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2-21 自供

犯罪行為に手を染めても

全く悪びれないノラは淡々と話し始める。

「まず、この町がどういうところなのか聞いた。

お前たちは町ぐるみで旅人を拉致及び監禁をし、

奴隷として出荷することを生業としているらしいな。

我らは個人的な都合でそれを止めようと動いた。

先に結論を言おう。無理だ。

多勢に無勢で力づくは不可能であるし、

何の情報もない。

それでも、真偽はともかく予想は立てられる」

ノラは口から取った入場証を掲げた。

「そもそも奴隷という最も人を貶めた存在にさせられるのはなぜか。

それはおそらくこの入場証に仕掛けがあったのだろう。

装着した者の意識を操る、催眠に近い何かが。

着け始めたときはその変化に体が驚いて意識を失い、

長時間をかけて漬け込むことで効果を発揮する。

そんなとこだろう。違うか?」

ノラは先頭で話を聞くカレンに問い詰める。

秘密を暴いてやったぞ、と。

しかし、カレンは飄々と答えた。

「それが真実だとして、だからどうするというのですか?

仮にその催眠効果のある物の正体が分かっても私たちが全力で守ります。

あなたでは絶対に届きません」

「だが、ここ(・・)は違うだろう」

ノラの小さな手が焼け焦げた壁を叩く。

やわらかいこぶしをぶつけても炭が写る程度にしかならないが、

カレンの表情が険しくなった。

「この町の要は二つ。催眠させるための何かと

それを漬け込むために大勢の人間を収容するこの建物だ。

よっぽど大切だったのだろうな。

移し替えればいいだろうに、

この辺りでは高価な絨毯を使ってまで、

穴を塞ごうとしていたのだから。

前者は確かにその通り、だがここはすでに壊せている。

あとほんの少し手を加えれば出来ないわけがない」

確信をもって話すノラ一人に町中が負かされている。

それでも、カレンは強気な表情を作りノラを糾弾する。

「はったりです。

現にまだそこにあるじゃないですか。

大方、先ほどの小火で崩そうって魂胆だったのでしょうが、残念でしたね。

それは石造り、多少、強度が落ちても使えないまでとはいきません。

穴を塞いだのも一時的な処置で、後から時間をかけて修復する予定です。

あなたのしたことはただの徒労ですよ」

「いいや。火をつけたのは壊すためじゃない。

お前たちを呼ぶためだ」

「はい? 自分から敵を呼ぶなんて正気じゃないですね」

「必要だったのだ。大勢の人間を運び出す人手が。

ここに拘束された奴隷たちを解放するための人手が」

助け出された奴隷たちは催眠の影響で

意識をハッキリさせられない。

それがなくても拘束されている身で崩落に合ったら、身の守りようがない。

「まだ人がいるというのにそれを無視して壊すことなど出来ん。

しかし、助けたいと言ったって黙って見過ごされるはずもない

だから焼いたのだ。

価値観は違えど、奴隷はお前たちにとっても大切な存在だ。

我が壊せばお前たちが守る。全てはこのためだ」

待ちに待ったプレゼントの紐を解く子供のように

ノラは満面の笑みで心からの言葉を送った。

「すまなかった。そしてありがとう。

これで準備は整った。レイ! やってしまえ」

「やめなさい!」

「もう遅い。危ないゆえ近づいてくれるな」

一瞬、音が消える。静けさの中で空気が高速回転する音がかすかに聞こえる。

それが消えた瞬間、間を置いて建物の中で爆発が起こった。

壁という壁が粉砕され、瓦礫の雨が降る。

欲望と悪意で淀んだ建造物は影すら残らなかった。

「~~~ッ。久しく感じなかった清々しい気分だ。

やはり人の大事なものを壊すのは気持ちがいいな」

一つでも当たれば大事故になりそうな石の雨で、

ノラは晴れやかな気分で小躍りしていた。

「てめえ、クソガキ! 何やってんだ」

起こった町人の一人が落ちてきた瓦礫を拾い投げようとしたところで、

ノラが手を出して止めた。

「おっとぉっ! やめておいた方がいい。

今、暴力を振るうのはマズいと思うぞ、法律的に」

「誰がそんなもん守るってんだよ!」

かまわず投げようとする男だが、

またもや他人に手を出されて止められる。

もっとも今度は直接男の手首をつかまれていた。

「まぁ、俺は守らないとねぇ」

掴んでいたのは昨日の昼、ノラを助けた一人であるダイアンだった。

「なんだ、コラッ!」

いらだちを隠せない男にたじろぎもせず、

ダイアンは形式的な挨拶を始める。

「こんばんは。ちょっとお話良いかな。

お巡りさんです」

読んでいただきありがとうございました。


次話で捜索パートが終わるところまで来ました。

今月中に第2章を終わらせる予定でして、

あと5話ぐらいになるでしょうか。

3日ごとに投稿してなんとか、のスケジュールです。

筋は作っているのであとは書く時間を作って

やり遂げる所存です。


次話の投稿予定日は

1/18(火)

です。


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