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3-01 厄介者

町と言うには少し栄えていないが

恵まれた土壌のおかげで

質の良い柑橘類が名産の村があった。

国道沿いであることも幸いし、

出稼ぎに行かなくても売買出来ることから

村を出る人間は少なかった。

逆に村に住みたいという人間も少ない。

それは代々受け継いできた農園を

余所者のせいで台無しにされたくない、

という考えが村全体の共通意識として

確立されているからだった。

立ち寄ったときの雰囲気の良さだけで

移住を望んだ人間は暴力こそ振るわれないが

語源通りの村八分に遭い、早々に立ち去る者が

後を絶たなかった。


しかし、数年前から例外が現れた。

村から少し離れた場所に許可なく住み始め、

一度も自分から村人へ挨拶せず好き勝手に

生活していた。

時が経つほど彼へ向ける村人のイラつきが大きくなり、

とうとう実力行使にでても素知らぬ顔で過ごしている。

今日は百数十回目の立ち退き勧告に

数人の村人が警備隊を引き連れてやって来た。


「村長」

「うむ」

鍬や鋤を構えた大人たちを先導する老人が

『この先、危険!』の立て札を倒し、

50メートルほど先のツリーハウスに叫ぶ。

「今日こそ、年貢の納め時じゃ。

その首ひっ捕まえて村から出ていってもらうからな!」

高齢でしゃがれているにもかかわらず

よく通る声で宣告したが、家からの返答は無かった。

「ぬ〜〜っ! かかれぇっ!!」

「「「うおおっ!」」」

毎日の農作業で鍛えられた男たちが

決死の覚悟で攻め込んだ。

第一の罠、落とし穴。

第二の罠、跳ね上げ式網。

たった50メートルを幾重にも張り巡らせた罠で

村人をリタイアさせていく。

「やっ、ぶへぁっ!? む、無念」

最後の一人が上からのタライに敗れ

全滅かと思いきや

「まだワシがおるぞっ!」

仲間の屍(死んでません)を踏み越えて、

村長が矢のように飛んでくる。

入り口手前の縄ばしご、と見せかけた罠を回避し、

直接木をよじ登る御年78才の村長。

多くの犠牲を払ったがついに扉までたどり着いた。

「む?」

ドアノブを引く直前、目の前の張り紙に気がついた。

『今日はフィールドワークに出るので、

用件のある人は明日の昼に出直してくるように。


追伸:機密保持のため、絶対にドアノブに触らないように』()()()()()()()()()()()()()|』

「なに?」

最期まで読んだ時には遅かった。

ドアに繋がった糸がピンを抜き

小瓶から粉が流れ落ちた。




ズズゥン。

「おや?」

村外れの森から植物の採集に勤しむ手が

僅かに感じた地鳴りで止まった。

「昼に地鳴りとは珍しい。

材料が切れて仕方なく離れたのが幸いしたな。

しかし、時間帯と地鳴に相関関係が

あると見ていたが外れてしまったか。

震源地はどこだろうか」

アゴに指を添えた男はそれからずっと

自分の考えをつぶやき続けるが、

その地鳴りの原因が自分の罠で、

腰を抜かした村長が

大勢に介抱されていることは

全く気づかなかった。

読んでいただきありがとうございました。


3章が始まりました。

初回は失敗しましたが

3ヶ月、4月末で書き上げる予定です。


次話の投稿予定日は

2/6(日)です。

まだ3日おきの投稿は難しいので、

少し緩めて進めます。

その代わり、期日通りに投稿する所存です。


このような私ですが

今後とも読んでいただければ幸いです。


この小説に好感持っていただけましたら

ブックマーク登録及び評価を

どうぞよろしくお願いします。


以上です。

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