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2-15 闇商人

レイたちを追いかけた男が二人、

三叉路にたどり着いた。

「確かにこっちへ来た。

どこか、その辺に隠れてるはずだ。

探すぞ」

右の木箱と左の樽の山。

男たちは先に

樽の山を調べた。

足の裏を押し付けるような蹴りで山を崩し、

後ろの影か樽の中に潜む人間を炙り出す。

しかし、樽の中は空で木が弾む音だけ出して

転がった。

「それじゃあこっちか」

木箱の周りを一周した後、閉じられたフタに手がかかり、

膝を抱えるレイが暴かれた。

(見つかった!)

男とレイを遮るものは何もない。

中にあったものを押しのけて

かろうじて一人分空けたスペースに潜り込んだだけだ。

暗がりが味方して男の方からはすぐには姿を捉えられなかったが、

時間の問題である。

緊張から男の顔の動きがスローモーションに見えた。

ゆっくりと箱の中をのぞき、レイと目が合う――

「お兄さんたち、何?」

予想外の呼びかけ男は声のした方へ振り向いた。

箱の中から伺った限りでは若い男がレイを追う男たちに呼び止めたらしい。

「ごめんね~。今日はもう店じまいなんだ」

「店ってこんなところでか?」

「店っていうか仮置き?

このご時世、あんまり人を信じちゃダメじゃん?

だからこういう人目のないところに売り物を置いてただけなんだけどぉ。

いやさ、勝手に置いてたのは悪かったけど

見逃してくれない? ほら! 何か買ってくれるならちょっとサービスするからさ」

「いらねえよ。これから『運動』してくるんだから」

「そうかい? そりゃ残念」

若い男は開いた箱に蓋をかぶせ、縄でまとめ上げる。

身の丈より大きなその箱を軽々と持ち上げ、

肩に乗せて去っていく姿を見て

レイを追う男たちはそれ以上探すのを諦めた。


通りの外れ、若い男が借りた部屋に帰り、

荷物を下ろした。

上着とテントの皮で作った即席のカーテンで部屋を隠す。

男は箱を縛る紐を解いたが、蓋は少しずらしただけで

開けはしなかった。

「ここには誰にもいない。

怖がらずに出ておいて。

そっちの坊主も来な。手は出さねえよ」

そう言われて、箱の後ろに隠れていたノラが男の前に出る。

若い男は箱に隠れたレイだけでなく

こっそり後をつけてきたノラにも気づいていた。

気づいたうえで逃がしてくれた男に

蓋を開けて顔だけ出したレイは感謝の前に警戒をしていた。

「なんで助けたの?」

「家の教えでよ。肉といらない世話は焼くようにしてんだ」

男は箱の中のレイに握手を求め、掴んだ手をそのまま引っ張り上げる。

「俺はニース。主な商売は、まぁ闇商人だ」

ニースと名乗った男は箱から桃を三つ取り出し、

レイとノラに一つずつ投げて足を崩した。

「座りなよ、別に善意だけで助けたわけじゃない。

ちょっとここらでビジネスの話をしようぜ?」

そう言って桃を皮ごとかぶりつくニースが、不敵な笑みを浮かべた。

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