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2-4 来訪

納得しきれていないがノラと一緒に

衛兵の案内通り、役所に向かった。

「なぜそんなに怒っているんだ。

我が何かおかしなことをしたか?」

「うるさい! まったくあんたはいつも考え無しなんだから」

日頃たまっていたノラへの愚痴をぶつぶつ呟いているうちに

レイはあることに気づいた。

(なんか早くない?)

普段はノラに合わせて自分が歩調を抑えているのに、

レイは今ノラの背中を負う形になっていた。

(一応、ここが危険そうな場所だって感じてるんだ)

当然の判断だがそれすらできない奴だと思い、少し反省した。

「うん?」

「え? 何?」

少し感心してみていたら急にノラが振り向いた。

「いや。何か妙な視線を感じたのだが」

「気のせいじゃない?」

(ってなんでごまかしてるの、私)

表情に出さずいい加減な受け答えをしていると、

不思議そうな顔をしてノラは前に向き直った。



二人が役所を目指してしばらく。

また新しい旅人が衛兵の前に現れた。

「あっ。あの人は」

少し前に荷車を引いてやってきた商人の相手を

もう一人に任せ、大きい方の衛兵が旅人のもとに駆け付ける。

「お疲れ様です!」

大きなあいさつで出迎える衛兵に旅人は口に指を立てた。

目立つことを嫌い、静かにしろという意味だったのだが、

「分かりました! 目立ちません! 黙ります!」

と大声で返した。

もっともこの男をはじめ、衛兵たちの頭の悪さを知っていた旅人は

全く怒りもせずただため息をついた。

「あっ。こいつはどうも。いつもありがとうございます」

懐から出した紹介状と小包と何かの書類を

衛兵は満面の笑顔で旅人から受け取った。

「いやぁ、本当にもうおかげさまで働くことができて。

仕事でも問題を起こしてないし、今度こそ長続きできそうですよ、俺たち!

今までのご恩も含めて全部返すつもりなんで今後もどうぞよろしくお願いします!」

すっかり上機嫌の衛兵に連れられて旅人は門の前に立った。

「おい、先にこっちだろうが。優遇するな」

それを怒るのは当然、先に来た商人たちだった。

「先に来た俺たちを待たせる気か!」

「「うるせえな! 黙ってろよ! ぶちのめすぞ!」」

苦情を言う商人たちに食って掛かる衛兵たちを

旅人が片腕で制し、しぶしぶ二人は引き下がった。

「分かってるよ。じゃあ、紹介状の方は後でうまく紛れ込ませとくから。

中で騒ぎとか起こすなよ?」

本来なら紹介状受け取ってから中にいる役員にハンコを貰うなど

非常に厳重だと噂されていたところを数分のクレームで帳消しになり

商人たちは少し驚いていた。

「さて。じゃ開けますか。よい……しょっと」

少し踏ん張りを利かせ大柄の衛兵が上下式の門を持ち上げた。

そのままでは荷馬車を通せないため、

胸の位置まで上げたところで門の壁をよじ登って高さを上乗せする。

「はい。じゃあ、目立つからさっさと入れ~」

先ほどまで商人の相手をしていた糸目の衛兵が彼らを誘導し、

無事、商人たちは町の中へ入ることができた。

続いて旅人が入ろうとすると糸目の衛兵が耳打ちする。

「気を付けて下せえ。俺たち入ったことねえっすけど

ここ変っすよ。あいつもなんか気持ち悪いって言ってましたし」

旅人は一度だけうなずくと風よけの頭巾を深くかぶり直した。

「「お気をつけて!」」

衛兵たちは大手を振って送り出すと同時に

門が重々しい音を出して閉じた。

「ところで何を貰ったんだ?」

「えっと紹介状と、金と。あぁこりゃ指名手配書だな」

「お小遣いと()()ってことか」

「そうらしいな。んん?」

手配書の束を一枚ずつめくっていくとあるページで止まった。

「あれ? こいつどこかで見たな」

「そういえば俺も。どこだっけな」

二人が記憶をさかのぼり該当する人間が思い出せずに諦めかけたとき

「さっきの子連れ冒険者」

「「それだ」」

()()()の衛兵が指摘した。

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