異世界の種族[後編]
実は前編後編はとくに区別するつもりなかったんですが、半分に抑える分割して文を編集してたんですよ。その関係で上半分(前編)だけを投稿しちゃったので遅れて後編も投稿します。
「この鳴き声はコボルトのものか?」
ヒトラーはロンメルにそう聞いたが、これは社交辞令のようなもので、ヒトラーにはこの声こそコボルトであるという自信があった
確証があるわけではないが、ヒトラーの心にはこの鳴き声こそコボルトであるという確信があったのだ
「はい。今の鳴き声はコボルトのものです。」
エルヴィン・ロンメルが答え合わせをするようにヒトラーにそう伝えた
「ふむ。これがコボルトか…」
ヒトラーの目の前にいるのは肌が緑色で小さな毛のない小人
大まかに言えばそうだ
だが実際はとてつもなく醜い
耳は右耳が途中から千切れている
左耳を見る限り、耳は元々直角三角形のように尖っていたようだ
歯は人間の歯に似ているが恐らく、これまでほぼ磨いてこなかったのだろう
歯は全て黄ばんでいる
所々虫歯もあるし、先程食事を与えられたのか、肉が歯に挟まっている
それに体臭は鼻が曲がりそうなほど獣臭い
近くにいるだけで吐きそうな臭いだ
腕は細く貧弱で折ろうと思えばすぐ折れそうなほど弱々しい
爪は長く汚い
これで引っ掻かれたりしたら傷口から菌が溢れんばかりに入るだろう
目は焦点があっておらず左目だけがこちらを見て、右目は右斜め上を向く
鼻はとてつもなく大きく、拳がひとつ入りそうなくらい鼻の穴も大きい。そして何より大きなイボが鼻にいくつも出来ている
「これは…何とも醜悪な生き物だな。」
そういうヒトラーの目は軽蔑を向ける目ではなかった
輝いていた
子供がスポーツ選手の名演技に向ける眼差しのように輝いていた
「そうですね。ですがこれがもしドイツ民間伝承に出てくるコボルトならばそれは妖精の存在を決定づける何よりの証明。」
エルヴィン・ロンメルもまた、嬉しそうに将来の夢を語る子供のような目をコボルトに向けていた
醜きコボルトが彼らにこれほど特別な思いを与える特殊な光景はなかなか見ることのできるものでは無い
「そういえばコボルト以外の生物を捕獲していると言っていたな。それについても見ておきたいと思ってな。」
ヒトラーの心はコボルトの姿を見て満足するでもなく、更に期待が胸を高鳴らせる
「そうですね。今、ほとんどは道中に”自害”してしまったのですが…一体だけ放心状態であったため自害しなかった個体がすぐ近くに収容しています。そこまでご案内しましょう。」
エルヴィン・ロンメルはそのまま次のトラックに向かうが、途中でピタリと歩みを止める
「閣下。次の生物ですがその姿はとても美しく、その姿はゲルマン民族にも似通った点があると言えます。ですが、特徴として耳の先が尖っており、神秘的なオーラといいますか…それに類する何かを纏わせている。と言ったら良いのでしょうか。」
エルヴィン・ロンメルは1度感動を覚えたその姿をヒトラーに伝えようとする
この行為を例えるならばとある映画を初めて見る人にそのラスト教えるようなものだが、エルヴィンには言わずにはいられなかった
その美しさはどんな無粋なことも受け止められるほどのものであるとの確信があるからだ
「ふむ。気になってきたな。さぁ、早く前に進め 。」
ヒトラーは口では今興味が湧いた
というような言い方だが、実際は最初から見たくて仕方がないのである
何故ならあのコボルトでさえあれほどまでに感動を覚えたのだ
他の生物ならどれほどの感動を与えるのだろう
「こちらでございます。」
そこにいたのは、現代の感覚で言うところのエルフ
幻想のような美貌を持ち、長命で知られるエルフ
それを見たヒトラーは喜ぶわけでも感激するわけでもない無感情であった
「これは…」
ヒトラーはガッカリした口調でそういう