、何があるかわからないもの」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


「とても、こわい」


「私も、こわいわ?」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女と、誰か。


「怖い……」


「そうね、怖いわね」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女と、誰か。


 少女は、沈黙が、怖くなった。


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


「ねえ、お話をしない?」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


 沈黙が、怖い、少女。


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


 沈黙が、怖い、少女。


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


「あなたは、何が好き?」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


 沈黙が、怖い、少女。


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


「私は、月が、好き」


 真っ暗な空間で、身を縮める、少女。


「今日は、新月だから、何も見えないけれど」


 ……沈黙が、怖い、少女は。


 ……真っ暗な空間で、口を、開いた。


「……新月?」


 少女は、真っ暗な空間で、身を縮めながら、耳を傾けた。


「空に、月が輝かない夜があるの」


「月が光らないから、何も見えないの?」


 少女は、真っ暗な空間で、耳を傾けた。


「そうね、ここには、月の明かりしか、光が届かないから」


「今は、夜なの?」


 少女は、真っ暗な空間で、耳を傾けた。


「そうね、まだしばらく、夜だと思うわ?」


 少女は、真っ暗な空間で、耳を傾けた。


 時折、ジーと、聞こえるのは、虫の鳴き声か、ネズミの鳴き声か。


「ここは、外?」


「星が見えないでしょう?ここは、建物の中ね」


 少女は、真っ暗な空間で、目を凝らしたが、……何も見えない。


「夜が明けたら、見えるようになると思うわ?」


「夜は、明けるのかしら?」


 少女は、真っ暗な空間で、目を凝らしたが、……何も見えない。


「ええ、必ず、明けるから、安心して?」


 少女は、真っ暗な空間で、目を凝らしたが、……何も見えない。


「夜が明けるまで、おしゃべりをしましょうか」


 少女は、真っ暗な空間で、耳を傾けた。


「いいの?」


 少女は、真っ暗な空間で、口を開いた。


「もちろん」


 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。


 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。


 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。


「……少し、眠くなってしまったみたい」


「じゃあ、おやすみなさいな」


 少女は、真っ暗な空間で、目を閉じた。


「おやすみ、いい夢を」


 少女は、真っ暗な空間で、眠りに落ちた。


 少女は、真っ暗な空間で、夢を見た。


 少女は、真っ暗な空間で、華やかな夢を見た。


 少女は、真っ暗な空間で、色とりどりの花に囲まれた夢を見た。


 真っ暗な空間に、闇が差した。


 真っ暗な空間に、光が差した。


 少女は、真っ暗だった空間で、目を覚ました。


 薄明りに照らされた空間が、少女の目の前に広がっていた。


 薄明りに照らされた空間を、少女はぼんやりと見渡した。


 土壁に、板の間。


 開いている扉。


 扉の向こうに、誰かの足。


 ここは、どこなのだろうと、少女は思った。


 扉の向こう側にいる、誰かに声をかけようと、立ち上がった。


「動いたら、ダメ。」


 少女と暗闇の中で言葉を交わした、優しい声が、響いた。


「どうして?」


「もうじき、お迎えが来るから、それまで待ってて?」


 薄明りの中に、少女と暗闇の中で言葉を交わした、優しい声が、響いた。


「どうして?」


「とても、……怖いの。お願い」


 薄明りの中に、少女と暗闇の中で言葉を交わした、優しい声が、響いた。


「わかった」


 薄明りは、どんどん眩しさを増していった。


 少女が、差し込んだ朝陽の眩しさに目を細めた時。


「もう、大丈夫。……ありがとう。」


 眩しすぎる朝陽の中に、暗闇の中で言葉を交わした、優しい声が、響いた。


 目のくらむような、まばゆい光の向こうに……何かの、影を、見た、少女の耳に。


「いたぞ!!!!!!!!」


「大丈夫ですか!!!!!」


 明るい空間に、人がたくさんなだれ込んできて……少女は、気を、失った。



「そんな、ことも、あったわね」

「そんなことも、あったのよ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「ありがとう、あの時、助けてくれて」

「どういたしまして?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「私を、守ってくれたんでしょう?」

「さあ、どうだったかな?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「ずっと、感謝をしていたのよ?」

「いつも、ここに来てくれていたわね?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「また、会いたいと思っていたの」

「ええ、知っているわ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「あなたに会いたいという気持ちが、あふれてしまったみたいなの」

「その気持ちに、応えたいと思ったから……出てきたのよ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「今日は新月ではないから、少しだけ、目が見えるわ」

「そう、じゃあ、私の姿が、見えているのかしら?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「老いてしまったこの目では、ぼんやりと霞んだ姿しか見えないわ?」

「……そう、残念。私、ずいぶん、美しい体を、持っているのに」


 薄暗いこの場所が、真っ暗に見えてしまうぐらい、少女だった人の目は、衰えていた。


「私、ずいぶん、自分をなくしてしまったのよ?」

「今はずいぶん、取り戻しているようよ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「時折、思い出したように、自分を取り戻すのよ?」

「今は、思い出せているのかしら?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「もう間もなく、自分をなくしてしまうと思うのよ?」

「帰らなくても、良いのかしら?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「帰れるかな?」

「……お迎えが来てくれると思うわ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「じゃあ、それまで、お話をしていてもいい?」

「もちろん」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。

 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。

 真っ暗な空間に、会話を楽しむ、声が響いた。


「……少し、眠くなってしまったみたい」


「じゃあ、おやすみなさいな」


 時折、ジーと、聞こえるのは、虫の鳴き声か、ネズミの鳴き声か。


「……ねえ、いる?」

「いるよ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「ここは、どこ?」

「ここは、私の、居場所よ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「どうして、ここにいるの?」

「ここに、いたいからよ?」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「……何も見えない」

「私は、見えているから」


 真っ暗な空間に、誰かの声が響く。


「あなた、どこにいるの?」

「私は、ここに」


 真っ暗な空間に、手を伸ばす、少女。


「ねえ、手を、繋いでもいい?」

「……いいわよ?」


 真っ暗な空間で、手を握る、誰か。


「ありがとう」

「どういたしまして?」


 真っ暗な空間で、手を握る、誰か。


「おやすみ、いい夢を」




「いたぞ!!!!!!!!」

「大丈夫ですか!!!!!」


 明るい空間に、人がたくさんなだれ込んできた。

 人気のない、朽ち始めた古い社殿に、足音が鳴り響く。


「ああ……間に合わなかった」

「……なんだ、何か、握っているぞ?」


 明るい空間で、たくさんの人が、見つけたのは。


 白いへびの抜け殻を握って、少女のような笑顔で眠る……老婆の姿であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、うーん、なんともー。あたたかでいてさみしくもあり、せつなくもほっとするような………… [気になる点] 最後1文の「……」以降、コレがまた何とも、何ともでした。 蛇のアンヨにも感じま…
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