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帝龍  作者: 烈火
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鼓動

少しオーバーな戦闘描写がありますが、そこは大目に見ていただけると嬉しいです。

生きろと言う言葉に救われた

前を向けと励まされ 心が動き出した

走ろうと語る背中を必死に追いかけた


「おい龍旗、お前は何のために生きたい?」

「僕は・・・」

親が交通事故で死んでしまった僕を引き取り育ててくれた、父であり尊敬していた龍我(りゅうが)さんは当時小学生だった僕にそんな言葉を問いかけてきた。

「まだ分かりません。ただ・・・」

「ただ?」

真っ黒な黒い瞳が同じように黒い僕の瞳を見て尋ねてくる。何を言うつもりなのかと期待と強い想いを込めて。

「生きていたいです、たとえ苦しくても」

正直答えになったいなかったと思う。だけど今でもそう答えたのは間違っていなかったと思っている、だってそう言った後の父の顔は本当に嬉しそうな笑顔だったから。

「そっか生きていたい・・・・か」

そうため息のように龍我さんが言葉を漏らすと、何度も何度も大きくて力強い手で頭を撫でてくれた。

「いいか龍旗・・・お前は俺みたいな男になるなよ、だって俺は」

そこで突然目が覚めた。何故かは分からないが、いつも龍我さんが言った最後の言葉だけが聞けず目が覚めてしまう。とても大事なことだったような気がするのだが思い出せない。

「あれ何で泣いてるんだろ?」

目からポロポロと涙が落ちる、泣きながら寝ていたみたいだった

龍我さんが両親と同じ交通事故で死んでから三年も経っていた。もう僕も今年で16歳。高校に入学し新しい生活が始まるというのに、少しも嬉しくはなかった

きっと夢を見て感傷に浸っているからだと思い、体を起こす。外は少しずつ夜明けの明かりで明るくなっていくのが分かった。もう準備は昨日済ませてあったので学校指定の黒いカバンと父から貰った青いバッグがベッドのそばにある。

「早く着替えないと」

朝独特の気だるさを振り払い、ゆっくりと動き出す。服を着替え荷物を持って寝室を出る。

外に出ると自分のような高校生には似合わない広い部屋があり、奥には綺麗なキッチンがある

部屋は日当たりがいいおかげか、夜明けにも関わらず明るい。窓を開けると気持ちの良い風が入ってくる。

キッチンに入り冷蔵庫を開けると、昨日の夕食に作ったカニグラタンがあり、隣にはオレンジジュースがある、あまり良い組み合わせではないが、食べてしまえば同じだと割り切って食べる、冷蔵庫に入っていて硬くなった所もあったが、黙々と食べ続ける。

『ピンポーン』

早めの食事を終え席を立つと同時にインターホンが鳴った、こんな時間にこの家のインターホンを鳴らす人を僕は知っていた、そして聞きなれた女性の声が聞こえた

「龍旗来たから開けて」

待たせるのも悪いと玄関に向かい扉を開ける、思った以上の快晴ぶりに強い日光が目に染みる、その眩しさに目を細めて目の前の幼馴染を見る。肩より少し下ぐらいまで伸びた髪に快活そうな印象を与える元気いっぱいの瞳と笑顔が目に入る

「白鳥さん、わざわざ起こしに来なくても大丈夫だから、毎日此処に来るの大変でしょ?」

「駄目よ、そんなことしたら龍旗私の事なんかすぐ忘れちゃいそうだし、それに小学校からの事でしょ?今更起こしに来るなっていわれても、自然に来ちゃいそうだから諦めてよ」

「白鳥さんを忘れたりしないよ、龍我さんの事で一杯迷惑かけて、そんな僕とこうして一緒に居てくれるんだから」

「迷惑だなんて思ってないわよ!あの時の龍旗すごく辛そうで心配だったし」

「ありがとう」

凄く素直な気持ちでお礼を言う、もしも龍我さんが死んだ頃毎日僕を気に掛けてくれた白鳥さんが居なかったら、きっと今でも僕は家に閉じこもっていただろう

「べっ別にお礼なんていらないって」

慌てたように顔を赤くして首を振る白鳥さんは、本当にやさしい

「それより早く行こう、入学式早々遅れたら駄目だろうし」

「うん」

急いで玄関の前に置いた荷物を取り、外に出て鍵を閉める。

「走って行こ?」

「まだ余裕あるよ?」

「いいの、早くこれから毎日通う学校に行きたいじゃない?」

「分かった、走ろっか」

僕も同感だったので頷き同意すると、白鳥さんが躊躇なく僕の手を掴み走り出す。学校までは十分程で着くが行く途中に会った人たちに微笑ましそうに見られる度、繋いだ手を意識してしまった。妙に長く感じた十分で、ようやく学校についた頃には恥ずかしさで顔が赤くなってしまった

「此処が三星高校なんだ」

受験の時に見たけれどやはりこれから毎日通うと思うと、なんだか感慨深い物があった

「おはよう君たちは新入生だね?」

「おはようございます、あのあなたは?」

突然左側から声を掛けられる、見ると紫色のスーツを着た20後半の男の人がいる。近くにいたのにまったく気付かなかったので驚く

「私は此処の教師でね、校舎の説明とかをしているんだ」

「そうですか、確かに僕達は新入生ですけど。校舎の説明ならぜひ聞かせてください」

「ああ勿論だ此処はね・・・」

しばらくの間男の人は、校舎について構造や施設などを説明してくれる。白鳥さんは話しには興味がないのか、ずっと校舎を見ている」

「こんなところかな説明は、他に何か質問はあるかな?」

「えっと・・・、一つだけ」

目の前の男の人には一つだけ奇妙な事があった。何となく聞きづらいのであえて聞かなかったのだが、どうしても気になって聞いてしまった。これが僕の人生を大きく変えてしまうとも知らずに・・・。

「あの先生の頭に耳みたいなものがついてますよね?それって何なんですか?」

先生の頭には小さな耳がついていた、血のように真っ赤なものが。耳といっても人間のではなく兎の耳だ

「君名前は?」

「えっと龍旗ですけど」

「龍旗君かぁ・・・良い名前だね」

男はさっきまで浮かべていた柔和な笑顔を消し、獰猛な肉食動物のような怖い表情に変わっていた。

「龍旗君、それじゃあ僕の為に死んでくれないかな?」

次の瞬間辺り一面が血の様に赤く染まる。空も大地も白鳥さんや他の人たちも石の様に固まり動かなくなる。何が起きたのか理解する間もなく、男は酔った様に話し出す。といっても僕に聞かせるというよりは独り言に近かった

「嬉しいよ、ひさしぶりにこの耳が見える人間が来て、それにこの空間の中でも動けるみたいだし、きっとおいしんだろうね」

「何がですか」

「何って勿論君だよ龍旗君」

背筋に寒気が走った直後、何か声が聞こえた『見ろ』と、その直後両目に強い痛みが走る

「痛っ!!」

「どうしたんだいまだ何もしてないよ?安心して痛みを感じる間もなく食べてあげるから」

「あなたじゃない!誰?」

「むかつくなぁ、何か生意気だね君?今すぐ食べてあげるよ」

痛みに耐えて目を開けると、男がどこから出したのか大きな鎌を僕に振り落とすところだった

避けることは出来ない、だからといって受けたら切断される。その確信があった、本来ならば僕はこのとき死ぬはずだった。

(手が勝手に動く?)

まるで操り人形にでもなったように右腕が鎌から、顔をかばう様にして動く。腕が切断されるそう思い目をつぶる

『ガキイィン』

鋭い金属音が響く、痛みや血が出ているようには感じない。おそるおそる目を開けると鎌は右手によって止められていた

「どうして?」

そう言ったはずが声は出なかった、その代わり自分の声とも鎌を持つ男とも違う声が響く

「我に刃を向けるとはな」

低く荘厳な大地を震わす声、大地を震わすとは言葉のあやでなく事実地面が揺れる。

「何だこの力は?龍旗君じゃないねお前?」

「ふむ貴様は動物の死骸が集まって出来た低級霊(ていきゅいうれい)だな」

「お前が何かは知らないが、数年ぶりの食事は譲れないよ」

「我は帝龍(ていりゅう)今はわが身を龍旗に移して生きておる。この者には恩も愛着もあるのでな、簡単に殺してもらっては困る」


帝龍と名乗った僕の体を操っている何者かは、まるで挑発するように手招きをする。鎌を持つ男から屈辱からか敵意の篭った目で睨んでくる

「龍っていえば上級霊だけど大した力はないんだね、いいよお前ごと食ってやる」

耳と同じ血の色をした鎌が一つ地面から出てくる、まるで夢のような光景だがただでさえ凶暴そうな男が両手に鎌を持っていると、余計に恐怖を生む

「いくよ帝龍」

男は一度大きく後ろに飛び、一気に足を屈伸してその反動で5〜6メートル程飛び上がる。

両方の鎌をそれぞれ体の左右に大きく引く。

対して帝龍は僕の手のひらを男に向けて、男が猛スピードで落ちてくるのを見ているだけだ

「くらえ」

男が鎌を交差させて攻撃を行う瞬間、帝龍は鋭い声で叫ぶ

「龍尖!!」

『バシュッ』

何かを切ったような音に一瞬自分の体を見るが、どこも傷ついていない。次に男の方を見ると驚いたことに男の体はほとんどが消し飛んでいた。ただ男からは血すら流れず代わりに黒い砂のような物が零れている

「帝龍よくもこの俺を、覚えておけ我ら無限の死骸はお前を絶対に許さない、我らが主である血のブラッドェーン)様はきっとお前を殺しに来る」

男は不吉な言葉を残して消えていった、後に残ったのは黒い砂だった

「無限の死骸か、厄介な奴に目をつけられた、すまない龍旗。お主を余計危ない目に遭わせてしまうかもしれない」

(今僕に話しかけたの!?)

「ああ確かに我が話しかけたぞ龍旗」

(あのあなたは一体、それにさっきのは?)

しばらく帝龍は黙りこんでいたが、重々しく口を開く

「我は古来よりこの世に存在する龍、よくドラゴンともいうがそういった生き物だ」

(龍って翼があって火を放ったりするあの?)

「うむ、先ほどの奴はさっきもいった通り、動物の死骸の怨念が生んだ哀れな低級霊、いわば人を憎む怪物だ」

頭がおかしくなりそうだったが、さっき見た光景は紛れも無い真実なので、信じるしかなかった。まさか龍が居るなんて思いもしなかった

(あのどうして僕に取り憑いてるんですか?)

「我はある事情で力を失い、消える寸前に霊格の高い赤子に憑依したのだ、その赤子がお主というわけだ」

(じゃあ偶然僕に?)

「ああ、本当にすまない事をした。憑依するなど迷惑を」

話していると帝龍さんが予想以上に優しい性格をしている事に気付いた。言葉の端々に申し訳なさが感じられる

(僕の命を救ってくれたんですから、そんなふうに思わないで下さい帝龍さん)

「そうだそろそろ体を返さねばな」

(え?)

直後体に強い浮遊感と重力が一気に押し寄せる、気付くと自分で目や手足が動かせるようになっていた

「あっ赤いのが治ってないどうしよう」

辺りは未だ赤く染まり、他の人も止まったままだった、困っていると頭に声が響く

(我に任せよ)

帝龍の言葉と共に赤い世界は少しずつ剥がれ落ちていく、色が先に戻り次に音がそして人も動き出す。

「どうしたのよ龍旗?何かそこにあるの?」

白鳥さんが不思議そうに見つめてくる、きっと此処で起きたことは知らないのだろう、あまりりにも先ほどとは違う平和な世界に安心して一息つく

「早く行こう龍旗」

「うん、あの白鳥さんさっきの男の人どこいったか知らない?」

まだ信じきれない所があったので聞くと、白鳥さんは首を傾け

「男の人?だれかいたっけ?」

「ほらさっき校舎の説明をしてくれた」

「?そんな人いなかったよ?どうしたのよ龍旗?」

「あっごめんこの前受験の時に会った人だったよ」

「そう」

まだ不思議そうにしながらも一応納得してくれたのか、それ以上白鳥さんはその話題に触れてはこなかった、だがこれではっきりした。いやしてしまったというのが正解なのかもしれない

あの出来事は僕にしか感じれなかった、非現実の出来事だと

龍旗が白鳥と手を繋いで校舎に入るのを見ていた女の人がいた、その部屋の扉には生徒会室と書かれている。

黒蝶アゲハ会長、彼は一体?」

「さあ?でも面白くなりそうね今年も」

「お願いですから面倒な事は避けてくださいね会長?」

「面倒事だなんて享楽といって?私が退屈嫌いなの知ってるでしょ?」

「それは去年からの体験で知ってますよ」

会長と呼ばれた女性はとても楽しそうに微笑んだ・・・・。














次話から登場人物が何人か増えるので期待していてください。

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