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1-6 クレーム
食器は粉々に割れ、
二人が頼んだものより豪華なおかずが
床に撒かれた。
「こんなもんで金取んのかよ、
このぼったくりが!」
騒ぎ立てていたのはついさっき入った男の
一人だった。
「拾え。そんなとこにいつまでもあったら
踏んじまうだろうが」
「すみません。いま、片付けますんで」
両ひざを着いて破片や食べかすをかき集める店長だが、
その手を怒鳴り付けた男が思い切り踏みつける。
圧力が直接骨にかかって店長は悶絶するが、
男は笑いながら何度も踏み続けた。
遠目からその仕打ちを見ていた他の客たちは
「あ? 何見てんだよ。
そんなに面白えか? え?」
と、もう一人の若い男に威圧されて縮こまり、
そそくさとお代を置いて店を出てしまった。